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目次 > 2012年5月7日放送の17時台の特集/バックナンバー


アンカーズアイ 〜追い詰められ、命を削って走る人〜
トラックが引き起こす事故の中では「追突」が最も多く、
死亡事故につながる確率は普通乗用車に比べて12倍も高くなります。
 
国交省の調べでは、バスやタクシーに比べて、
トラックが起こした重大事故の死者は格段に多く、
ドライバーの居眠りが原因とみられるケースも目立ちます。
 
 
京都から福島へ荷物を運び、およそ1500キロを走って
滋賀まで戻ったドライバー、滝本さん(仮名)。
次の積込みまで、つかのまの休憩をとっていました。
 
「家には帰らないです。ここで荷物を積んでまた九州に行くので
家に帰る時間があれば車のなかで寝る、
例え10分、15分でも寝られればそれでいいと思っているので」(滝本さん)
 
滋賀で積んだ荷物を、翌朝、長崎へと届けます。
その後、関西へ戻った後、もう一度、九州を往復。
丸1週間、家に帰らず、4500キロ以上を走ります。
 
走り始めて3日目の夕方・・・
路肩には追突事故を起こしたとみられる乗用車とトラックが止まっていました。
 
「あああ、トラックですね。怖いですわ〜あんなん見てね。
明日は我が身かなと思うと余計に…」(滝本さん) 
 
事故におびえながら運転を続ける毎日。
妻と子を持つ滝本さんの月収は20万円の時もあります。
 
「走る回数増やさんことには人並みの生活をうちは送れないんで。
安い給料で、高校生のバイトがもらうくらいの給料で
意識が飛ぶ寸前まで走って…」(滝本さん)
 
なぜドライバーの勤務が過酷になるのか?
 
滝本さんが勤める運送会社の社長に聞きました。
 
「日曜ないし月曜日に出発した車が、週末帰って来ますんで。
その1週間分の仕事の記録というか…。」
そう話しながら社長が見せてくれた、長距離トラックの走行記録からは、
ドライバーが休憩をほとんどとらずに、長い時で10時間も連続して運転をしていたことがわかります。
 
「適正な運賃を頂ければ、例えば長距離運行が週2回でよかったものが、
今どうしても毎月の売上げを確保するためには、
週2回のところを3回行かないといけないという状況。
かなり運転手さんに無理な運行をさせている。」(社長)
会社の経営を維持するためにはやむを得ないと、社長は訴えます
  
業界新聞の記者として、長年トラック運送業者を取材している大塚さんは話します。
 
 「(運送業には)後ろ向きにいう社長が多い、例えば借金があるからやめられないと」
 
大塚さんが勤める「物流ウィークリー」の記事には、
疲弊する運送業界の実態を取り上げたものが目立ちます。
 
いったい、この状況はどこから来るのか、
 
トラック運送業者を訪ね歩き、その原因を探っています。
 
「動きは?」(大塚記者)
「悪いですね…。犠牲業種です、僕らの業界は。
規制緩和によっての犠牲業種です」(辻本社長)

1990年から始まった規制緩和によって、
トラック運送業への参入が増え、過当競争が始まりました。
 
その後、トラックを持たない新たな運送業者、
「利用運送」の存在が業界の構造を変えていきます。
 
辻本社長は運送費が下がる原因が、
この利用運送にあると考え、規制することを訴えています。
「電話一本でピンハネ、いいかたオカシイけど、ピンハネとかそういう人らは、
我々の苦しみを・・・気づこうともしないでしょ。」(辻本社長)
 
利用運送業者は、荷主から発注された荷物を、
運送業者に仲介する仕事を行っていて、
その数は規制緩和によって増え続けています。
 
実際にどんな仕事をしているのか、ある業者を取材しました。
 
こちらの男性は2年前まで運送会社で働いていましたが、
現在は自宅で利用運送業を営んでいます。
 
「夕方積みなんですって4時ごろのそれはいけます、
ちょっと待って下さいね」(運送業者との電話)
「オッケーですねほんなら、4トンウイングでいきますんで、
はいよろしくお願いします」(荷主への電話)
受話器を同時に二つ手に持ち、荷物を運ぶトラックを、まだ手配できていない業者から、
積荷や場所の情報を聞きだして、空車のトラックを持つ運送業者を探して、電話で仲介をしています。
 
この電話で、2万5千円で受けた仕事を、
運送会社に2万3千円で発注することで、2千円の収入を得ました。
 
「(手数料は)多い時は大きくとれますね、まあ5千円6千円、
一回のやりとりで。あとはこつこつ、千円二千円の積み重ねという形、
まあどこもがそうやと思うんですけどね」(利用運送業の男性)
国が認めた事業にも関わらず「ピンハネ」と批判されることについて男性は・・・
 
「僕が向こう(運送業者)の立場ならそう思うかもしれません。
いらないところで抜かれている、お金を。でも僕らからすれば
それ(利用運送)がなければ成立しないこともありますわね。」(利用運送業の男性)
規制緩和で業者が乱立し、そのことで運送費がさがり、
トラックを走らせるドライバーに過酷な労働がのしかかっています。
 
さらに調べると、大手の運送業者に問題があるという意見も
 
 
「(大手は)実際走らず丸投げ、丸投げ、
最後走る所が半額以下の料金で走っていると…」(辰巳さん)
 
業界の改善を訴える辰巳さんが、大手運送業者から入手した資料。
大型トラック一台、16万8000円の運送費を、関連会社に10万円で丸投げし、
関連会社は7万5千円で下請け業者に、さらにその下請けは
わずか6万5千円でトラックを走らせていました。
 
こうした構造によって、中小零細業者の7割が赤字を強いられる中、
大手の多くは、増収増益を果たしています。
 
 
「運賃が半分以下なら、当然ドライバーの賃金も半分以下になりますよね。
そしたらそのドライバーさんは生活家族を守るために、
15時間16時間、強いては 18時間という長時間、
あの大きなトラックを一人で運転するわけなんですよ。そら事故も起きますわ」(辰巳さん)
 
日曜日に会社を出てから一度も家に帰らず、
3000キロ以上を移動しているドライバー、滝本さん。
木曜日、長崎へ向けて3度目の長距離運転をしていました。
「とりあえず走れるとこまで走って眠たくなったらそこで寝るかなと、2.3時間くらいは。
ここで寝たいという気持ちと、早よつかないといけないという気持ちと、
自分の気持ちの中で戦っている状態ですね。」(滝本さん)
眠くなるのを避けるため、食事も採らず、6時間走り続けましたが、
深夜0時前に、限界が訪れました。
ちょうど通りがかった広島県の宮島SAに、なんとか車を無事に停車させました。
 「休憩します」「今、目が波打って来た、」(滝本さん)
 
 
突然襲った睡魔。
 
目的地、長崎までは、あと400Kmほど。
約束の時間を守るためには、仮眠しかとれません。
 
それから1時間後、遅い夕食を買いに売店へ、
 
手にしたのはおにぎり二個、
 
節約のため、SAの無料の飲料水を、ペットボトルに入れます。
 
これだけ過酷な勤務でも、1週間に一度、家に帰れることは、
他のドライバーより恵まれていると話します。
Q.もっとゆっくり、ご飯食べたいとか、ゆっくり寝たいとか、そういう願望ありますか?
「それは夢ですね、願望ありますよ。
今があまりにもひどすぎる、いまよりちょっとでもましになってくれれば…」(滝本さん)
過酷な運転をしないと、人並みの生活が送れない・・・
多くの中小零細業者が今、同じ課題に直面し、
満足に寝る事もできないドライバーに、事故の危険が潜んでいます。
 
2012年5月7日放送

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