規制緩和によっての犠牲業種です」(辻本社長)
1990年から始まった規制緩和によって、
トラック運送業への参入が増え、過当競争が始まりました。
その後、トラックを持たない新たな運送業者、
「利用運送」の存在が業界の構造を変えていきます。
辻本社長は運送費が下がる原因が、
この利用運送にあると考え、規制することを訴えています。
「電話一本でピンハネ、いいかたオカシイけど、ピンハネとかそういう人らは、
我々の苦しみを・・・気づこうともしないでしょ。」(辻本社長)
利用運送業者は、荷主から発注された荷物を、
運送業者に仲介する仕事を行っていて、
その数は規制緩和によって増え続けています。
実際にどんな仕事をしているのか、ある業者を取材しました。
こちらの男性は2年前まで運送会社で働いていましたが、
現在は自宅で利用運送業を営んでいます。
「夕方積みなんですって4時ごろのそれはいけます、
ちょっと待って下さいね」(運送業者との電話)
「オッケーですねほんなら、4トンウイングでいきますんで、
はいよろしくお願いします」(荷主への電話)
受話器を同時に二つ手に持ち、荷物を運ぶトラックを、まだ手配できていない業者から、
積荷や場所の情報を聞きだして、空車のトラックを持つ運送業者を探して、電話で仲介をしています。
この電話で、2万5千円で受けた仕事を、
運送会社に2万3千円で発注することで、2千円の収入を得ました。
「(手数料は)多い時は大きくとれますね、まあ5千円6千円、
一回のやりとりで。あとはこつこつ、千円二千円の積み重ねという形、
まあどこもがそうやと思うんですけどね」(利用運送業の男性)
国が認めた事業にも関わらず「ピンハネ」と批判されることについて男性は・・・
「僕が向こう(運送業者)の立場ならそう思うかもしれません。
いらないところで抜かれている、お金を。でも僕らからすれば
それ(利用運送)がなければ成立しないこともありますわね。」(利用運送業の男性)
規制緩和で業者が乱立し、そのことで運送費がさがり、
トラックを走らせるドライバーに過酷な労働がのしかかっています。
さらに調べると、大手の運送業者に問題があるという意見も
「(大手は)実際走らず丸投げ、丸投げ、
最後走る所が半額以下の料金で走っていると…」(辰巳さん)
業界の改善を訴える辰巳さんが、大手運送業者から入手した資料。
大型トラック一台、16万8000円の運送費を、関連会社に10万円で丸投げし、
関連会社は7万5千円で下請け業者に、さらにその下請けは
わずか6万5千円でトラックを走らせていました。
こうした構造によって、中小零細業者の7割が赤字を強いられる中、
大手の多くは、増収増益を果たしています。
「運賃が半分以下なら、当然ドライバーの賃金も半分以下になりますよね。
そしたらそのドライバーさんは生活家族を守るために、
15時間16時間、強いては 18時間という長時間、
あの大きなトラックを一人で運転するわけなんですよ。そら事故も起きますわ」(辰巳さん)
日曜日に会社を出てから一度も家に帰らず、
3000キロ以上を移動しているドライバー、滝本さん。
木曜日、長崎へ向けて3度目の長距離運転をしていました。
「とりあえず走れるとこまで走って眠たくなったらそこで寝るかなと、2.3時間くらいは。
ここで寝たいという気持ちと、早よつかないといけないという気持ちと、
自分の気持ちの中で戦っている状態ですね。」(滝本さん)
眠くなるのを避けるため、食事も採らず、6時間走り続けましたが、
深夜0時前に、限界が訪れました。
ちょうど通りがかった広島県の宮島SAに、なんとか車を無事に停車させました。
「休憩します」「今、目が波打って来た、」(滝本さん)
突然襲った睡魔。
目的地、長崎までは、あと400Kmほど。
約束の時間を守るためには、仮眠しかとれません。
それから1時間後、遅い夕食を買いに売店へ、
手にしたのはおにぎり二個、
節約のため、SAの無料の飲料水を、ペットボトルに入れます。
これだけ過酷な勤務でも、1週間に一度、家に帰れることは、
他のドライバーより恵まれていると話します。
Q.もっとゆっくり、ご飯食べたいとか、ゆっくり寝たいとか、そういう願望ありますか?
「それは夢ですね、願望ありますよ。
今があまりにもひどすぎる、いまよりちょっとでもましになってくれれば…」(滝本さん)
過酷な運転をしないと、人並みの生活が送れない・・・
多くの中小零細業者が今、同じ課題に直面し、
満足に寝る事もできないドライバーに、事故の危険が潜んでいます。