社説:増税法成立 「決める政治」を続けよう
毎日新聞 2012年08月11日 02時30分
もちろん、すべてを是とするわけではない。何よりも国民の理解を得る努力がまだ不足している。7月末の毎日新聞世論調査では61%が依然として「今国会での消費増税法案成立を望まない」と答えている。何のために増税するのか。社会保障がどう変わるのか。増税分が社会保障以外にあてられるような解釈はとても容認できない。法を成立させた民主、自民、公明3党は、根気よく丁寧に説明し続ける責任もまた共有すべきだ。手をこまねくと次の選挙で反発を受け元も子もなくなる可能性があることを胸に刻んでほしい。
財政と社会保障制度もこれで持続可能になったとはいえない。どんな課題にせよそれぞれの政党が歩み寄ることによって「決める政治」をしたたかに継続させることが必要だ。
特に、財政改革の道はなお険しい。政府の目標は、20年度までに基礎的財政収支を黒字化する、つまり、国債の元利払いを除いた歳出を税収の範囲内に収めるようにすることだが、内閣府推計によると、法通り消費税率が10%になってもその時点でなお約17兆円の赤字が出ることになっている。これは経済の名目成長率が毎年平均1.5%程度で推移することを前提としており、実際の赤字額はもっと膨らむ可能性がある。
これまで借金財政を許容してきた環境が急変していることも指摘したい。労働人口の減少や経常黒字の縮小などである。日本に猶予の時間は乏しいということだ。