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難産の末に、一体改革関連法が成立した。国会が消費増税を決めたのはじつに18年ぶりだ。民主、自民の2大政党が、与野党の枠を超え、難題処理にこぎつけたことをまずは評価したい[記事全文]
韓国の李明博(イ・ミョンバク)大統領が、竹島を訪れた。日韓がともに領有権を主張している島だ。これまで韓国の首相が訪れたことはあったが、大統領の訪問は初めてのことだ。[記事全文]
難産の末に、一体改革関連法が成立した。
国会が消費増税を決めたのはじつに18年ぶりだ。民主、自民の2大政党が、与野党の枠を超え、難題処理にこぎつけたことをまずは評価したい。
一方で、政策より政争に走る政治の弱点もあらわになった。
衆院解散の時期をめぐる駆け引きのなかで、一時は関連法の成立が危ぶまれた。そうなれば国際社会や市場の信頼を損ね、国民に多大なリスクをもたらすところだった。
足を引っ張り合うばかりの政治はもう終わりにしよう。政治が答えを迫られている課題は、なにも一体改革だけではない。
だが、さっそく気になる動きが出ている。
野田首相が「近いうちに国民に信を問う」と自民党の谷垣総裁に約束した。この表現について、両党の解釈がずれている。
自民党が今国会での解散を要求しているのに対し、民主党では輿石幹事長が「『近いうち』にこだわる必要はない」と語るなど先送り論が大勢だ。
これをきっかけに、対立の再燃が懸念される。
そうなれば、角突き合わせる政治が繰り返されるだけだ。過去5年の「動かない政治」の教訓を、民主、自民両党とも改めてかみしめるべきだ。
07年参院選で与党だった自民党が敗れ、衆参両院の「ねじれ」が生まれた。それをテコに民主党は徹底的に自民党政権を揺さぶった。
10年参院選で今度は民主党政権が負け、その逆になった。
やられたら、やりかえす。
そんな子どものケンカのような政治は、もう願い下げだ。
いまの参院の議席配分からみて、総選挙後も単独で両院の過半数を握る政党はない。「ねじれ」国会は今後も続く。
国民に負担を求める政策の実行がいかに困難か。一体改革をめぐる協議で、両党は身をもって学んだだろう。
ここはチャンスである。
政党同士、建設的な批判は大いにしあうのは当然だ。ただし、不毛な政争はやめ、協力すべきは協力する。
一体改革関連法の成立を、そんな新しい政治文化をつくる一歩ととらえたい。
懸案は山積している。解散までの間、各党は協力してその処理を急がねばならない。
とりわけ、最高裁に違憲状態と指弾された衆院の「一票の格差」の是正は急務である。
一票の価値の平等は、代議制への信任の根幹だ。政治はそのことにあまりに鈍感すぎる。
韓国の李明博(イ・ミョンバク)大統領が、竹島を訪れた。日韓がともに領有権を主張している島だ。
これまで韓国の首相が訪れたことはあったが、大統領の訪問は初めてのことだ。
自ら「最も近い友邦」と呼んだ日本との関係を危うくしたことは、責任ある政治家の行動としては、驚くほかない。
日本政府は強く抗議して、駐韓大使を呼び戻す。日韓の関係が冷えこむのは避けられない。
事態を沈静化させる責任は、まず大統領にある。もともと経済界出身の実務家で、08年の就任直後から「未来志向の韓日関係」を掲げていたはずだ。
両国関係は、竹島問題がくすぶりながらも良好だった。それがこの1年あまりで、急速におかしくなった。元従軍慰安婦の問題がきっかけだ。
韓国の憲法裁判所の決定を受けた昨年末の首脳会談で、李大統領は慰安婦問題を取り上げ、野田首相に解決をせまった。
これに対し首相は「法的に決着ずみ」との立場を伝え、ソウルの日本大使館前に立つ慰安婦記念像の撤去を要求した。
だが今回、大統領の背中を押したのは、こうした懸案というよりも、本人の足元の問題ではなかったか。
来年2月の任期切れを前に、大統領周辺では実兄や側近の逮捕が相次いだ。経済格差の広がりへの不満も強く、政権はすでに力を失っている。
15日の光復節を前に領土への強い姿勢を示す狙いだろうが、韓国民が一時的に沸きたっても、暮らしのプラスになるものではない。もはや、政権の浮揚にもつながるまい。逆に、竹島の領有権問題に決着がついていないことを国際社会に印象づけることにもなろう。
内政が手づまりの時、為政者が国民の目を外にそらそうとすることは歴史に何度も見られた。ナショナリズムをかきたてる領土問題は、格好の材料だ。
だが、そうした紛争のもとを絶つことこそ、指導者の最大の責務である。李大統領は、あるべき姿から正反対に動いたと言わざるをえない。
近隣諸国との懸案を一向に解決できない日本政治の弱さも、放っておけない。どの政党も、これを政局の材料にすることなく、冷静にこの問題にあたるべきである。
東京で韓国のポップスターの公演に数万の日本人が集い、ソウルの繁華街では地元の店員が日本語で観光客を迎える。市民レベルの交流は空前の活況だ。
それを政治が後戻りさせることは、許されない。