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【サッカー】

宮間「仲間に感謝」 主将の重責果たした

2012年8月11日 紙面から

 泣き崩れた。ほおを伝わる涙が止まらない。歓喜に沸く米国選手の脇で、主将のMF宮間はピッチに倒れ込み、両手で顔を覆った。嗚咽(おえつ)に肩を震わせて、唇をかんで泣き続けた。

 「チーム一丸となってやり切れたことを誇りに思っている。結果は銀だったけど、お互いを信じてやってこられた。自分たちができることはすべてやったと思うので、みんなで取った銀メダルだと思う」

 沢から引き継いだ主将という責任あるバトン。周囲からの金メダルへの期待は大きく膨らみ続け、重責と不安が小さな体に重々しくのしかかった。つらく、苦しい思いは決して表には出さなかったが、「ロンドンの夏」を終えて、すべてが涙となって発露した。

 「誰よりも、自分自身に素直に生きたい」

 真っ先に仲間に声をかけ、手を差し伸べる。寄り添い、肩を寄せ、心に届く言葉をそっと送り届ける。「自分がやりたいからやっているだけ」。宮間自身は素っ気なくそう言うが、できるようでできない、当たり前の仲間への心配りがあった。

 佐々木監督は言う。

 「ピッチの外でも選手と思いを共有しながら、チームワークをコントロールしてくれていた。ピッチ内外で本当によくやってくれたなと、ぼく自身も感謝している」

 試合後、宮間の肩をずっと抱いていた大儀見は「(宮間)あやはいろんなものを背負いながら戦っていた。本当はいつも通りにやってほしかったけど、そうなってしまうのが、あやの良いところでもあるので」と思いやった。昨年の女子W杯準々決勝のドイツ戦。前半だけでベンチに下げられ、喜びに沸くチームでただ一人涙を流した大儀見を慰めてくれたのが宮間だった。自分のことは後回し。仲間のためなら、どんな犠牲を払ってでも−。

 猛攻の中心にいたのは、そんな宮間だった。後半18分、追撃弾をおぜん立てすると、同21分に狙った左足シュートは惜しくもバーに阻まれた。走って走って、攻守に奔走。正確なキックで米国ゴールを襲い続けた。全力で最後まで戦い抜いた。「後悔しないように、『いま』を生きたい」−。宮間の源流を体現するような激闘の90分間だった。

 表彰台に上がり、首から下げたメダルは大きく、重く感じた。うれしかった。それよりも、伝えたいことがあった。

 「ここまで来られたことを仲間に本当に感謝している。ありがとうのひと言しかない」

 キャプテンの最後の言葉も、やはり仲間への感謝だった。

   (松岡祐司)

 

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