名古屋グランパスのドラガン・ストイコビッチ監督(47)が10日、前日の激怒から一転、笑顔で選手たちに接した。8日のナビスコ杯清水戦ではロスタイムに逆転敗退。翌9日には猛暑の中で30分間の公開説教を行い、激しい言葉とアクションで選手たちへの怒りをあらわにしたが、最終調整を行ったこの日は別人のようにニコニコ。中2日で同じ相手と戦う特殊な状況で、猛省を促しつつ暗くならないよう、雰囲気をコントロールした。
おそるおそる集まった選手たちにとっては、拍子抜けすらしそうな変わりっぷりだった。前日に30分もの間、激しい怒りを選手たちにぶつけたストイコビッチ監督が、この日は終始笑顔で練習を見守る。右足手術から退院しクラブハウスに戻って来たMF磯村をねぎらい、来客にもフレンドリーに対応した。
9日、あえてサポーターや報道陣から遠ざけた円陣のなかで指揮官は、MF小川が「とても話せない」と口をつぐむほど選手たちの肝を冷やす言葉を次々と浴びせた。GK楢崎とDF闘莉王には反省の弁を述べさせると、最後は持っていたホイッスルを派手なアクションでピッチにたたきつけ終了。「監督を見返したい」。そう漏らす選手もいたほどだった。
一夜明けたこの日の会見では、自らとチームの気持ちの切り替えを強調した。「2日前は本当にストレスがたまったが、明日は新しいゲームだ。清水は昔からのライバルで、いつもと同じ重要なJの公式戦だ」。また、あえて厳しい言葉で選手のプライドを刺激したことを認め、「プロとしての責任や義務を説いた」と説明した。
この意図は選手たちにも伝わっていた。DF増川は「監督がそれを伝える立場だというのはわかってる」と理解を示し、MF吉田は「ずっと険しい感じかと思っていたけど、明るく振る舞って送り出してくれた。そのほうが試合にも入りやすい」と感じ入った。ロスタイムでタイトルを逃す屈辱を受けた相手との中2日での再戦に向け、悔しさばかりが空回りしてはいけない。
カミナリ、のち、晴れ。それがピクシー流のメンタルコントロールだ。
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