東日本大震災の津波で生じた災害廃棄物(がれき)は、岩手県で通常の一般廃棄物の11年分、宮城県で19年分にのぼる。その速やかな処理は被災地の復旧・復興の大前提だが、被災地だけでは処理能力が大幅に不足している。
このため野田佳彦総理は3月16日、すでにがれきを受け入れている東京都などを除く全国35道府県の知事に、広域処理への協力を求める要請書を送った。細野豪志環境大臣も同日、全国の都道府県や政令市に宛てて要請書を送り、広域処理が必要な計401万トンの災害廃棄物について可燃・不燃など種類別の広域処理希望量やその放射能濃度を明記するとともに、広域処理に必要な費用も含めて国が全面的に支援すると表明した。
政府を挙げた取り組みに呼応して、民主党でも災害廃棄物の広域処理推進を目指す議員の活動がスタート。北九州市などの自治体議会でも受け入れに賛同する決議が全会一致で採択されるなど、全国で広域処理に協力する動きが広がり始めている。
がれきの全国受け入れ推進、活動に手応え
東日本大震災・災害廃棄物広域処理推進議員連盟幹事長
衆院議員 伴野 豊(ばんの・ゆたか=愛知8区)
災害廃棄物の広域処理については、政府も呼び掛けに努力し、党組織としても各県連などへ働き掛けてきました。しかし安全性が十分に伝わっていない部分もあり、総論は賛成でも各論では受け入れ反対という状況があります。そこに風穴を空けるために、髙木義明議員を会長とする災害廃棄物広域処理推進議員連盟が立ち上がったのです。
短い告知期間にもかかわらず多数が設立総会に出席し、会員は現在108人。参加議員は全員が何らかの役職に就き、責任者として奔走してもらっています。効果は大きく、地方紙でも連日取り上げられ、いろいろな自治体から手が挙がり始めました。確かな手応えを感じています。
しかし一部の自治体だけが処理を引き受けるのでは限界があり、地域の反対が強い自治体は相対的に苦しい立場になります。目標はやはり全国的に広げること。新しい仕組みにはどうしても反対があるものですが、中には批判のための批判もある。勇気を持って挙手した自治体の長にその攻撃が向かうなら、国会議員は一緒に痛みを分かち合い、孤立を防ぐことも役目です。
情報が不正確に伝わっている点は反省し、正しい情報に基づいて地方自治体や住民の皆さんにご理解をいただくため、議員自らが赴いて説明を行う努力をしなくてはいけません。現地の声や要望をきちんと中央政府に伝えるという意味でも良いことです。例えば、ご協力いただける自治体が処理場の新規建設や拡張を計画していたのであれば、インセンティブとして国がその前倒しに助力することも、当然あっていいと思います。
がれきを被災地だけで処理すると、20年以上かかる地域もある。復興の妨げ、臭いや粉塵の問題に加え、被災者の大切な私財だったものが廃棄物としてさらされている状況は精神的にも良くありません。震災時に諸外国から賞賛された日本の絆(きずな)。がれき処理に関しても、さすが日本と評価されるような動きにしなければと思います。
今の被災地の痛みは明日のわが痛みになる可能性もあります。自分が困ったときだけはお願いします、とは言えないでしょう。まず人の困難を分かち合ってこそ助け合いの関係が生まれます。日本に望まれているのは、そういう姿ではないでしょうか。
「がれき受け入れに関する決議」全会一致で採択
北九州市議会議員 松井 克演
北九州市議会の本会議場で3月12日、議運委員長から「東日本大震災で発生したがれきの受け入れに関する決議」が読み上げられ、全議員61人全員の賛成で採択されました。東日本大震災から数えてちょうど1年。通例であれば各種の決議案は議会最終日の23日に採決しますが、12日採決となったのも全会派一致での決定でした。
決議文の中に「被災地の方々の苦悩を思うと、全国民の協力によるがれきの1日も早い処理が求められている。がれきの処理は全国の自治体の協力がなければ、この先十数年そのままの状態となる。がれきの処理なくして被災地の真の復興はあり得ない」とある通り、まさに「絆(きずな)」の証しとも言える全議員の熱い思いが一つになった決議です。
この決議を受けて北九州市もその準備に取りかかることになりますが、同時にわれわれ全議員には市民の「安全・安心」に不安のないよう対策を講じつつ、全市民の納得を得るための活動が求められます。がれき受け入れの第2ラウンドです。それは市議会決議を採択したわれわれ議員の責務であり、市民の納得と早期受け入れ実施に向けて、一層の活動を推進しようとあらためて決意しています。
(まつい・かつひろ 党福岡県連地方議員団会長)
決議のポイント
- がれきの処理なしに被災地の復興はない。全国民の協力によるがれきの1日も早い処理が求められている。
- 北九州市議会は市に対し、科学的な知見により放射能の影響を検証し、放射線量の測定等十分な体制を整えることを条件に、通常の廃棄物相当と判断されるものの受け入れを表明することを要請する。
- 受け入れに際し、岩手・宮城のがれきについて情報を開示するとともに、本市での放射性物質濃度を国の基準以下にするなどの検討もあわせて要請する。
(プレス民主4月6日号より)