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昨年12月に亡くなった市川定夫氏は、原水爆禁止日本国民会議議長であったが、同時に、埼玉大学の教授でもあった。 このような大学教授のポジションにあった人が、生物は「自然」放射性核種には適応しているから無害で、「人工」放射性核種は生体内で濃縮されるので有害であるといった主張をしているとは思わなかった。 その主張が全く間違っているということを、恐らく、ご本人は分かっていたと推測している。すなわち、確信犯的に嘘を付いていたのではないだろうか。 先日来、市川氏の講義のビデオがWebには転がっているということを述べてきたが、その発言をわざわざ記録してくれている親切なサイトがある。 http://kiikochan.blog136.fc2.com/blog-entry-404.html このkiikochanは、その嘘にまんまと騙されているが、医者(熊本県の院長さんだそうだが引用しない)でも騙されている人がいるのだから、仕方がないのかもしれない。 このような嘘の発言に対して、普通、科学者は反論をしない。その最大の理由は、今回のケースであれば、科学的に正しくないことが馬鹿馬鹿しい程ミエミエなので、そのようなことをしても、誰も評価してくれないからである。 しかし、科学にとってコミュニケーションというものは非常に重要である。科学者は、その研究費を公的な資金に依存しており、最終的な選択は、民主主義社会においては、選挙民によってなされるので、公的な資金を使う人は、選挙民に対して、常に、「何が正しく、何が正しくないか」を伝達していなければならない。 一般的な科学者にとって、このような認識が全くないわけではないが、時間不足を理由にコミュニケーションをやらない人、一般向けの言葉を話すことに慣れていない人、などなどが大多数であるのが現状である。 というわけで、非常に物好きな行為であると自認しつつ、市川氏の講演の妙なところについて、いちいち反論をしてみたい。 以下、青字が市川氏の主張である。反論を黒字で書いている。なお、kiikochanの表現で日本語がおかしなところは、修正してある。 市川定夫氏の講演 人工放射能は蓄積するーセシウムの場合ー 青字が市川氏 黒字が反論 その、カリウム40というのは、正しいカリウム、地球上に存在するカリウムのうちのほぼ1000分の1です 10000分の9999は放射能の無いカリウムなんですが、10000分の1の割合でカリウム40というのがわいてきているんです。ただそれでも、10000分の1なんだけれども、皆さんが天然の放射能から受ける被ばくの殆ど大部分はこれ(カリウム40)なんです この次に多いのがラドンです。時々ラジウム温泉とかラドン温泉とかに行かれるとそのラドンの被ばくがちょっと加わる。 カリウムというのはいたずら者も混じっていますから生物は、地球上に出た生物はカリウムに適応しています。いたずら者があるカリウムに。 カリウムはどんどん我々の身体に入ってくるけれど、どんどん出ていくんです。入るスピードと出るスピードが同じになっているんです。我々の体の中にカリウムを蓄える器官とか組織は全くない。植物にも無い、動物にも無い微生物にもありません。 ヒトにとってカリウムは必須元素。体内に140g程度を常時持っている。体内存在量は、1位酸素、2位炭素、3位水素、4位窒素、5位カルシウム、6位リン、7位カリウムである。 一方、1日の摂取量は2.5〜3.5gなので、体内に約40〜50日分の摂取量を蓄えていることになる。この状態を「蓄えない」と表現するのが妥当だろうか。 カリウムを蓄える器官・組織はないのではなく、すべての細胞がカリウムを必要とし、蓄えている。カリウムは、細胞の生存にとって必須な元素である。その0.0117%はカリウム40である。 カリウムは皆さんご存知のように窒素、リン酸、カリという3大肥料の一つで、絶対に必要なんですが、どんどん取り込んでどんどん出して、循環させて利用するんです それは何故かというと、こういういたずら者(カリウム40)が混じっていたから。 カリウムは水に溶けた状態で主に細胞内に存在しており、細胞膜の中と外でカリウムの濃度を違えることで、細胞膜の両側に電位を発生させるといった重要な役割をもっている。ところが、カリウムは水に溶けた状態で存在しているため、あるときには意図的に、あるときは偶然に細胞外に流れ出て、そして、最終的には体外に排泄されてしまう。そのため、常時、食物や肥料から取り込む必要がある。 カリウムをどんどん取り込む生物が進化の途中で現れたとしたらその生物は被ばくが大きくなりますから、そういう生物は不利でしたから栄えなかった。つまり、現在まで生き伸びているという事はこの地球上で不利な性質をもたなかったから、今生き延びているですから、現在の生物が全てカリウムを蓄えないのはそういうことなのです。 もしもカリウム40程度の放射線が生命にとって危険であるのなら、カリウムを使わない生命ができたはずだ、という主張のようだ。これは証明されてはいないが、間違っているとも思えない。しかし、そうはいかなかったのが地球の生命にとって厳しい現実である。カリウム以外に適当な元素が無かったからである。 生命は、地球上にある限られた元素を活用して、生命活動を行なっている。例えば、酸素を呼吸して、体全体にくまなく運ぶためには、酸素を輸送する手段が必要。そのために動物には血液があるのだが、哺乳類など多くの動物は、鉄が酸素と結合したり、酸素との結合を切ったりすることができること(酸化還元が起きること:価数が変わること:などと同じ)を利用して、酸素を送るメカニズムを作った。 もともと海水中に存在していたのが生命だから、海水中に溶け込んでいた鉄イオンを活用する生命が発達した。水に溶ける鉄は2価の鉄である。地球ができたとき、大気には酸素が含まれていなかったから、鉄は2価イオンがもっとも普通の状態で、海水に溶け込んでいた。 ところが、シアノバクテリアが発生し、光合成を始めたため、空気中の酸素が増加すると、海水中の鉄は酸化されて3価になった。3価の鉄は水に溶けにくく、固体状の酸化物に変化した。これが、現在我々が使っている鉄鉱石である。 イカやタコ、あるいはカタツムリや貝類のように、血液が酸素を運搬する際に、鉄ではなくて、銅の酸化還元を使う生物がある。それは、酸素が増えて銅の酸化物が水中に存在できるようになったからである。銅の酸化還元が使えるようになったのは、今から18億年ほど前のことである。イカ、タコ、カタツムリなどは、それ以後に発生した細胞を使って、生命体を作った生物なのである。 さて、カリウムの話に戻って、細胞が様々な機能を果たすために、例えば、細胞内器官であるミトコンドリアはエネルギー源を合成するために、また、神経細胞であれば電気信号を作って隣の細胞に送ったりするために、細胞膜の外と中で、イオンの濃度を変えるという手法が取られている。 しかも、何か一つの元素で全部の役割を行うという訳にはいかず、何種類かのイオンを使う必要があった。 このような目的に使うことができる元素は、水によく溶ける元素であることが必要で、水素、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウムがある。現在の生命の多くは、水素、ナトリウム、カリウムを利用している。 もしもカリウム40の放射線が本当に有害であるのなら、リチウム、ルビジウム、セシウムを使う生命が作られた可能性が高い。しかし、そうはならなかった。 理由は簡単で、これらの元素は地球上での存在量が少ないからである。 さて、このセシウムというのには、残念なことながら天然のセシウムというのが無いんですが、 残念ながら、正しくないんです。ここまでウソをつくのか! 可能性は少ないが、単に知識がないのかと疑ってしまう。それとも単に表現が不正確なのか。 セシウムの地殻中での存在率は、諸説あって、1.9〜3ppm。少ないながらも実用上の用途もあるので、年間20トンほどが採掘されている。 セシウムを原子炉の中で作りますとカリウムと化学的性質が同族ですから、よく似ているんです。よく似ていますから、セシウムはどんどん入ってきます。残念ながら体の中にどんどん入ってくるんです。で、やはりカリウムと同じでどんどん出ていきます しかし、問題なんです。我々の腎臓、物を排出する腎臓は、セシウムに対しては排出する能力がちょっと劣るんです。胃壁とか腸壁を通って入ってくる速さはカリウムと同じなんですが、出ていく速さが少し遅いんです。 「遅い」というところまでは合っている。なぜ遅いかというと、それは個々の細胞からカリウムが抜け出すチャンネルを通る速度が、多少サイズが大きなセシウムでは遅いためだろう(厳密に言えば、サイズだけではないく、荷電/サイズといった値も影響することが考えられるが、セシウムのように、水溶液中で水を配位してはいるが、球対称のイオンでは、化学的性質に軌道の形が利くとも思えず、サイズがもっとも重要なのではないか)。 殆ど出ていくんですが、例えば100入るたびに1個残る、100入るたびに1個残るとやっていってだんだんだんだん溜まっていくのがセシウムですから、、じわじわと時間をかけて増えていきます この説明だと一定の割合で、上限なしに一定量が、しかも摂取量に比例して溜まるような印象だが、そんなことはない。セシウムの体内半減期=生物学的半減期が30日の子どもでは、その約1.4倍の43日がセシウムの平均体内寿命なので、毎日一定量のセシウムを摂取している場合であれば、摂取量の43日分までは溜まり、それが体内に蓄積される最大値。老人のように、体内半減期が100日ならば、約140日分が蓄積される。 摂取したセシウムも、子どもであれば、43日以前に摂取したものは、ほぼ消えると考えても良い。 ナレーション: ラップランドの人達は事故から1年経って体内のセシウム量が急激に上昇した。 毎日一定量を摂取しているのであれば、放射性セシウム量は、徐々に増えるが、急激に増えることはない。 もしも、このラップランド(ラップは差別用語だとされているので、サーメ人の居住地という表現が望ましい)の件が事実だとしたら、サーメ人はトナカイの肉が主食であるので、まず、トナカイの体内セシウム濃度が上昇し、それからサーメ人の体内セシウム濃度が上昇したと考えるのだろう。しかし、急激に増加することはなく、徐々に上昇し、上に述べた上限値で止まる。 原発を推進される方々はいつもこれの比較する。絶対にごまかされないでください。「人工放射線と自然放射線」の比較をして原発を推進する人はやるわけです。 これまで述べた反論だけでも、どちらが嘘をついているのかが明白。 私達が本当に比較しなければならないのはこっちなんです。「人工放射性核種と自然放射性核種」。 「核種」という言葉がでてきた。核種は正確な表現であるが馴染めないかもしれない。「人工放射性核種と自然放射性核種」=「同一元素の人工放射性のものと自然放射性のもの」という意味なので念のため。以下、そう置き換える。 「同一元素の人工放射性のものと自然放射性のもの」の体内挙動に差はない、と断言できる。放射線の害がすごいということを主張する人々にとって、自然放射線の存在、特にカリウム40という自然放射性核種の存在は、かなり邪魔ものなのである。 さっき言ったカリウム40といったものが、天然に昔からあったのです。そういう危険なものがあったら全生物は蓄えない、という形で適応しているわけです。 これは大嘘。ちゃんとすべての生物は蓄えている。勿論、生物に蓄えるという意図がある訳ではないが。 生物の進化と適応の過程で遭遇してきたものに対しては、それをくぐり抜けてきたものしか生き残っていないという形で、結果として。だから、こういうものは蓄えないという形で適応していて、自然の放射性物質を濃縮して蓄えるという生物は一つもいません。 この最後の文章の後半だけを読むと、「濃縮して蓄える」と記述されていて、カリウム40に関しては、確かに濃縮はしていないので、正しい。どうも、市川氏は、本当のことが分かっていると判断するのはこの部分から。「蓄えない」と「濃縮しない」を、巧みに使い分けている。そして、言い訳が言えるように、最後の最後だけは、正しい発言をしているのではないか。 カリウムは確かに濃縮はされない。しかし、それは、カリウムは、水に溶けた状態で体内あるいは細胞内に存在しているために、濃縮するのが難しいだけ。ストロンチウムは骨が固体で、代謝するメカニズムの動作速度が遅いので、一旦入り込めば、骨からでるのに時間が掛る。そして、ヨウ素は甲状腺ホルモンをつくる甲状腺という特殊な組織以外では不要な元素なので、甲状腺にのみ濃縮される。単にそれだけ。 すなわち、元素が体のどこにどのようなに分配されるか、ということは、元素の化学的性質がすべてを決めていて、生命が「同一元素の人工放射性のものと自然放射性のもの」の区別をしている訳ではない。 ところがヨウ素。ヨウ素はさっき言ったように、天然のヨウ素は全部非放射性でしょ。放射能の無いヨウ素だから、われわれ、生物は安心して何百万倍も濃縮したし、人間は安心して甲状腺に集めて利用しているわけです。 ヨウ素は甲状腺ホルモンという重要なホルモンの原料だから必要不可欠で、しかも、海から遠いところに居住するヒトにとっては、ヨウ素は、ときどきしか入手できない貴重な元素だから甲状腺に集めて利用している。非放射性であることとは無関係。 安全だったからそういう性質は貴重な優れた性質になり得た。ところが、その安全だった元素に放射性の核種をつくったらダメなんです。 濃縮するものを考えてみると、いままでその元素には放射性がなかった。そういう元素に放射性のものを作ったときに濃縮する。 濃縮するかどうかは、元素の種類によって決まっている。放射性かどうかは無関係。 セシウムも、天然のものはカリウムと一緒に入ってきても非放射性ですから、何も怖いことはない勝手に入りなさい。ね、 あれあれ。先程と矛盾している。「さて、このセシウムというのには、残念なことながら天然のセシウムというのが無いんですが」、と語っていて、今回は、天然のセシウムがあることになっている。この矛盾に気づかないのか、それとも天真爛漫なのか。 ところが、放射性のセシウムを原子炉が作り出すものだから、これも今言ったようにジワジワ蓄えられてしまう。 蓄えられるかどうかは、元素の特性が決めている。セシウムの体内での代謝速度が、そのサイズの大きいためにカリウムよりも遅いからであって、人工放射線核種だからではない。非放射性のセシウムの代謝速度も放射性のセシウムと同じで、カリウムよりは遅い。すなわち、セシウムは、天然のもの放射性のものの区別なく、カリウムよりも体内で高濃度に溜りやすい。 ストロンチウム90もそうです。天然のストロンチウムは非放射性でカルシウムに性質が似ていてカルシウムのあるところ(骨)にストロンチウムは全部いつでも入って来ます。 天然のストロンチウムが入ってきてもいっこうに構わない、非放射性ですから。 ところが原子炉の中で、ストロンチウム90とか、放射性のストロンチウムを作ると、それが骨の中に入ってしまう。ストロンチウム90の半減期は28年ですから、0歳のときに骨の中に入ってしまえば、その人は28歳になっても骨の中に放射能はまだ半分残っていることになる。中から被曝を与える。 ストロンチウムが入ると、白血病や骨髄癌にかかりやすいというのは、それなんです。骨に入って至近距離から骨髄とかに放射線を照射しているわけですから。 天然の非放射性のストロンチウムが入ってきた場合にも、カルシウムと似た化学的性質のために、その用途の一つである骨に溜まる=濃縮される。生物は「同一元素の人工放射性のものと自然放射性のもの」の区別をしている訳ではない。 もしも生物が「同一元素の人工放射性のものと自然放射性のもの」の区別をするとしたらどうやってやるのだろうか。そのメカニズムを見つけたら確実にノーベル賞ものなのだが、実際のところ、生物は「同一元素の人工放射性のものと自然放射性のもの」の区別をしていないので、見つける努力が無駄になるだけ。 これまでその元素に放射性がなかったものに、放射性のものを作ったときに、濃縮する。それが人工放射能の濃縮。 これも嘘。人工放射能だから濃縮されるのではない。例えば、ナトリウムはナトリウム23が存在率100%で、ナトリウム22は放射性であるが天然に存在しない。ナトリウム22(半減期2.605年)を摂取したら、ヒトはそれを濃縮するだろうか。市川氏ならイエスというだろうが、そうではない。全身にくまなく分布している天然のナトリウム23に均等に混ざるだけ。 いままで、天然の放射能に濃縮するものはないというのは適応の結果なんです。 カリウム40が濃縮されないのは、カリウムという元素の特徴。天然の放射性物質でも、ラジウムは、キュリー夫妻によって発見された元素(当然、天然物)であるが、その体内半減期は44年といわれ、やはり骨に濃縮される。 そもそも、自然放射性核種で、被曝量がある程度あって考えなければならないものは、カリウム40、炭素14、ラドン222ぐらいだが、これらは体内で濃縮されない。たった3種類の元素が濃縮されないから、といって、それで一般原則を導くことはいくらなんでも無理でしょう。 ところが、我々が進化と適応の過程で一回も遭遇したことがない、原子力が始まってから初めて出来たものに対して、我々はそういった適応を持っていないんです。 自然放射性核種にも適応してきたとは思えない。放射線の有害性については、人工も自然もなく、同じであることは、以下に記述されているように、市川氏も認めている。すなわち、カリウム40だって、大量に体内に入れれば、有害に決まっている。 昔は、人工放射能と自然放射能は同じようなものだと考えられていた時が一時期あった。私もそう習ってきたしそう思っていた。 これが今でも事実。市川氏は、いつまでそう思って、いつ考えが変わったのだろう。 なお、ここから「人工放射能」と表現が変わっているが、厳密には「核種」が正しい表現。 なぜなら、ウランの核分裂の結果できる人工放射性核種も出す放射線はα線かβ線かγ線なんです。天然にある放射線もα線かβ線かγ線なんです。出す放射線は同じなんです。ウランの分裂の結果できるものも。天然にある物も。放射線は同じなんです。放射能というのは放射線を出す能力で、最終的に我々生物の細胞に傷をつけるのは放射線ですから、放射線が同じなら人工でも自然でも同じじゃないかと昔は考えていた。 科学的に、全く正しい。 ところがそれは間違っている。挙動の違いがあったわけです。濃縮するかしないかという。 「濃縮」といった化学的性質は、元素種が決めること。ストロンチウムであれば、放射性でも非放射性でも同じで、骨という固体に濃縮される。セシウムやカリウムであれば、放射性でも非放射性でも同じで、細胞の中に蓄積される。 それがわかった後なのに、推進派は今度「人工放射性核種と自然放射性核種」がダメとなってわざと「人工放射線と自然放射線」へ持っていく… 「分かった」と認めているのは、市川氏とその仲間だけ。学者の数にすれば、10000:1ぐらいか。また、「人工放射性核種と自然放射性核種」はダメとなっていない。化学的性質は同じ。非推進派でも、ごく普通の科学者であれば、「同一元素の人工放射性のものと自然放射性のもの」の体内挙動が違うとは言わない。これは馬鹿馬鹿しいほど事実なので、理由を述べるまでもないのだが、あえて言えば、生命現象とは言っても、基本的に化学反応であり、人工・自然の区別は、化学反応に関しては全く無いから。 例えば、小佐古教授は非推進派だと思うが、彼に聞いてみたらどうだろう。 放射線の問題にしていく。人工の放射線でも例えば医療の放射線を出してきたり、天然に宇宙から飛んできている放射線も、放射線は放射線で皆さん傷つけているんですよ、人工にも自然にも差はありませんよ、と。 放射線を取り上げたら差はありません。ここには差はないんです。だけど放射線が同じか違うかでは無かったんです。放射線を出す能力を持った放射性核種が、我々の中で蓄積するかしないかの違いなんです。 蓄積するかどうか、それは元素の種類が決めることであって、放射線の有無や、「同一元素の人工放射性のものと自然放射性のもの」という違いが決めるものではない。 市川氏は、農学博士であるが、学生であったのは、1957年頃だろう。そのころ、科学の領域では、何が起きていたのか。ジェームズ・ワトソンがDNAの構造を提唱したのが、1953年。この発見の科学的意味は、遺伝という現象であっても、化学反応が決めるということだった。 それ以後、生物学は全く変わってしまったが、市川氏は、その後の生物学や生化学、さらには医学をどの程度理解しているのだろうか。いささかの疑問はある。しかし、大学教授の職にあった人である。生命現象の基本が化学反応であることぐらいは、きちんと理解している可能性が高い。とすれば、本講演では、意図的に嘘を付いていることになり、科学者・教育者の風上にも置けない人物だということになる。 ナレーション: 人工放射能は体内に濃縮・蓄積する 自然放射能は体内に濃縮・蓄積しない これはそもそも大間違い。生命は、「同一元素の人工放射性のものと自然放射性のもの」を区別する能力を持っていない。そもそも、生命にはこの違いが区別ができないのだからあたりまえだが。 ヨウ素131やセシウム137、ストロンチウム90といった人工放射能(人工放射性核種)は、生体内に濃縮・蓄積し、生物がこれまで適応してきた自然放射能とは比較できない影響を人体に及ぼす。 これも間違い。人工放射性核種だから有害ではなく、放射線が有害だから有害。適応というが、自然放射能に適応していた訳ではなく、自然放射能程度の放射線量であれば、人工・自然の区別なく充分に適応できて、そして、生存してきたに過ぎない。 現在、非推進派の代表格であると思われる人々、例えば、ご紹介したkiikochanのブログでリスト化されている次のような人々に、本講演を正しいと言うかどうか、聞いてみたらどうだろう。「正しい」と言う人が、数名はいそうだが、過半数は「間違い」だと言うだろう。 Kiikochanのブログより 小出裕章先生 武田邦彦先生 後藤政志氏 広瀬隆氏 肥田舜太郎氏 樋口健二氏 石橋克彦先生 菊池洋一氏 矢ヶ崎克馬氏 平井憲夫氏 内橋克人氏 市川定夫氏 田中三彦氏 河田昌東氏 飯田哲也氏 崎山比早子氏 古賀茂明氏 児玉龍彦氏 早川由紀夫氏 上記リストに是非、福島大学の放射線副読本研究会のメンバーを加えたい。ただし、福島大学のこのメンバーの場合には、意図的に嘘をつくというよりも、単に無知である可能性も否定しがたい。 カリウム40の記述は、この副読本には出てこないが、意図的にそれを排除しているのかどうか不明である。 |
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