三越伊勢丹ホールディングスが10日発表した2012年4~6月期の連結決算は経常利益が前年同期比34%増の106億円だった。主力の百貨店事業で雑貨や婦人衣料の販売が伸びた。セール開始時期を従来の7月初めから中旬に遅らせたため6月下旬の買い控えも例年より少なかった。好採算の自主企画商品の販売も拡大し売上高総利益(粗利益)率が改善した。
売上高は微増の2903億円だった。都心の大型店が好調で、伊勢丹新宿本店が4%増、三越銀座店が14%増だった。雑貨や婦人衣料に加え、100万円以上の時計など高額品も売れた。前年同期に東日本大震災の影響で落ち込んだ中国人など外国人の客足も回復。新宿三越アルコット店を3月末で閉店した影響を吸収した。
百貨店事業の営業利益は87%増の48億円と大幅に増えた。粗利益率の改善効果が大きく、首都圏店舗では0.2ポイント改善して27.9%になった。
例年は7月初めのセール開始を前に6月下旬に買い控えが起きていたが、開始時期を遅らせたことで衣料や雑貨を定価で買う顧客が増えて採算が高まった。利益率の高い自主企画商品も、洗濯機で洗えたり、冷感素材を使ったりするなど機能を付加したブラウスやワンピースなどが売れた。
ただ純利益は64%減の60億円だった。前年同期に繰り延べ税金資産を計上して法人税等調整額が115億円減った反動が大きい。株価下落による有価証券評価損と不動産売却損などで22億円の特別損失を計上した。
このため13年3月期通期の連結純利益予想を前期比51%減の290億円と20億円下方修正した。売上高と営業利益、経常利益の予想は据え置いた。
注目を集めるのは7月以降の販売動向だ。7月の百貨店売上高は前年同月比で2.6%減。セールを遅らせた7月前半の販売が苦戦したほか、「土曜日が1日少なかったことと大雨が響いた」(三越伊勢丹)。ただ、販売減少はほぼ想定通りだったもよう。8月の販売は足元まで前年並みで推移している。
ライバルでは7月の販売が苦戦した高島屋などでセール開始時期を今冬以降は例年通りに戻す動きもあるが、三越伊勢丹は採算を重視する方針で今後もセール時期を遅らせる方針だ。
三越伊勢丹の4~6月期の利益は会社計画を上回って進捗した。4~9月期(上期)の経常利益予想(前年同期比11%減の140億円)に対する進捗率は76%。販売が今の水準で推移すれば、上振れする可能性が高い。