ストレッチというと、冬の寒い時期などに体をほぐすのに良いと言われますが、むしろ夏こそストレッチがお勧めです。
実は肩こりやぎっくり腰は夏場に多いそうです。
暑いと部屋でじっとしてしまいがち。
エアコンや冷たい飲み物などで知らず知らずに体が冷えるのが原因です。
夏場になるとひどい肩こりに悩まされるという相澤智則さん。
相澤さんは「痛い時には首が動かない状態になり、ひどくなると肩から腕、手先にしびれを感じることもある」と言います。
原因はカーエアコンでした。
「暑くなると短時間では車の中が涼しくならないので、温度設定もかなり低くする」と言う相澤さん。
通勤や仕事で毎日4、5時間は車の中です。
同じ姿勢で冷気に当たり続けていることが原因ではないかと、接骨院で指摘されました。
冷えを自覚しないまま肩こり・腰痛に悩んでいる患者が整形外科にも多く訪れています。
平沼尚和院長は「夏場に肩がこった、首が痛いという人が結構多いんです。体を触らせてもらうと、お腹や背中が冷えていますね」。
エアコンなどの冷気に冷たい飲み物や食べ物。
筋肉は冷えて固まっていくんですが、夏はどうしても暑いという意識が頭にあるので、体が冷えていることに気づくのが遅れがち。
痛む状態にまで悪化しやすいのだそうです。
「できるだけ体を動きやすくして熱を作る、血流を良くする、筋肉がほぐれる状態を作ることが大事。1時間に1回でいいから、首をストレッチして血液を流してあげると症状が軽くなります。薬を使わないし、体に悪いことではないので、ぜひやってもらいたい」と平沼院長は話します。
では実際にどのようなストレッチが有効なのか。
相澤さんが通っている接骨院です。
ここでは、ストレッチを取り入れ、患者が自宅で実践できるよう指導しています。
院長の高橋秀樹さんから相澤さんが教わったのは、肩のまわりの筋肉のストレッチです。
まずは、首の前の方の筋肉。
首を傾けて、手であごを軽く押すようにして、伸ばします。
次に肩の筋肉、「僧帽筋」を伸ばします。
肩から腕を支えている筋肉で、いちばん疲れて硬くなりやすい部分なんです。
頭を横に傾け手を軽く添えます。
この状態から肩をゆっくり下に降ろすと、僧帽筋がゆっくり伸びるんです。
さらに、肩の骨=肩甲骨の周りの筋肉のストレッチ。
指先を肩に置いて、ひじを大きく回します。
これらのストレッチを、相澤さんは時間を見つけてはひとつにつき20秒ほど行っています。
相澤さんは「今までは解消法がわからなかったので、つらくなったらそのままだったが、ストレッチすることで筋肉がリラックスすることを教わったので楽になった」と話しています。
一方、腰が冷えて痛いという人はどうすればいいのか。
日本ストレッチング協会の指導員、鈴木和孝さんです。
最初に教わったのは、お尻の筋肉のストレッチ。
腰の痛みを和らげるのに、なぜお尻なのか。
それは腰と連動する筋肉をストレッチすると、腰にかかる負担が軽くなって痛みが改善するというわけです。
あぐらの姿勢から、片方のひざを両手で抱え込んで胸のほうに引きつけます。
ここが柔らかいと、前かがみになるときに、腰の負担を減らすことができます。
次に、やはり前かがみになるときに働く部分。
太ももの裏、ハムストリングという筋肉のストレッチです。
ひざを折り曲げ、もう片方の足はまっすぐ伸ばして、両手をそろえて足首に近づけていきます。
背中は丸めず、まっすぐの状態で傾け、心地よく伸びたところで静止させます。
左がストレッチする前。
右がした後です。
腰の周りの筋肉がほぐれたことで体の柔軟性が増しています。
ただ注意点もあります。
ストレッチは長くやるほど効果が出るわけではないそうです。
1か所あたり10秒から20秒程度にとどめ、無理なく行いましょう。
鈴木さんは「ぎっくり腰など炎症があるときにやると炎症を悪化させるので、その時はストレッチを行わずに医師の診断を受けることが大切です」とアドバイスします。
紹介したようなゆっくり行うストレッチは体をリラックスさせる効果があるので、風呂上がりとか寝る前に行うと良いそうです。ストレッチのポイント、もう一度説明しますと、まず大事なことは、伸ばす筋肉を意識しながら行うことです。例えば、ただグルグル肩を回すのではなくて、指先を肩に置いて、肩甲骨を意識してゆっくり回します。こうしたストレッチは反動を使わず無理なく行いましょう。
痛みを感じたらすぐに中止してくださいね。