福島県立医大:今春卒業生、県内勤務は3割余 過去最低

 福島県内唯一の医師養成機関である福島県立医大で、今春の医学部卒業生のうち県内に勤務したのは3割余の26人で過去最低だったことが分かった。東京電力福島第1原発事故が影響しているとみられる。原発周辺の自治体では現役医師の流出も問題となっており、避難区域再編で住民の帰還が進もうとする中、県は「医師不足で医療機関が機能しないと安心して戻れない」と頭を悩ませている。

 10年度までの5年間、県立医大を卒業した年約80人のうち約40人が県内に勤務した。しかし11年度の卒業生74人のうち県内の病院を臨床研修先としたのは26人にとどまり、42人は県外の研修を選んだ(6人は未定)。

 県立医大では事故前から医師不足に対応するため定員拡大を続けてきたが、原発事故による被ばく線量調査など県民の健康管理を担う医師が必要になるため、今春入学の学生募集では定員の15人増を申請。文部科学省は従来、医学部の増員は都道府県ごとに約10人までとしていたが、事故を考慮して特別に認め、大学設置基準上の医学部の上限である定員125人となった。

 県立医大の担当者は「本人が福島を志望しても家族が反対するケースがある。風評被害に悩む福島で医療を担う意義や、県内でもキャリアアップできることを訴えていくしかない」と、“引き留め策”を模索する。

 福島県によると、県内の医師数は1963人(4月1日現在)で震災前と比べ63人減少。原発のある双葉郡に周辺の相馬市、南相馬市を加えた相双地区だけで50人も減った。

 第1原発の北23キロにあり、震災で常勤医が12人から一時4人に減った南相馬市立総合病院は、大学派遣医や有志の短期赴任で医師数が震災前の水準に回復した。しかし金沢幸夫院長は「地元に根づいた医師が患者と密なコミュニケーションを取れる体制にはまだ遠い」と話している。【井崎憲】

2012年08月01日 11時00分

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