登校中の児童が巻き込まれる交通事故がこの春、全国で相次いだ。宮崎県内の小学生らの親からは、一部のドライバーの運転マナーの悪さに不安の声があがっている。県警は今年度、学校周辺などでの新たな交通規制の導入を検討している。
県警が導入の準備を進めているのは、「ゾーン30」と呼ばれる最高速度30キロの区域規制だ。住宅街や学校周辺など、地区や「丁目」単位で区域を設定し、幹線道路などを除く区域内のすべての道路に速度30キロ規制を敷くというものだ。
ゾーン30は、警察庁が昨年秋から呼びかけ、全国で導入が進んでいる。県警によると、県内では今年度中に、宮崎、延岡、都城各市で規制区域を設ける予定だ。
県警交通規制課の首藤昌良理事官は「高齢者や子ども、自転車などが巻き込まれる事故を減らしたい」と狙いを話す。区域で規制すれば、道路ごとに規制するよりもドライバーに分かりやすく、抜け道として住宅街などに入りづらくするメリットがあるという。
このゾーン30は、京都府亀岡市などで児童が巻き込まれる事故が起きる前から、導入を検討していたという。当初は住宅街などの居住区域を主な対象として検討してきたが、首藤理事官は「当然、学校の周辺や通学路なども区域に設定することは考えられる。地域の方からの要望などを踏まえて、導入を進めていきたい」と話している。
「Be careful(気をつけて)!」
午前7時半、宮崎市阿波岐原町の水田に囲まれた交差点で、近くに住む英会話講師のジョン・カーリントンさん(46)が学校に向かう子どもたちに声をかけた。10人ほどの子どもが列になって歩くすぐ先には、カーリントンさんが「非常に危険」と指摘する交差点がある。カーリントンさんは3年前からほぼ毎朝、この場所で子どもたちの通学を見守る。
きっかけは、小学4年の長女(10)が1年生のときだった。長女や近所の子どもたちの列をくぐり抜けるように交差点を横切るバイクを目にした。バイクは一時停止の表示を無視していた。安全であるべき通学路を平然と通っていて「信じられなかった」。
昨年3月には、同じ交差点で車同士の衝突事故が発生。5月の京都府亀岡市で児童ら10人が死傷した交通事故もあり、「いつ事故が起きてもおかしくない」と心配している。
カーリントンさんは「子どもたちは私たちの宝もの。学校や保護者、警察など、チームワークで事故が起きないようにしていきたい」と話している。(坂本進)