原発の使用済み核燃料から取り出したプルトニウムを再利用する「核燃料サイクル」について、内閣府の原子力委員会は現状ではリサイクルは数回だけに限られる、という考えに改めることを決めた。これまで無限にリサイクルできるという前提でコスト試算や議論を行ってきたが、肝心の高速増殖炉の開発は止まったままで、現実的でないことを認めたかっこうだ。
原発で核燃料を燃やすうちに核燃料の中にプルトニウムができる。核燃料サイクルはこれを再処理して取り出し原発で燃やす路線。原子力委が決めている原子力政策の柱となっている。
16日にあった小委員会で、委員から「現在、無限リサイクルは技術的に成立しない」という意見が出た。これを受け、鈴木達治郎原子力委員長代理は、無限リサイクル想定から「多重回リサイクル」に変える、との考えを述べた。
高速増殖炉が実用化すれば、燃やした燃料以上のプルトニウムを作ってリサイクルを繰り返せるが、そうでない限り次第にプルトニウムは減る。福井県敦賀市にある高速増殖原型炉「もんじゅ」の試運転もトラブルなどで進んでいない。開発のめどが立っていない現状では、無限リサイクルの実現も難しい状況だ。
原子力委は原子力政策を見直し中で、使用済み核燃料をリサイクルせずにそのまま地下に処分する方式や、1回だけリサイクルする方式も検討している。(小堀龍之)
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