社説:学力テスト 調査のための調査では
毎日新聞 2012年08月10日 02時31分
全校調査は、自治体によっては地域間、学校間で正答率の順位競争をもたらしかねない。現に過去の全校調査では一部でそれが表れた。本来このテストは、事後の活用による授業改善が主眼のはずだ。だが、このテストの活用について、例えば中学ではこの4年、2〜3割が「ほとんどしていない」と答えている。
教室外でも職務負担が大きい教員に、新学習指導要領で教える内容を増やし、さらに学力テストを基に指導改善を求めても容易ではない。
学校現場が必要なのは改善のポイント、具体的な手法である。国語、算数・数学で「知識問題はできても、応用が苦手」といった結果を毎年のように解説するより、「じゃ、どうする」にもっと集中的に力点を置いた施策を促進すべきだろう。
1960年代に過熱し、とりやめになった当時の学力テストでも、毎年同傾向を見るだけなら、なぜ必要かとの批判があった。
文科省は9月、全国都道府県教育委員会の学力テスト担当者らを集め、テストの授業活用法を説くという。その際、現場側の意見や要望もぜひ集約してほしい。
これまでのテストは状況を「確認」こそすれ、新傾向を浮かび上がらせたとはいい難い。その意味でも、テストは実施するにしても間隔を空け、抽出方式で足りるだろう。
毎年要する巨費は、読解力や理科教育の拡充など、もっと具体的で手厚い施策に回してはどうか。