これは、よいレポート。記録しておきましょう。日本の未来が、「中国人」に握られているような気がしてきます。
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中国新聞趣聞〜チャイナ・ゴシップス 世界を買う中国人、各国で警戒感増す 中国人移民への対策、日本には2つの選択肢(日経ビジネスオンライン) - goo ニュース
2012年7月19日(木)09:00 福島 香織
先週はオーストラリア・シドニーに行く用事があった。オーストラリアもシドニーも初めて訪れる。セントラル駅近くに宿をとって、ダウンタウンに行くと、街を行く人は、チャイニーズあり、マレー系あり、ベトナム系あり、人種のるつぼといった様子だ。特に中国人が多い。
道を歩いていると、ふつうにマンダリンで声をかけられ、客引きされ、私も店員が中国人だとみると、ふつうに中国語で買い物をする。店の看板も中国語、メ ニューも中国語、朝ごはんは粥と油条(揚げパン)を食べ、中国語の新聞や雑誌を読む。中国の海賊版DVDや衣料品などが、中国より高い値段で売られてい る。シドニーに来た目的は、とある亡命学者のインタビューなので、仕事も中国語で済まし、英語圏なのにほとんど苦手な英語を使わずに過ごした。
世界中どこの国にも中国人がおり、チャイナタウンができており、そして中国語のみで、中国式に暮らせる空間がある。中国人は移民によってネットワークを 拡大し、富を増やし守り、生き抜いてきた人々であり、中国経済の陰りや政治の不安定さが垣間見える昨今、中国人の移民ブームはますます盛り上がっている。 しかし、そんな中国人移民に対し、移民先の国々は警戒感を示し始めた。
高級マンションやワイナリー、農場を購入
オーストラリアに関していえば、人口2150万人のうち、中国人は60万〜70万人という。シドニーで普通語および広東語を使う家庭は17.2%で、す でにオーストラリアの第二言語となっている。昨年、オーストラリアに来た中国人移民は2万9547人で移民全体の17.5%を占め、初めて英国人を追い越 して中国人移民の数がトップとなった。
中国人移民の最近の傾向は、いわゆる就労目的だけでなく、投資移民の急増だ。カナダやオーストラリアの投資民申請の7割は中国人という。2010〜11 年度、外国人が購入したオーストラリアの不動産は415億豪ドルで前年度の倍となったが、うち中国人投資家が購入したのは40.9億豪ドルで、英国人投資 家の46.1億豪ドルに次いで2位という。
シドニーのとある高級住宅地を車で通ったとき、案内してくれた地元華人が「このあたりで、曽慶紅(元副国家主席)の親族が住宅を購入したという噂だ。こ のあたりは最低でも2000万豪ドル以上するよ」と耳打ちした。本当かどうかは知らないが、そういう噂が立つほど、中国高級官僚の親族がシドニーの高級不 動産をよく買っているそうだ。
ノースショアの不動産仲介業によれば、200万豪ドルを超える高級物件の購入者はほとんどが中国人。だいたいが、留学生の親が子供のために、といって買 うのだが、以前なら、子供が留学期間に暮らすためだけであれば30万豪ドル程度の物件が一般的だった。高級物件を購入するのは明らかに、資産移動が目的だ ろう。比較的最近に竣工したジョージ・ストリートのインマーク・タワーの物件の購入者は90%が中国人とか。都市部の住宅、テナントだけでなく、ワイナ リーや農場購入も最近のトレンドとか。
ちなみに、この中国人の不動産購入の熱に対し、当然ながら「オーストラリアが中国人に買いあさられている!」と批判する声も起きたので、豪政府は一時居住者の名義で買われた住宅は、その一時居住者がオーストラリアを離れるとき必ず売らなければならないという新政策を去年から実施した。だが、中国人の富裕層はもともと、いざというときオーストラリアに拠点を作る目的で子供を留学させ、そのままオーストラリア永住させるつもりだから、そんな新政策では不動産購入熱は一向に影響を受けないそうだ。
日米でも不動産の買い手として存在感
これは米国も同じだ。全米不動産代理店協会(NAR)の報告では今年3月までに12カ月で中国人と香港人による米不動産購入額は90.75億ドルで、すでに米不動産購入の二大外国人購入者になっている。これは前年度に比べると23%増、前々年度に比べると88%増。ニューヨークに中国人が不動産購入ツアーを組んで大挙してやってくるのも、もはやニュースにもならないくらい珍しくなくなった。人気の物件は100万ドルのマンションから、2000万ドルのペントハウスまで幅広く、昨年は数億ドルの物件を購入する中国人富裕層も複数あったと、米大手不動産コーコラン集団が中国メディアに答えている。
日本もすでに繰り返し報道されているが、中国資本の移転先として意外に人気がある。2010年末には、日本企業の買収件数は中国資本が米国をこえて第1位に躍り出ていた。中国人の日本資産購入で特徴的なのは、マンションや住宅、オフィスだけでなく森林、原野などの土地そのものがターゲットとなっている点だ。ご存じのように、中国では土地の個人所有や売買が許されていない。不動産代わりに売買されているのは期限の決まった土地使用権だ。永遠なる自分の土地が持て、その権利がしっかり保護される。しかも飛行機で数時間の場所にあり、欧米やオーストラリアに不動産を持つよりも、管理・活用しやすいという。
日本は、積極的な移民政策をとっているわけではないが、日本在住外国人は確実に増えている。日本に定住する外国人213万4000人のうち、中国・台湾人は68万7000人(2010年末)と一番多く、東京都民の80人に1人が中国・台湾人という状況だ。
一部で報道されているように、中国人による土地・不動産購入について「中国人に日本が買い占められる!」「国が乗っ取られる!」という危機感を表す日本人もかなりいる。そこで、日本人は排他的なのがいけない、と批判する声も日本人内でよく聞くのだが、こういった拒否感や警戒感は、日本だけでなく中国人が移民しせっせと資本移転を仕掛けている国全般に共通しておきている。
華僑向け通信・中国新聞が7月12日に、2012年の各国の移民政策の転換についてまとめた記事があったが、それをみると、米国、カナダ、オーストラリア、英国、フランスなどで中国人移民の増加を食い止めるべく政策転換がはかられている。
各国は中国人移民の抑制策を実施
カナダは7月1日から技術移民、投資移民の申請受理を暫定的に停止。米国は、親に連れてこられた未成年の不法移民青少年の強制送還を条件付きでやめるなど、一見移民政策を柔軟化させたように見えるが、EB-5(50万ドルの投資でグリーンカード取得できる)による投資移民制度の審査の厳格化や審査時間を長引かせて、殺到する中国人の流入に歯止めをかけようとしているらしい。ちなみに、この制度は2012年10月に終了する予定だ。英国は投資移民の条件は下げたものの、移民申請全般の条件厳格化を打ち出した。英語が話せ、日常生活を維持できる経済力は必須。英国の最低生活保障(生活保護)を期待して華人系英国人の家族・親族が大陸から移民してくるケースが社会問題となってきたからだ。ちなみに英国では、日本と同じように中国人の偽装結婚による居留資格取得が横行しているらしく、その取り締まり強化にも力をいれているそうだ。フランスはサルコジ政権時代、「無証移民」を年間3万人以上受け入れていたが今後は、こういったなし崩し的な移民は認めない方向であることを6月27日に打ち出した。投資移民が比較的簡単だったシンガポールも、最低投資額150万シンガポールドルから250万シンガポールドルに引き上げたとか。
日本はむしろこの流れに反して、60年続いた外国人登録証制度を廃止して、在留カード制度に転換した。ビザは最長5年に延長され、在留資格をとった外国人は1年未満の出国なら、面倒な再入国手続きから解放される。中国人観光客へのビザも大幅に緩和され続けているし、こういう一連の方向性を見ると、少なくとも民主党政権は、将来的には積極的な移民政策に転じたいのだろう。
こういう各国の情勢と、中国の情勢をみて、日本も確かに、将来の移民政策について真面目に考えるときが来たように思う。私個人の予測を言えば、日本に外国人、特に中国人が今後、市民として増えていくことは避けられない。資本とモノがこれほど激しく世界を循環すれば人が動くのも当然だろうし、その中で日本だけが移民の洗礼を受けずにおれるものではない、と思っている。
移民の最大勢力は人口規模からいっても地理的条件からいっても中国人だ。カナダやオーストラリアや英国で起きているような状況が、一拍おいて日本でも起きるだろう。ちなみに、シドニーに暮らす中国人に、日本で最近おきた在日中国人の運転免許試験のカンニング事件の話をしたら「同じことが、シドニーでも一時すごい問題になったよ。シドニーで交通違反するのはだいたい中国系さ。日本もそうなるよ」と予言された。そうかもしれないと思う。
日本人の選択は2つある。1つは、できるだけ中国人移民が流入しないように審査のハードルを上げる。それもいいだろう。先行の移民国家をみると、そういう方向に転換している国は多くある。だが、それよりも移民の増加を想定して、オーストラリアや英国が直面している問題を参考にしつつ国内の法律、制度を整備してゆく方が現実的ではないか。日本は一拍遅れている分、ポジティブな面もネガティブな面も他の移民国家を参考にできるのだし。
中国人移民を運命共同体の一員にできるか
日本人が中国人移民を恐れる最大の理由のひとつは「国家動員法」、つまり中国が非常事態に陥った際、国内外を問わず中国人および中国人の持つ財産を国家が動員できる法律を中国が制定していることもある。尖閣諸島問題などが将来先鋭化したとき、日本国内の中国人が一斉に蜂起したら、という想像が頭をよぎるかもしれない。だが、同時に中国人が今、なぜ必死に中国を脱出しようと画策しているかも考えてみるといい。
今年春、中国の全国人民代表(国会議員に相当)の過半数(一説によれば54.7%)が、中国の法律では認められていない二重国籍者であるという問題が内部で指摘されて、議論が沸騰した。議論の焦点は法律が守られていない、ということより、むしろ二重国籍を法律で認めないのはおかしいのではないか、という点だった。なぜなら、もし、二重国籍を認めないでいたら、人民代表たちは、中国籍の方を放棄するに決まっているから、という笑話とも本気ともつかない理由を言う人がいた。中国人の移民の目的は子供の教育(58%)、財産保護(43%)、老後に備えて(32%)の順になっている(招商銀行2011年リポート)が、ようするに国会議員に相当するような人たちも、中国の将来に不安なのだ。
中国人は、中華意識は大変強いが国家意識は希薄である、といわれている。中華意識が強いので、どこの国にいっても中国人は中国人らしくしか振る舞えないし、移民先国家の一員たる意識も低い。しかし、同時にメリットもないのに忠誠を尽くせるほど中国に愛着を持っていない。国家動員法がどれほどの影響力があるかは、移民中国人にとって日本に味方する方がメリットがあるか、中国に協力する方が得か、その一点にかかっていると思う。むしろ国家動員法など不穏な法律を制定するような国だからこそ逃げたくなるのだ。
そう考えると、大切なのは移民をいかに日本国という運命共同体の一員にできるか、そういう制度や法体系の整備と日本人の意識の方が重要だ。移民増加を防ごうと政策を練ったところで、中国でいったん社会不安が起きようものなら、法の網目をかいくぐっても彼らは来るだろう。これは私の所感だが、前回のコラムでも指摘したように中国人には日本人と性格的に「合わない」部分もたくさんあるのだが、実にタフで、チャンスとリスクに対する嗅覚の鋭い人たちである。うまく味方に取り込めれば、長らく経済も社会の活力も停滞ぎみの日本にいい意味での刺激になることも間違いないと思うが、どうだろう。
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福島氏とは違って、中国人を取り込むことは不可能と考えている人間としては、民主党の愚かな移民政策にはとても賛成できません。
しかし、中国人の投資力が大きな影響を与えることは間違いないことで、そこから目をそらすことも現実的ではないでしょう。「中国」問題もさりながら、「中国人」問題こそが、喫緊の国内問題なのかもしれません。