第53回原子爆弾後障害研究会。(6月3日)
原子爆弾後障害研究会が6月3日(日)午前9時から、長崎原爆資料館のホールと学習室で開催され、これを傍聴した。第53回が物語る様に長い間に亘り、原子爆弾がもたらした後年に及ぼす障害について、医師の立場から科学的、専門的に研究された成果を、公に発表される機会に、今回は30名から講演が行われ、質問が交わされた。その間には、特別講演として、「幹細胞の動態からみた放射線発がんリスク」について、丹羽太貫 京都大学名誉教授が講演された。 会の最後に開かれたシンポジウムでは、「放射線災害と健康管理」についてを課題とし、「原爆被爆者の放射線による健康後影響」と「チェルノブイリ原発事故後における住民検診とその課題」が発表され、特に「福島原発事故と県民健康管理調査事業」について、山下俊一福島県立医科大学副学長(長崎大学大学院医歯薬学総合研究科原爆後障害医療研究施設放射線災害医療学教授)から、福島の現状について、詳細な説明があった。福島県民205万人の全員調査、とりわけ18歳未満の36万人と姙産婦16500人の調査については、約100人の体制で積極的に実施してい
るが、基本調査の回収率は未だ22%にすぎない。姙産婦は6割が調査済みである。この調査は、直観的で非論理的な「情緒」と論理的で社会性を有する「科学」との調和が大切で、地域のコミュニティと保健、医療機関の機能確立が大切である。広島、長崎、チェルノブイリでの経験の蓄積を、福島に活かし復興させなければならない。と固い決意が示された。しかし、放射線被害における凡そ5ヶ年間の潜伏期間に関する質問には、その懸念について安心の断定は不可能であることが示唆された。閉会の挨拶では、「この研究会は、原子爆弾のみならず、核がもたらす放射線の後障害全般におよばなければならない。来年の広島に成果を持ち寄ろう」との主旨で締められたのが印象的であった。長崎市議会議員 井原東洋一




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