欧州危機は、「4つの同盟」完成まで収束せずユーロ安は続き、日本株も上がらない!
ダイヤモンド・ザイ 8月3日(金)20時31分配信
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TOPIXの月足チャート(10年)。緑が6カ月、赤が12カ月、青が36カ月の移動平均線(出所:株マップ) |
● スペイン発の恐慌は大幅に後退したがECBに過度の期待は禁物
スペインとイタリアの国債利回り上昇がユーロの存続を脅かす中で、ドラギECB総裁が7月26日、ユーロを守るために必要なあらゆる措置を取ると表明しました。
また、翌27日は、メルケル独首相とオランド仏大統領が電話協議し、「ユーロ圏を守るためにすべてのことをする」との声明を出しました。
欧州発の金融危機発生がカウントダウン状態になり、ようやく、ECB(欧州中央銀行)や、独仏首脳の動きが活発になりました。
売り方からすれば、ドラギの余計な一言で、スペイン発の金融恐慌発生期待が大幅に後退したのです。「ドラギの野郎ふざけやがって・・・」という感じでしょう(笑)
一方その一言を受け、買い方は、ギリシャ、ポルトガル、アイルランドが救済に追い込まれた水準に達しているスペインの国債利回りを、ECBが市場介入して押し下げるとの期待を高めています。
さらに買い方は、8月2日のECB理事会では、この他、利下げ、長期リファイナンシング・オペレーション(LTRO)の再開などの追加金融緩和のオプションの実行を期待しています。
ただし、ECBに過度の期待は抱くべきではありません。あなたが、株式投資で成り上がりたいのなら、今の欧州問題の本質を捉えておく必要があります。
● 4つの同盟が成立した時点で欧州危機はようやく終わる
結論として、欧州では今後も危機をマッチポンプ的に発生させ、最終的に「財政同盟」、「銀行同盟」、「経済同盟」、「政治同盟」の4つの同盟を成立させることに利用する可能性が高いのです。
つまり、欧州は危機を自らわざわざ発生させ、その危機をそれぞれ沈静化させる過程で、ユーロの制度的欠陥である「政治統合なき通貨統合」の是正を行おうとしているのです。
「銀行同盟」とは、域内の金融監督、預金保険制度、金融危機管理基金を一本化する仕組みです。つまり、ECBは欧州連合の中央銀行としての役割を担いたいのです。このため各国中央銀行が邪魔な存在なのです。
「財政同盟」は、政府の予算運営を一体化することです。危機のたびに財政弱小国の自由度は奪われていくことでしょう。
「経済同盟」は、域内での経済政策の調整を一段と強めることです。
そして、「政治同盟」は、加盟国議会の連携と欧州議会の権限をともに強め、経済・財政の共通政策を決める民主的な正当性を確保することです。
これら4つの同盟が成立することが確実なった段階で、欧州統合(ヨーロッパ合衆国成立)のメドが立ち、ようやく、欧州債務危機は終息します。
● 欧州危機が続く限りユーロ安・円高が続き日本株は上昇しない
なお、その最終局面では、なぜギリシャ、スペイン、イタリアなどの南欧のラテン系キリギリス国家を、ドイツが救わないといけないのかということを、ドイツ国民に恐怖感と共に理解させるような、非常に怖い危機が到来し、それを克服する手段として先の4つの同盟を成立させて、総仕上げにするとみています。
繰り返しますが、4つの同盟が成立するメドが立つまでは、危機は繰り返し発生し、ユーロ安も続く見通しです。このユーロ安が続く限り、世界の投資家がリスクオンになることもないでしょう。
よって、ユーロ安・円高が継続し、売買代金の約7割のシェアを有する海外投資家の中長期的な買いが期待できない日本株の上値は、極めて限定的とみておく必要があります。
この悲観(諦め? )シナリオが崩れるとしたら、日銀がFRB(米連邦準備制度理事会)やECBを超える金融緩和を実行し、脱円高・デフレ政策を打ち出すことです。しかし、白川日銀総裁のコメントなどから判断すると、現時点ではその可能性はメチャクチャ低いです。
株式を長く持っていれば報われるという古きよき時代は終わりました。それは、6月4日のTOPIXが2009年3月に付けたバブル後の安値を更新し、1983年12月13日以来、約28年半ぶりの低水準となったことでも、明らかでしょう。
成り上がりたいのなら、現在の相場局面を中期的に見極めた上で、自分がどのような戦略で相場に臨むのかを真剣に考えるべきです。
現在のように、全体相場が中期的な調整局面で、上値が限定的なら、基本は、(1)上がったら空売り、(2)買いは安いときだけにして、かつ、長く持つな、(3)値幅は期待せず、小刻みな利食いを心がけよ、ということになります。
藤井 英敏
最終更新:8月3日(金)20時31分
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