日本サッカー協会会長・岡野俊一郎氏が語る
 (土木学会新潟会記念講演より)

 ◆芝生は楽しむためのもの

 「サッカーは世界204カ国がFIFA(国際サッカー連盟)に加盟している。IOC(国際オリンピック委員会)の198カ国を上回る。

なぜサッカーが盛んか、理由は簡単だ。野球のように道具が不要であり、お金がかからないから。戦前から野球が盛んだった日本は、豊かな国だったのかもしれない。しかし、野球人口が1500人以上いる国は、世界で20カ国しかない」

 「スポーツ施設面では、日本が一番遅れていた。

競技場はあっても、スポーツを楽しめる芝生のグラウンドが少ない。

英国では、人々が楽しむために芝生をつくった。日本の発想は違う。観賞用かゴルフ場かというところだ。

楽しむためにつくったのが芝生の公園だ。

子供の遊べる広場が都会にはほとんどない。経済至上主義で子供への配慮がなかった。英国では、都市の中心に芝生の広場をつくり、そこで人々が思い思いにスポーツなどを楽しむ。周辺に住宅を配置する。地域コミュニティの求心力になる。芝生の周りを囲って入れないようにしている国は日本だけだ」

 ◆まちの中心にスタジアム

 「フランスのある農村では村一番の繁華街にスタジアムをつくり、周辺に下が商店街で上を住居にする建築を配置する都市計画をした。

日本では必ず反対が出ることだ。スポーツが出来れば良しーとする道場感覚ではだめだ。スポーツは生活に身近なものだ。まず、明るい雰囲気で、ビッグスワンのように美しく、周辺と調和し、明るい雰囲気の施設が必要だ」

 「クアラルンプールのメルデカスタジアム。メルデカとは独立と言うこと。最上階の裏側にチャイニーズレストランがある。ハンガリーのネチャップスタジアム。競技場の中心にホテルやレストランがある。スポーツマンが安く食事できる。日本のスタジアムでも楽しめる付属施設を考える必要がある。もちろん屋根が必要だ。主人公の競技者のための更衣室やシャワー室などの設備も必要だ。報道関係者への配慮も当然必要となる。これらにより、初めて劇場となる。トータルな配慮がこれまでのスタジアムには欠けていた」

 「W杯がもうすぐ始まる。W杯のおかげで、改築も含め10の素晴らしい劇場型のスタジアムが日本に出来た。本当に喜ばしいことだ。いままでのコンセプトとは違う近代的なスタジアムだ」「W杯開催後に、スタジアムやキャンプ地を含め、スポーツの振興や地域の活性化にどう活用していけるかが、W杯成功の大きなカギだろう」

 ◆子供たちのために

 「臨時中教審の委員を長く務めいろいろ勉強させてもらった。子供の成長にまず必要なのは反射神経だ。技術や体力を鍛えるのはあとでいい。経済優先の文明の進歩は人間の寿命を縮めてしまう。子供たちが集まりスポーツをして汗を流せる芝生の広場を全国につくろうというのが、Jリーグの100年構想でもある。スポーツにより健康な体と心をつくることが、30兆円を超える医療費の削減につながるという長期的な展望に立ち、スポーツの振興を考えてほしい」

 「最近ひとつうれしいことがあった。省庁再編で文部科学省が出来、体育局が青少年スポーツ局になったことだ。自治体では依然としてそのままの名称だが。体育はスポーツの一部であり、教育的な要素を抽出してつくったものだ。日本ではほとんど議論されずにきたが。スポーツは、芸術と同じく、人間の持つ素晴らしい文化だ」「だから、世界最大のスポーツイベントのW杯は、言葉は分からずとも開催できる。こころが通じ合う。草の根の相互理解と友情が生まれ、それが大きな力となる。W杯は国際交流の大きな窓だ」

 ◆感動を与える試合を

 「W杯には世界から多数の外国人が来る。どうか、気軽に言葉をかけてほしい。フーリガンについては、あまり心配していない。英国のスコットランドヤードから専門の対策官が3人くる。英国では、1000人くらいの首謀者をリストアップして、旅券を発給しないという。テロ対策にも万全を期す」

 「すでに、サウジアラビアでは、東京の著名なホテルの1フロアーを借り上げたという。英国からは、おそらく皇太子のウイリアム王子になると思うが、来日する。フランスの大統領も当然くる。自国のユニフォームを着て応援する。まさに、世界のトップクラスの人から、寝袋をかずいて観戦にくる一般の人まで、本当にW杯を楽しみにくる」

 「スポーツ新聞が言うほど、日本チームが1次予選を勝ち抜くのは容易ではない。いずれもFIFAランキングが上位の国だ。トルシエはうまくいった。オープンなグループに入ったという。どのチームが決勝トーナメントに出てもおかしくないと言うことだ。私としては、それ以上に、力を出し尽くし、素晴らしい感動の伝わる試合をしてほしいと願っている」

 

『野球はローカルなスポーツ』

...と言えば「なにぃ!馬鹿なことを言うな!」と思われる方も多いと思う。

現在日本政府が承認している国は世界193ヶ国。

しかしFIFA(国際サッカー連盟)の登録国数は208協会。

(注:主権を持った独立国だけでなく、地域(たとえば中国の特別行政区である香港や、グレートブリテンおよび北アイルランド連合王国を構成するイングランド、北アイルランド、スコットランド、ウェールズはそれぞれ別々にFIFAに加盟している)

208教会が加盟するサッカーが、競技人口2億4000万人と言われており、世界で25人に1人がサッカーをやっていることになる。正確にカウントする手段がないので、サッカーが『世界でもっとも競技人口が多い説』が有力なのである。

その次はインドに競技人口が偏るクリケットと言われている。


ところで今年2009年3月23日に激戦を制し二連覇を果たし、日本国中を興奮に巻き込んだWBCだが、実際にこの大会の背景をしっかり理解している者は少ない。

おそらく『サッカーのワールドカップが野球のWBCだ!』と殆どの方が思われているのではないだろうか。


その大会に日本が勝った!

日本の野球は世界一だ!


そんな盛り上がりに水を差すつもりは毛ほどもないが、キチンと背景を理解しておくことの方が賢明だと思うので、今回はそこを説明しようと思う。

まず現在、世界でまともなプロ野球組織を持つ国は米国、日本、韓国、台湾程度しかない。

ドミニカやキューバはMLB(メジャーリーグベースボール=アメリカプロ野球)へ多くの選手を送り込んでいるが、自国にプロ野球組織はない。



比較的野球人気のある中南米でもノンプロの形式を脱していない(野球の他に職業を持っている)

だから世界のプロ野球選手と言っても前記の四ヶ国だけが真のプロと言えるチームであり、他の強豪と呼ばれる国々はMLBの選手を国別に分け集めて出場させているだけと言っても良い。

そしてそもそも、MLBの選手ユニオンが資金集めのために「世界規模のベースボール大会」を構想して、形になったのがWBCなのである。野球の素晴らしさを世界に云々などの発想ではないのだ。

だからMLB側はそのために盛り上げる事に労を厭わないし、米国チームとして一線級の選手を可能な限りは揃えてくる。

しかし実際は米国側の台所事情も苦しく、前大会後、MLBシーズン開幕後にWBC出場の投手を中心とした選手のコンディションがあがらず、選手側から苦情が寄せられ、今回もその点をしっかり納得出来る選手のみを頼むようにして出場せざるを得なかったのである。

MLB選手にとってはあくまで自己の職場はMLBのグラウンドであり、WBCはオプションで、ある種の持ち回り興業の意味合いが強いので、余興的なWBC出場でケガなどは絶対にしたくないのだ。

日本では優勝を狙う中日ドラゴンズが
WBCに選出されながらも選手が辞退した事を記憶している人もいるのではないか。野村克也楽天監督もTVのインタビューで

「これ、言っていいのかわからんけど、そんなにオリンピックやWBCって重要かね」と語っていたが、そのあたりを冷静に見ている日本人もいる。

WBCスタートの経緯や背景説明は元プロ野球選手の江本 孟紀さんのレポートを読んで欲しい



そして実は世界にはれっきとしたIBAF(国際野球連盟:スイス)が存在しており、WBCも正式にIBAF組織下の大会である。そしてIBAF主催のメイン大会『IBAFワールドカップ』も存在していて、今年2009年はその開催年だが恐らくこれを知っている人はごくわずかだろう。

それはMLBが『野球の宗家はウチだ』とばかりにIBAFを認めておらず、日本もそれに追従するためにIBAFワールドカップへは両国ともアマチュア選手しか送り込まない。そのため事実上の『世界アマチュア野球選手権』に成り下がっている。

全世界規模の野球の扱いはオリンピックではわかりやすく。すでに次回のロンドンでは野球およびソフトボール競技はない。日本の盛り上がりに対していかに世界ではスタンダートな競技ではないと、窺い知れる事実と思う。

夢を壊すようだが、IOC(国際オリンピック委員会)的には、野球とソフトをふたたび公式種目にする可能性は極めて低いと聞く。

バスケットボールや、アメリカンフットボール、アイスホッケーも同様で北米がその発祥の地であり、北米追従が長い日本が無条件で米国文化の一部として導入し、それをあたかも『世界標準スポーツ』と錯覚しているためである。日本はいかにアメリカを通して世界を見てきたかをここでも気付く。



二回まで開催されたWBCを、興行的に成功させるためにはドミニカやキューバ、米国が決勝まで進むのではなく、韓国や日本が残らなくてはならない。

それは、会場への来場者(チケット購入)旅行代理店、グッズ販売等の重要な収益はほとんど日本人と韓国人が出しているようなものなので、その意味では今回の興業は大成功。MLB選手もコンディションを損ねないうちに引き上げられて好都合であったと聞く。

観客席が埋まるカードはかならず日本か韓国が絡んでいた。


その他の試合は極端に観客が少ない。

その意味では「もう出ないぞこのやろう!」とWBC主催者側を日本が脅かせば、とかく問題にされる開催時期に関しても(プロ野球開幕直前に開催されている)米国側は100%のむはずなのである。

ではその開催地アメリカではどうだったか?

実はWBC開催の時期は米国大学バスケットボールファイナルのシーズンで、TVなどでも皆そちらへ向いてしまっていた。WBCはその結果さえ誰も知らないし、TVを見ている人は在米の韓国、日本人ばかりである。もし、アメリカ在住の知人がいるなら確認してみると愕然とすると思う。


話は変わって現在私の住む近所の不良外人(フランス人、スコットランド人、ペルー人)と話をすると野球はケチョンケチョンに言われる。

ただし彼らの論には理に適っている部分もある。例えば

・サッカーならボールかボールの代わりになるものさえあれば独りでも遊べる
・陸上競技もその意味で上記に準ずる

・野球は小さな球と棒が必要で人数と場所も必要!近所ですぐに出来るものじゃない。(場所はあっても欧州では20人も子供が集まる機会がある町は限られる)

たしかにどこでも手軽に始められるという点ではサッカーにはとうてい勝てない。

日本でも子供達が自然に、というより必ず父親がキャッチボールをするためにグローブやボールを一家に備えていたはずだ。啓蒙者が周囲に居ての野球だ。

米国統治を経験している日本と韓国、そしてその日本の統治を経験している台湾のみにプロ野球組織があってWBCを盛り上げていることは歴史上のごく自然な成り立ちとも思う。

北京、WBCの野球やソフトが世界規模としてはメジャーではないにもかかわらず、日本でこれほど国として威信を賭けることに、自分は現在まで、敗戦国としての劣等感が引き続いているような印象さえ受けている。

その証拠に、決勝の対戦国がオランダや、台湾だったらこれほど盛り上がったろうか。

宗家米国を倒し、歴史的な経緯と、勝ち進む中での因縁(何度も戦うおかしな仕組みと思ってますが)強い韓国と戦ったからこその感があります。

私としてはWBCだ、世界云々の相対価値よりも米国の『ベースボール』とは別に独自な形で育まれ、日本人のスポーツマインドの基礎をなし、今や歴史ある大きな文化と思える日本の野球を、プロ野球そのものを絶対的に愛し注目して行くことで充分のように思える。

WBCでの興奮をきっかけにファンをプロ野球に誘導したいNPB(日本野球機構)の思惑と米国のそれではまるで反対である事をご理解戴きたいと思う。

http://yaplog.jp/ryoyo18/archive/380