準決は快勝。31歳で初の夢舞台に立った小原(右)が底力をみせつけ、一気に金メダルを獲得した (撮影・山田俊介)【拡大】
遠回りしたぶん、味わいを実感できる。31歳で初の夢舞台に立った小原が底力をみせつけ、一気に表彰台の真ん中に駆け上がった。躍動する歓喜のポーズが輝きを放つ。
「優勝することが目標」と言い切り、頂点に照準を合わせて今大会のマットに立った。初戦からの2試合はタックルやアンクルホールド2回転の大技で制した。前回覇者ハインとの準決勝。第1ピリオドはタックルで押し出し、第2ピリオドではいなしてバックを取って2-0で勝利した。
これまでは大技がなく、状況に応じて1ポイントをコツコツ重ねるレスリングだった。だが、それだけでは頂点への道は険しいと感じ、今年からタックルへの入り方に磨きをかけてきた。
世界選手権で頂点に8度も立ちながら、五輪には縁がなかった。小原には、ロンドン行きの切符を手にするまで2度もマットを離れた過去がある。
旧姓は坂本。かつては51キロ級で戦っていた。中京女大(現至学館大)に進学したころから頭角を現し、1999年の全日本選手権で初優勝すると、世界選手権では初出場の2000年から同級で計6度優勝。だが、04年のアテネ五輪で女子が正式種目に採用されると、同級は実施階級にならなかった。
アテネ五輪前、苦渋の決断を迫られる。妹・真喜子さん(26)のいる48キロ級に階級を下げるか、女王吉田沙保里(29)=ALSOK=が君臨する55キロ級に挑むのか-。結局、吉田に挑んだが、完敗して引退。再びマットに戻ったものの、北京五輪の際も無敵ロードを突っ走る吉田にはね返されて2度目の引退を決め、全日本のコーチに就いた。
だが、「悲運の女王」は終わらない。五輪出場を果たせず引退した真喜子さんに五輪の夢を託され、48キロ級で現役復帰したのは10年。「どんなときも(妹と)一緒に戦っている」。新たな階級で10、11年の世界選手権を連覇した。
一昨年10月に結婚した康司さん(30)がもっとも身近な場所から後押しした。青森・八戸工大一高のレスリング部で1年後輩。6月下旬の新潟・十日町市での女子代表合宿にも康司さんの姿があった。毎日スパーリングをビデオで撮影し、姿勢や構えで修正点があればアドバイスする。その日にできなかったことを一緒に話し合う。小原は「それができると不安はなくなる。夫がいて心強い」。
金メダルは姉妹の、そして夫との悲願だった。集大成として位置づけた今大会。2度もあきらめた夢舞台のマットを、精いっぱい満喫した。
(紙面から)