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【サッカー】

<目撃者>追いつくための意思統一足りず

2012年8月9日 紙面から

 「あぁ、このまま負けるんだ」。聖地と呼ばれるウェンブリー競技場の記者席で、不思議とそう思っていた。

 後半20分、ペラルタに完璧な逆転ミドルを浴びた。追いつかれ、追い越された。ズシリと重く、痛い1点。でも、残り時間はまだ25分ある。ロスタイムを含めれば30分近くはあるはずなのに…。一度浮かんだ感覚は消えなかった。

 失点の直後。吉田がボールを左手に抱えてセンタースポットへ向かう間、しきりに選手たちを鼓舞していた。厳しい表情で右手を大きく振り、「行くぞ、行くぞ」。だが、反応する選手、呼応する選手、ファイティングポーズをとる選手は1人もいなかった。

 前半31分、同点弾を浴びたときはまだ良かった。5戦目の大会初失点にも「崩されたわけじゃない。リードされたわけじゃない」(権田)。ただ、2失点目はちょっと違った。

 「1点目はそこまでへこまなかったけど、2点目はあの時間帯だったので…。失点のショックはあったかもしれないが、その中でもやらないといけなかった」(永井)

 落胆する気持ちは十分、分かる。失点するのも仕方がない。だけど、このときばかりは、心まで打ち砕かれてしまったように映った。

 関塚監督はビハインドを負ってから後半26分、32分、38分と次々交代カードを切り、前線の枚数を増やした。杉本、宇佐美、斎藤を入れ、「サイドを広げながら(杉本を)使っていこう」と反攻に打って出た。その指示、狙いは明確だった一方で、ピッチ上の思惑とは微妙にずれていた。

 「初めてリードされて、どこまでバランスを崩して攻めるのか意思統一が足りなかった」とは徳永の説明。つなぐのか、放り込むのか。「判断にブレがあった」と大津。すべてが中途半端のまま、無情のタイムアップの笛は鳴った。

 中2日の激戦、しかも全員の体、足をフル稼働させる全力スタイルだ。移動や緊張、初体験の重圧も加わり、「体が動かなくて、いつもとは違う雰囲気だった」(東)。心身両面で限界ギリギリ…。一度落ちたメンタルは引き戻せず、歯車は狂ったまま。五輪ファイナルへの、高く険しい壁までは突き破れなかった。 (松岡祐司)

 

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