原発事故直後の対応を収録した東京電力のテレビ会議の映像が6日公開されました。このなかで、報道関係者に限って公開された映像には、当初3キロに設定された避難区域について「何もやらないよりはいいか」などと発言する東電幹部の映像が残されていました。
「だから、ちょっと待ってくださいじゃ分からねぇんだよ、だから。だから脇に置いておけってさ、状況を確認するやつをさあ」(福島第一原発 吉田所長)
6日公開されたテレビ会議の映像。東電側が編集・加工したうえで報道機関に配った90分間のほかに、東京電力の社内でのみ閲覧できる形で合わせて150時間分の映像が公開されました。そこには、福島と東京、双方で混乱を極める様子が克明に記録されていました。
「“イラ菅”という言葉があるが、とにかくよく怒るんだ」(東京電力 武黒一郎フェロー)
去年3月13日。総理官邸に連絡役として詰めていた東京電力の武黒一郎フェローが本店に戻った際の発言です。武黒氏は、避難区域の設定をめぐる、当時の菅総理とのやりとりをこう説明しました。
「(菅前首相に)私と班目さんで説明すると、『それで何かあっても大丈夫だと言えるのか』とさんざんギャアギャア言うわけですよ。何もやらないよりはいいかってことで、(避難区域が)3キロの範囲になった」(武黒フェロー)
「(原発から)3キロ以内の皆さんに避難の指示」(枝野幸男 官房長官<当時>)
事故発生当日の深夜、急きょ発表された3キロ圏内の住民避難。これを政府と東電が場当たり的に決めたとも聞こえる発言です。さらに、武黒フェローは、1号機の水素爆発を知ったいきさつについて・・・
「3時半に爆発があったが、5時半に菅さんの執務室のテレビで見て、ギャってビックリしちゃって」(武黒フェロー)
1号機の水素爆発については、そのおよそ6分後に第一原発の対策本部の映像に作業員が総立ちで頭上のテレビを見つめる姿が映っていました。現場の作業員も東電の幹部も、何が起きたのか、テレビ報道で初めて確認した状況がうかがえます。
さらに、事故直後に実施された「計画停電」をめぐっても官邸と東電幹部の間で激しいやりとりがあったことが明らかになりました。
「計画停電を実施いたします。人工呼吸器をお使いの方々をはじめ、この停電の実施にあたって支障の生じる患者さんも少なからずおられます」(枝野幸男 官房長官<当時>)
計画停電の実施にあたりこう述べた当時の枝野官房長官。この3時間ほど前のテレビ会議で東電の藤本副社長(当時)はその枝野長官から言われた内容を不機嫌そうに報告しました。
「(枝野長官は)『人工呼吸器などを家庭で使っている人を殺すことになる。それを承知でやるなら、俺は殺人罪をお前に対して問う』と」(藤本副社長)
事故の貴重な記録となる映像。完全な公開を求める声がさらに高まっています。(07日15:03)