ここでは、最も重要な12法律を わかりやすく解説しましょう。 |
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1.農地法 |
田舎不動産とは密接な関係にある法律。第2〜5条はぜひ知っておいてほしい。
●第2条〔この法律で「農地」とは耕作の目的に共される土地をいい、「採草放牧地」と は農地以外の土地で、おもに耕作・養蓄の事業のための採草、または家畜の放牧の目 的に共されるものをいう〕:対象となる農地について定義している。地目が「田」「畑」 となっているのはもちろん農地だが、「採草放牧地」も付加されているのに注意。つま り、地目は田畑以外でも、採草や牧草に使っている土地は法が適用されるということ だ。また「耕作の目的に共される土地」とは、地目が田畑以外でも現状が農地なら対象 となることを意味する。ちなみに、農地物件にごく小さな菜園が地目「畑」で付いてい る場合があるが、これも農地法を免れない。
●第5条〔農地または採草放牧地について所有権の移転や地上権や貸借権などを設定 する場合、当事者が同じ市町村に住んでいる者は農業委員会、その市町村の区域以外 に住む者は都道府県知事の許可を得なければいけない〕:農地を農地のまま売買する 場合の制限を示したもの。新規就農者には関係の深い法律。農地の所有権を移転する には、売買主の双方が営農計画書、登記簿謄本などを添えて一般には地元の農業委員 会に許可の申請を行わなければならない。買主の取得後の耕作面積が合計50a(=5反 歩。北海道のみ2町歩。知事が面積を変更することも可能で、中国地方の一部では3反 歩)以上となること、農地から遠くない場所に住んで確実に農業を営んでいること(地 域によっては営む準備があること)、などを条件に許可を下ろす。新規就農者は後者 の基準が問題になりやすく、早くて1年、遅いと何年も待たされる。
●第4条〔農地を農地以外のものにする者は、都道府県知事の許可を得なければなら ない。またその面積が2haを超える場合は、農林水産大臣の許可を得なければならな い〕:地主本人が農地を農地以外のものに転用する場合の制限を設けている。すでに 所有した農地でも、転用については行政の許可が必要だ。たとえば、田んぼに木を植 えて山林にしたい場合、勝手に木を植えてから申請を出してはいけない。あくまで申 請が先だ。さらに植林が終わっても、「地目変更登記」の申請には最低2〜5年程度経過 することが必要。
●第5条〔農地や採草放牧地をそれ以外のものにするため、所有権の移転や地上権や 貸借権を設定する場合、当事者が都道府県知事の許可を得なければならない。また、 その面積が2haを超える場合は、農林水産大臣の許可を得なければならない〕:権利 の移動とともに、農地を農地以外のものにする場合に申請が求められる。つまり、住 宅地や駐車場にする目的で農地を買う場合などに適用される。転用許可基準にあるよ うに、どの農地でもそれが認められるわけではない。通常は住宅地で面積500u(約 150坪)までが認められ、完成後に住民票を移しての定住や工事完了報告書の提出を求 められる場合がある。また、許可に時間がかかる場合、土地代支払い時に期間を定め て「農地法の許可を条件とする仮登記」をするべき。許可が下りなければ契約を解除で きる方法で、3条申請でも有効だ。 |
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2.農振法 |
補助金を使って整備された農地や、これから農業を振興しようとする農地等が農用
地(農振)に指定され、農地以外への転用が認められないことを定めている。田畑以外 にも山林が指定されている場合もある。
田畑や山林を農振法の適用から外すには、市町村長宛てに農用地利用計画変更申出 書を提出する。ただし、集団性が高い農地の一部分、ほ場整備の完了公告が終わって 8年以内の田んぼなどはまず除外にならない。仮に許可となっても、宅地化にはさら に5条申請が必要となる。「頭痛に農振」といわれるゆえん。なお、農振地域は5年に1 度見直しが行われる。 |
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3.宅地建物取引業法 |
宅地とは建物がある敷地、将来家を建てる予定の土地も含まれる。それを不特定多
数に繰り返し売買・媒介などするには、宅地建物取引業の免許を必要とする(第2 条)。つまり、所有者が建築を前提に土地を区画して複数以上売るには免許が要る。 業者には宅地取引主任者の設置も義務づけられており(第15条)、宅地取引主任者は取 引の当事者に対し、契約成立前に書面を交付したうえ口頭で重要事項を説明しなけれ ばならない。重要事項とは登記された権利の内容、法令制限、飲用水・電気・ガス・ 排水の設備状況などを指す(第35条)。また、業者は営業保証金を供託所か宅建業保証 協会に預ける必要がある。業者の責任で損害が発生したら、売買主は供託金での弁済 を請求できる(第27条)。なお、不動産ブローカーには主任者がいない。 |
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4.宅地造成等規制法 |
●第1条〔宅地造成に伴いガケ崩れや土砂流出を発生する恐れがある著しい市街地、
または市街地になろうとする区域内において必要な規制を行う〕:市街化の予定がな い地域や規制区域以外では関係のない法律で、田舎物件での適用例は少ない。なお、 規制区域内で工事する場合のみ、事前に都道府県知事の許可が必要となる。 |
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5.国土利用計画法 |
土地について公共の福祉の優先と投機的取引の防止を主な目的とした法律。都市計画
区域内の市街化地域で2000u以上、都市計画区域内の調整区域および無指定地域で 5000u以上、都市計画区域外で1万u以上が対象となる(第23条)。またこれとは別 に、知事は地価上昇の恐れがある地域を監視区域に指定して、届け出の必要な面積も 定めている。 以上の基準に該当したら、契約を結ぶ6週間前までに土地売買等届け出書、各図 面、登記簿謄本などを自治体に届け出なければならない。それに対し行政は、不適当 と定められる取引に変更や中止の勧告ができるが(第27条)、公示価格の1〜2割増しま ではまず勧告されることはない。 |
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6.都市計画法 |
計画的な街づくりを目的とした法律で、知事が都市計画区域を指定し、さらに市街 化区域と市街化調整区域に分けられる。市街化区域には用途地域が指定され、一定の 建ぺい率、容積率の範囲内で建築できる。一方、市街化調整区域では原則として建築 できない。 |
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7.建築基準法 |
都市計画法と密接なかかわりがあり、都市計画区域内では基準法を遵守しなければ ならない。ところが、過疎の山村は都市計画から外れた地域が多く、具体的な適用は 次のようになる。建築に着手する前に建築物確認の申請を求められるが(第6条)、都 市計画区域外では木造が2階建てまでで述べ500u以内の建物、木造以外では平屋建て で延べ200u以内の建物なら、申請は不要(ただし特殊建築物の基準あり)。つまり、
普通の民家はまず適用外となり、建築の届け出さえ行えばいい。また、道路の定義 (第42条)は都市計画区域内に限定されている。金融機関が都市計画区域内と同様の基 準を求めることはあるが、法的にはきわめて自由度が大きい。田舎の特性を考えるう えで、逆説的に重要な法律である。 |
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8.自然公園法 |
日本の自然公園には環境庁が指定する国立公園および国定公園、都道府県が条例に よって指定する都道府県立自然公園がある。これらは自然環境に応じて特別地域と海 中公園地区、普通地域に区分けされる。さらに特別地域は特別保護地区、第1種特別 地域、第2種特別地域、第3種特別地域に分類される。特別保護地区と第1種特別保護 地域、海中公園地区では開発行為が認められず、第2・3種特別地域で一定規模以上の 開発や建築をするには許可するが、普通地域では届け出が必要。以上の制限を行うの は、国立公園内は環境庁長官、その他は都道府県知事となる。
リゾート地寄りの物件で適用される可能性がある法律で、建物の建ぺい率と容積 率、外観の制限が厳しくなる。 |
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9.河川法 |
川沿いに家を建てるには、川岸より一定の距離離して建てるよう行政から指導され る。
●第26条〔河川区域で工作物を新築する者は、河川管理者(1級が建築大臣または 知事、2級が知事)の許可が必要〕、河川でない水路の場合は、国有財産法の工事施工 了承や許可申請が必要となる。注意すべきポイントは、本流が1級河川なら支流を形 成する流れも1級になること。川幅では判断できない。護岸工事の有無や地方によっ ても制限の内容が違うので、最寄りの土木事務所か建設事務所等へ行けば、具体的に 法適用の河川範囲と制限内容がわかるはずだ。 |
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10.森林法 |
●第10条〔地域森林計画の対象となった民有林の伐採をするときには、都道府県知事
に森林の所在場所、伐採面積、伐採方法、伐採齢その他の事項を記入した届出書を提 出しなければならない〕:地域森林計画は農振と同様、かなり広範囲に指定されてお り、自分の山でも勝手に木を伐ることはできない。ただ、実際には1反歩以上の伐採 が対象となるようだ。ちなみに、根を掘る行為は伐採ではなく、開発に伴う形質変更 と見なされる。また、1haを超える規模の開発行為を行うときは知事の許可が必要(施 行令第2条)だ。山林分譲をする場合に関係してくる条文である。
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11.文化財保護法 |
指定地域では、試掘調査をしなければ開発行為ができない(第5条)。貴重な文化財 が発見されると、今度は本調査が必要になる。調査費用を負担するのは試掘が行政負 担、本調査は地主負担となってしまう。土地購入前に地元の教育委員会で指定の有無 を調べておくのが賢明だ。 |
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12.民法 |
民法はさまざまな生活関係を規律する、いわば暮らしの法律。土地や建物の権利を
規制するのに欠かせない。ここでは、物件と売買に関するこの2つの条例を押さえたい。
●第177条〔不動産の権利の得喪および変更は、登記しなければ第三者に対抗するこ とができない〕:不動産の権利を移動したとき登記の手続きをしなければ、相手以外
の第三者に自分の権利だと認めさせることはできない。先に登記さえすれば、二重売 買が起きても権利は保証される。
●第557条〔買主が売主に手付金を支払った場合、当事者の一方が契約の履行に着手 するまでは、次の方法で解除できる。買主が契約解除する場合は手付けを放棄し、売
主が契約解除する場合は手付けの倍額を返還すればいい〕:手付けは宅建業法第39条 の規定で、業者自ら売主になって不動産売買する際は代金の2割以上受け取れない。
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*「田舎暮らしの本」2000年1月号より引用 |