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◯◯を斬る! : 水道料金を斬る! Vol.03 - OCN TODAY

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◯◯を斬る!

水道料金を斬る!

暮らしの中で、水道料金を意識する場面というのがどれくらいあるだろうか!? 生活するのに必要なものだから、値段に関して無関心という人も多いのでは。ところが、調べてみると、なんと各市町村で最大10倍の格差が生じていた! さらに、日本の水道行政が抱える問題点も見えてきたのである! OCNジャーナルでは、ふだんあまり気にしない水道料金の不思議について調査してみた!

水道行政の混乱を斬る!

(次頁につづく)

1.水道設備の老朽化が、水道行政の混乱を招く!

水道管の破裂事故の様子。アスファルトに亀裂が入り、地面から水が染み出している。

現在、水道管の破裂事故は全国で1200件、下水道の陥落事故は年間で4700件も起こっているという。さらに、地震などの災害に備える耐震化の対応も遅れており、浄水場で16%、管路で15%しか行われていない。大震災の映像などで水道管が破裂し水を吹き上げているのをよく見るが、その背景にはこういった事情がある。つまり、現在日本の水道設備は老朽化しており、更新しなければならない時期にきているのである。日本の上下水道が本格的に整備されたのは1960年代。それから約50年以上が経ち、老朽化した箇所はその都度更新工事が行われているとはいえ、抜本的な解決には至っていない。というのも、水道料金というのが非常に値上げしづらいためである。考えてみてほしい。「老朽化したから更新するために値上げしました」と言われ納得できるだろうか? 日々、どこかの水道設備を工事している状況の中で、水道料金の値上げは非常に住民の理解を得づらいものなのだ。ちなみに、老朽化した水道設備を更新するためにどれくらいかかるかというと、更新投資に上水道で40兆円、下水道で80兆円、合計120兆円が必要だという。これを地方自治体に負担しろというのもムチャな話だ。独立採算制をとっている水道事業、実に全国で8割以上が赤字を垂れ流している状態。その中で120兆円もの費用をまかなえるとも思えない。そのため、遅かれ早かれ、水道料金の値上げは避けられないと口をそろえて言う。庶民にとって、消費税の値上げなどよりも重い水道料金の値上げという現実が、すぐそこまで迫っているのである。

2. 水道料金の悪循環! 高機能化とエコの狭間!

では、なぜこのようなことになったのかを考えると、需要の見通しを誤ったためと言わざるを得ない。そこにはさまざまな原因があるのだが、節約やエコといった概念が世間に広まったことが大きく影響している。節水型のトイレや洗濯機が普及し、家庭の水消費量が減少。さらに地方では人口も減少傾向にある。要するに水に対する需要が減っている状況なのである。当然のことだが、需要が減れば収益が悪化する。そうなれば水道料金も値上げしなければならない。値上げするとますます住民は節水する。そんな悪循環に陥っているのである。さらに、作ってしまった設備を縮小できないという問題もある。水道事業を行うには、大型浄水場やダムを建設する場合がある。これらの設備投資は、借金で行うわけだ。この借入金の返済負担が現在、地方自治体にずっしりとのしかかっているのである。
さらに悪循環になる理由がある。それは水道設備の過度なハイスペック化だ。水道事業は国の事業認可を受ければ、その費用を補助金や起債でまかなうことができる。認可を受けるには国の細かい仕様に沿った過度に高性能な仕様が必要なのだ。そのため、全国でオーバースペックな水道設備が創られていった。その結果が水道設備の稼働率7割~8割という地域が多くあるという現実に表れている。全国の水道局が、甘い見通しで過剰投資を繰り返してきたツケを、料金値上げや税金という形で穴埋めされるのである。


3.果たして自治体任せの水道事業は正しいのか!?

老朽化した現在の水道設備。その更新のために120兆円規模の市場が眠っているという。

さて、これらの水道事業の根幹に横たわるのが何かを考えると、縦割りの行政に最大の問題があるのではないかと思えてくる。国は地方自治体に水道事業を丸投げし、地方自治体は収益と住民からの突き上げできゅうきゅうする。ならば、民間へ委託すればいいのに、と考えるのは早計なのだろうか? 実は、2002年に水道事業が民間に委託されたのだが、民営化は遅々として進んでいない。それは浄水場の夜間・土日の管理などといった一部のみの委託でしかない。それはあくまでアルバイトを雇うような形であり、一括して収益を考えた委託とはほど遠い状況なのだ。さらにその民間への委託事業も、過当競争が起こり、受託額の叩き合いが始まっているという状況。水道局に経営能力がないことは、水道事業の現状を見れば明らか。それを民間に任せないというのは、裏に何かがあると勘ぐられても仕方ないのではないだろうか。前述したとおり、水道設備の更新費用は120兆円規模であるという試算もある。つまり、日本国内の水道事業だけで120兆円という巨大市場が眠っていることになる。現在、水道事業の民営化率は1%未満。これを引き上げていくことで、どれだけの恩恵を受けられるか考えていただきたい。雇用問題や景気対策などにも有効な宝の山が水道事業には眠っているように考えるのだが、いかがだろうか?

4.人件費が下がっているのに、料金が上がっている水道事業の不思議

水道事業の費用構成(昭和40年度と平成19年度の比較)

人件費
昭和40年度:32.1%、平成19年度:61.5%、15.6%減
動力費
昭和40年度:6.9%、平成19年度:3.1%、3.8%減
修繕費
昭和40年度:2.5%、平成19年度:7.2%、4.7%増
薬品費
昭和40年度:1.8%、平成19年度:0.6%、1.2%減
支払利息
昭和40年度:21.8%、平成19年度:11.0%、10.8%減
減価償却費
昭和40年度:13.2%、平成19年度:27.0%、13.8%増
受水費
昭和40年度:4.6%、平成19年度:17.5%、12.9%増
その他
昭和40年度:17.1%、平成19年度:17.1%、増減なし

出典:「公共料金の窓」(日本水道協会「水道統計(平成19年度版)」より)

昭和40年度と平成19年度の水道費用の内訳の表を見ていただきたい。人件費が15.6%も下がっている上、動力費や支払利息など各種の費用が下がっている。なのに水道料金が高くなっているという状況が生まれているのだ。昭和40年度は水道工事による水道網の整備が必要だったため、人件費が主な費用を占めていた。それに対し、現在では受水費が大きくなっている。受水費とは、水道事業者が浄化された水を購入する費用。ここまで膨れ上がった背景には、人口の増加や都市化の拡大などが挙げられるのだが、もうひとつ「水利権」という問題がある。水源となる川や湖には「水利権」が設定されており、それを自治体が持っているかどうかでその水源を使用できるかが決まってくる。当然「水利権」を持っていない地域は水を買わなければならなくなる。そのため、例えば大きな川が流れている地域でも、水道料金が高いということが起こりえるのだ。受水費用と水利権は密接な関係があり、例えば昭和40年代なら従来の水源でまかなえていた水量が、人口の増加によってまかなえなくなり、よその地域から買わなければならなくなる。それに加えて、水質が汚染され、飲料に適さなくなった水源もある。そういったことから受水費用が上昇している。受水に頼る自治体にとって、この費用が経営に与える影響はかなり大きい。「水利権」に関わる料金体系の議論や、関係者合意の形成に努力しなければならないだろう。そうしなければ、水道料金という形で、我々庶民の財布を直撃するのだから。

値上がりは避けられない状況、ならば水道事業の健全な形を望む!

ここまで見てきて分かるように、水道料金の値上げはもはや避けられない状況であるといえる。しかし、そこに横たわる根本的な問題を見過ごしてはいけないのではないだろうか。少なくとも、地方自治体が健全な水道事業を行ってきたとは考えにくい。国から借金をし、過剰な設備投資を繰り返し、甘い見通しで水道事業を行ってきたのだ。それを放置したまま、老朽化したから値上げします、では納得いかないだろう。そもそも120兆円規模の財源が必要なわけで、それすらも国民の税金でまかなわれる。さらに水道料金が値上げといわれたら、二重の苦しみを被ることになる。健全な水道事業の育成には、民間への門戸開放が不可欠であり、そうしてこそ国や地方自治体が抱える他の問題への対処がしやすくなると考えるのだが……。



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