暮らしの中で、水道料金を意識する場面というのがどれくらいあるだろうか!? 生活するのに必要なものだから、値段に関して無関心という人も多いのでは。ところが、調べてみると、なんと各市町村で最大10倍の格差が生じていた! さらに、日本の水道行政が抱える問題点も見えてきたのである! OCNジャーナルでは、ふだんあまり気にしない水道料金の不思議について調査してみた!
出典:「地方公営企業年鑑」
表を見てもらえばわかると思うが、水道料金の地域間格差は実に約10倍! なぜこれほど差がつくのだろうか。実は、水道料金の決定は、地方自治体に完全に任されており、それぞれ独立採算制をとっている。つまり、良質の水源の水利権を持っていて、水質改善のための浄水施設が不要な自治体では料金が安くすむ。逆に水源の水利権を持たず、浄水場などの施設を建設しなければならない自治体では料金が高くなるのである。もちろん、これらのほかに、職員の給与や借入金の支払利息、減価償却費、動力費や光熱費などの運営費のほか、ダムや近隣から水を供給する受水費などが加わる。これら水道事業における必要経費を給水人口で割って、水道料金が決まるのである。
長野原町の水道料金については、別荘地域と住居地域で料金が違うんです。別荘地域の場合、浅間上水から給水をしているのですが、その場合、浄水設備などで金額がかかります。また、別荘という地域の特性上、1年中人がいるわけではないということもあります。オンシーズンである8月には多くの人がやってきて水道を使用するのですが、オフシーズンの際にはほとんど人がいなくなります。水道の供給は、その最大給水量に合わせなければなりません。オンシーズンに合わせて、その場所にいる人が快適に水道を使えるようにすると、どうしても割高になるんです。別荘地域に関しては、給水設備に経費がかかる上、人数も少ないということで一定額を徴収しているということです。逆に、住居地域に関しては「簡易水道」によって供給しています。「簡易水道」は、人口5千人以下の地域に適用されるもので、現在は井戸水を水源としています。「簡易水道」なら給水設備がそれほど高価でなく使用できるので、長野原町の住居地域に関しては500円程度で供給できています。
何よりもまず、浄水場が必要ないほどに水質がキレイだから安く供給できるということがあげられます。水道料金というのは、川をせき止めて上水道を作り、上水道から水を引っ張ってきて、それをろ過してさらに家庭に給水し、それを排水する下水設備など、多くの設備投資が必要なのですが、この周辺地域に関しては水がキレイなため、ろ過する設備などが必要ないんです。基本的に富士五湖の周辺地域は日本でも水道料金の安い地域として知られています。それは、恵まれた水質による恩恵を受けている証拠だと考えています。それでもやはり、安全な水を供給するためには施設を整備する必要もあるので、値上げを検討している自治体もあるようです。基本的に、国の水道施策を地方が補填しているような状態ですから、そのへんを考えていかなければいけないように思います。
東京都の水道に関しては利根川を水源として使用しています。平成17年に料金体系を見直し、値下げしました。それからずっと料金は変わっていませんね。料金の決め方については、設備費などがどれくらいかかるかを計算し、中長期的な展望のキャッシュフローを作成します。そしてどれくらいの期間で償却できるかを計算するわけです。水道料金は基本的に住んでいる人全員で割るという形です。東京の場合、人口の分母が大きいため、それほど大きな変動がないといえると思います。もちろん料金を決定するにあたって、全国的な平均を算出し、決定するようにしています。できるだけ安全でおいしい水を、安価で提供できるように頑張っているというのが現状ですね。