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社会保障と税の一体改革関連法案の参院採決を目前に、与野党の対立が続いている。国民の生活が第一やみんなの党などがきのう、衆院に内閣不信任決議案を、参院に野田首相に対する問[記事全文]
夏の甲子園、第94回全国高校野球選手権大会がきょう開幕する。この夏はどんな好試合に出あえるだろうか。今年から部員不足の学校同士による連合チームが認められ、東京や新潟、大[記事全文]
社会保障と税の一体改革関連法案の参院採決を目前に、与野党の対立が続いている。
国民の生活が第一やみんなの党などがきのう、衆院に内閣不信任決議案を、参院に野田首相に対する問責決議案を出した。
これとは別に、自民党も首相に衆院解散の確約を求め、両決議案の提出を検討している。
自民党の姿勢によっては、関連法案の成立が危うくなりかねない。
首相と谷垣自民党総裁にあらためて求める。
ここは一体改革の実行が最優先だ。両党首が先頭にたって事態を打開し、関連法案の成立を確実にすべきだ。
両党首に聞いておきたい。
一体改革に合意したのはなぜなのか。1千兆円を超す借金を放置しては、社会保障などが立ちゆかない。そう信じたからこそ決断したのではなかったか。
両党対立の背景には解散時期をめぐる思惑の違いがある。
だが、一体改革を潰してしまったら、両党は次の総選挙で国民に何を訴えるのか。葬ったばかりの「10%への消費増税」を再び掲げるのか。それでは何のための、誰のための選挙なのかわからないではないか。
そもそも、最高裁から違憲状態と指弾された衆院の「一票の格差」が1年以上放置されている。このまま総選挙をすれば無効の選挙区が相次ぐことになる。憲法違反を恐れる感覚が麻痺(まひ)しているのではないか。
それだけではない。法案が不成立なら「改革できない日本」という危険なメッセージを世界の市場に送ることになる。
日本が市場から不信任を突き付けられたらどう対処するのか。両党首にはっきりした方針があるようには見えない。
経済のグローバル化、巨額の財政赤字、少子高齢化のなか、どの政党が政権をになうにせよ政策の選択の幅は狭い。
衆参の「ねじれ」を超え、政党の枠を超えて政治を前に進める。そうした知恵と力、度量こそが必要な時代だ。
政権交代から3年、やっと実るかに見えた民主、自民、公明の3党合意を反故(ほご)にしてしまったらどうなるか。
かりに自民党が次の総選挙で第1党に返り咲いても、参院では公明党と合わせても半数に満たない。「ねじれ」は続き、2大政党の不毛な足の引っ張り合いがまた繰り返される。
首相と谷垣氏に念を押しておこう。
政治の仕事は問題を解決することである。問題をつくることではない。
夏の甲子園、第94回全国高校野球選手権大会がきょう開幕する。この夏はどんな好試合に出あえるだろうか。
今年から部員不足の学校同士による連合チームが認められ、東京や新潟、大阪など七つの地方大会に11チームが参加した。
2年前に改正された日本学生野球憲章で「野球をする権利」が明文化された。その考えを生かし、少子化の影響などで部員難に悩む学校に大会への参加の道が開けた。
最も多い4校で連合チームを組んだ北北海道・十勝地区の足寄、士幌、新得、幕別の部員はあわせて12人。
主将を務めた新得3年の片桐祐馬君は、昨夏に先輩たちが引退してから1人で練習を続けてきた。この春の新入部員は1人だけで、夏の大会への出場もあきらめかけていた。
いちばん遠い幕別とは50キロ以上離れている。合同練習は週末だけ。平日は部長と監督の先生が文字通りマンツーマンで、部員2人の指導にあたった。
十勝大会は初戦で敗れた。それでも、1年ぶりの公式戦だった片桐君は涙の意味を問われ、「皆と一緒に試合ができた感動の涙です」。そして「本当に幸せでした」と言葉をつないだ。
部員不足の悩みは、野球だけではない。ほかの競技でも連合チームが広がればいい。
高校野球といえば、勝利至上主義だと批判されたり、その過熱がいわれたりする。だが、土台をつくっているのは、日々の練習にも苦労しているこうした選手たちだ。
相手と真剣勝負でぶつかることによって、自ら足りないものに気づき、自分を見つめることができる。公式戦に参加する意味はそこにある。
夏の甲子園は第2次大戦の敗戦翌年に復活してからは途切れることなく続き、時代の変化を映してきた。外国人学校に門戸を開き、女子マネジャーもベンチ入りできるようになった。
3年間、選手として部活動を続ける女子部員も増えている。いまは男子しか公式戦に出られないが、やがて彼女たちがプレーする日がくるかもしれない。
今年の49代表校をみれば、初出場5校のうち4校は春夏通じて初の甲子園で、東東京の成立学園は創部87年の初陣だ。
春の選抜大会を制した大阪桐蔭は、沖縄の興南いらい2年ぶり、史上7校目の春夏連覇に挑む。昨夏の優勝校、日大三は2年連続の頂点をめざす。
ロンドン五輪で熱戦が続いている。甲子園では、高校生たちが躍動する番だ。