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アスベスト被害 企業の責任初認定
8月7日 18時35分

アスベスト被害 企業の責任初認定
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兵庫県尼崎市にあった大手機械メーカー「クボタ」の工場周辺で生活し、アスベスト特有のがんで死亡した住民の遺族が、国やクボタに賠償を求めた裁判で、神戸地方裁判所は、クボタの責任を認めて、およそ3200万円の支払いを命じました。
アスベストを扱っていた工場周辺の住民の健康被害で、企業の責任が認められたのは初めてです。

兵庫県尼崎市にあったクボタの工場周辺で生活し、アスベスト特有のがん「中皮腫」で死亡した男性と女性の遺族は、「昭和30年代には、アスベストの危険性が明らかになっていたのに、国やクボタは必要な対策を怠った」として、賠償を求めていました。
7日の判決で、神戸地方裁判所の小西義博裁判長は、2人のうち、工場からおよそ200メートル離れた会社で20年余り働いた男性について、「工場から300メートルの範囲では、中皮腫を発症する危険性が高く、工場から飛び散ったアスベストが原因で中皮腫になった」と指摘し、クボタの責任を認めて、およそ3200万円の支払いを命じました。
一方、国の責任については、「アスベストの健康被害を防ぐ法律を昭和50年までに作らなかったことが違法とは言えず、当時、工場周辺の住民が中皮腫を発症するおそれが明らかだったとは言えない」として、認めませんでした。
アスベストの健康被害では、工場の労働者の死亡について、国や企業の責任が認められた例はありますが、工場周辺の住民の健康被害について、企業の責任が認められたのは初めてです。
判決について原告の弁護団の八木和也弁護士は、「アスベストの健康被害が工場周辺の住民にまで及んでいることが初めて認められた判決で、アスベスト被害が公害として初めて認められた」と述べました。
一方で、国の責任が認められなかったことなどについては、不当だとして控訴する考えを示しました。
また、中皮腫で亡くなった山内孝次郎さん(当時80)の長男の山内康民さん(64)は、クボタの責任が認められたことについて、「謝罪をせず、金だけで済まそうとしたクボタの責任を認めたことについて妥当だと思う」と話していました。
一方、中皮腫で亡くなった保井綾子さん(当時85)の夫の保井安雄さん(87)は、因果関係が認められないとして訴えが退けられたことについて、「訴えが認められず非常に残念だ。妻はクボタの工場の近くに買い物に出かけること以外でアスベストに関係することはありえないので司法の場でどこまでも戦っていく」と話していました。
判決を受けてクボタは「判決の内容をよく見て、控訴を含めて今後の対応を検討します」というコメントを発表しました。
また、環境省は「詳細は十分把握していないが、国に対する損害賠償請求は棄却されたと承知している。今後も建築物の解体などにおけるアスベストの飛散防止対策や健康被害を受けた人の救済を進めていく」というコメントを出しました。

アスベスト・全国での訴訟は

アスベストによる健康被害を巡っては、東京や大阪など各地で国に賠償を求める裁判が続いていて、原告の数は全国で600人以上になっています。
このうち、平成18年に大阪の工場の元従業員など30人余りが起こした裁判では、1審の大阪地方裁判所が国の責任を認めたものの、2審の大阪高等裁判所は、去年8月、「国の対策が遅れたとは言えない」と訴えを退け、原告らが上告しています。
また、建設現場の元作業員など80人余りが起こした裁判では、横浜地方裁判所がことし5月に原告の訴えを退ける判決を出し、東京高等裁判所で審理が続いています。
このほか東京では、一連の集団訴訟で最も多い300人以上が原告となって裁判が起こされ、来月26日に東京地方裁判所で判決が言い渡されます。
国を相手にした集団訴訟は、このほかにも札幌や京都、福岡など全国8か所の裁判所で起こされていて、原告の数は全国で600人を超えています。

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