なぜかその時の光景が今でもしっかりと頭にこびり付いている。
消す必要も無ければ、残す必要もない記憶。
偶然とは、その字の通り、偶々にして然。
なぜか留まっているその記憶をなぞり書くかのように
白黒の記憶を鮮明な色を加えるかのように
20数年前の必要ではない記憶を呼び起こす。
中学での野球部の活動が終わる頃から無所属の高校2年にかけて
映画というものに取り付かれ、
週末のほとんどをたまには放課後までも映画館に通ったことがある。
もちろん、こんな私でもデートと言う場面で
時に緊張感で頭の中を妄想に占拠されながら、
デートというシーンにふさわしい2度目の映画をチョイスしたり
時にその関係性に慣れ合いが生じ過ぎて、
映画館を出るときには1人きりだったり…。
そんな折、どうしても見たかった映画
『鬼龍院花子の生涯』
突然CMで出てきた夏目雅子という当時の私にはお姉さんすぎる女優に心奪われていたから。
TVで大々的に告知される既に大女優と評される夏目雅子を見たかった。
もちろん、その夏目雅子の初ヌードという冠がほぼすべてを占めた。
TVで見る告知CMには興味以上のものを感じざるを得ない強烈なインパクトがあった。
通ぶって言えば、
『仁義なき戦い』以降、任侠ものを好んで観ていた時期にも重なり
その流れから『五社英雄』の映画に辿り着いたという言い訳も持ち合わせてる。
自分を正当化するとすれば
大学の受験科目に日本史を選択したというきっかけもあった。
その日本史の先生が時折、
授業を脱線し過ぎてコアな情報まで言及するというきっかけもあった。
大正から昭和にかけての授業だったのだろう、恐らく・・・?
しかし、そこからどうして『鬼龍院花子の生涯』の話になったのかは定かでない。
ただ、
「先生が授業中に脱線してそこまで言うんなら観てみようか!」
なんて大義は成立している。
恐らく、『鬼龍院・・・』がR指定されてはいなかったはずだが
それを観るために女の子を誘うというNonセンスな男ではなく
男同士で映画=ダッセ―奴。という無駄なプライドもあった。
ということで、
とある放課後、友人の誘いを理由も告げずに断り映画館へ。
もちろん映画は堪能した。
誰もが知る「舐めたらいかんゼよ~!」というセリフに鳥肌を覚え、
大人のシーンで少しだけ反応し、持っていた鞄を足元から膝上に移動させ…。
ただ、バツが悪すぎた。
そのシーンを頭に留めるて持ち帰ることだけを考えながら外に出た時、
同じクラスのどちらかと言えば奔放にして派手な女“A美”の両親と遭遇。
しかも、近所の馴染みの食料品店のオジサンでありオバサン。
「お~っ、Mits!1人か??」
「やらし~奴じゃの~お前も~~」と冷やかすオジサンの横で
何かを言いたそうな顔でほほ笑むオバサン。
安易に翌日の休憩時間が想像できた。
教室に入るなり、
私の視線の先にいたヘラ顔A美が近づいてきて一言
「おはよ~花子!」
案の定、その日以来高校卒業まで…一部の同級生は今でも
私のことを『花子』と呼ぶ。
という出来事から20数年経った昨日
その時と同じような純粋な気持ちで映画を観に行った。
40過ぎにして1人でこの映画を観ると言う少しの後ろめたさを抱え
http://hs-movie.com/index.htmlまあ映画に関しては・・・
もともと2代目という存在を私は一切認めていない。
確かにそのオヤジは舞台演出の名士かもしれないが、
カメラ持って遊んでいたその娘がそのままDNA受け継ぐとは限らないわけで
確かに原色を多用した映像美と言うものは見ごたえある。
悪く言えば目がチカチカする。
沢尻さんは観ているだけならやはり美しい。
想像する沢尻さん本人と映画の中の沢尻さん・・・
男視線で言えば、こういう厄介な女への興味は誰もが持ち合わせるという憂鬱。
この映画には、話題性どうこう理屈を言うより沢尻さん以外は不適。
私が高校生であるなら、膝上用の鞄も必要だっただろう?
総じて言えばおもしろい方に入る。
ただこの日は、そんな映画なんてどうでもよく・・・
偶然とは、その字の通り、偶々にして然。映画が終わりエンドロールが流れる頃、後ろの席から肩をたたかれた。
「何しよるん“花ちゃ~ん”久しぶりじゃね~」
「入り口で声かけたけど気づかんかったけ~後ろで監視しよったんよ」
「もう可笑しい過ぎて映画どころじゃないわいね~~」
まさにHelter Skelter(ひっちゃかめっちゃか)
ほぼ3年ぶりなはずなのに何の衒いも無く
変える気すら無いような純粋な広島弁
しかも館内に響き渡るような大き過ぎる声
声をかけてきたのは
食料品店の娘・・・奔放な派手な女・・・
後ろの席で妹と一緒にコソコソ昔話していたらしい。
A美も、同じように食料品店の両親から伝え聞いた
『鬼龍院・・・』の記憶をなぞっていたらしい。
ただA美はたった3年という期間に一回り大きくなってた。
真夏だと言うのに冬の衣装をまとったようなシルエット…
3年前までは高校時代の派手な振る舞いに見合う容姿を保っていたはずなのに。
残念な奴・・・。
その一方で
20年ぶりに会う年の離れた当時小学生の
食料品店を遊び場としていた妹“K織”はその姉とは逆に見事な変貌を遂げていた。
「K織 だよね?」
「イイ感じの成長してるじゃん!!」
よくよく考えれば、
いかがわしいオッサン的な言葉を知らず知らず投げ掛けていた。
誰よりも早く、冬の冬眠準備に胃の中に食料を備蓄した姉には見向きもせず
妹にだけ店の名刺を渡しておいた。
この日の唯一の収穫。
アノ冬籠り前の姉がいなければもっと・・・。