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5月の講座 武術八法とは?? vol.2   
武術を語るときには数多くの重要なポイントがあります。
その中で長拳に関する八つの大事な要求点があります、それが「武術八法」です。

1.「姿勢」form
2.「方法」method of wushu
3.「身法」body work
4.「眼法」eye technique
5.「精神」sprit
6.「勁力」power
7.「呼吸」breathe
8.「節奏」rhythm


一、「姿勢」form
姿勢とは停止した時の体の状態のことで、いわゆる「決めポーズ」です。
跳躍時の瞬間的な停止姿勢も含んでいます。

長拳の基本的な姿勢への要求点は、頭を傾けない、首を伸ばす、肩を沈める、胸を張る
腰を落ち着ける、お尻を引っ込める(右の図)
また、腕はのびのびと力強くおこない、足の形はハッキリと安定していることなどです。

二、「方法」method of wushu
方法とは武術の中の、ける、打つ、つかむ、投げるなどの具体的な格闘技術のことをさします。
攻防を理論的に表現していかなくてはなりません。

例えば弾腿(膝を引き上げた状態からつま先での前蹴り・右の図)の場合
つま先に力がなかったり、足の裏で蹴った場合正しい弾腿とは言えません。
また膝を伸ばしたまま蹴り上げることも間違った方法です。

三、「身法」body work
体を動かす時には、手足はよく意識されますが、手足をより柔軟に強力に動かすには
胴体の動きが大事です、胴体が固まったままでは自在に体を動かすことは出来ません。

身法には、胸を張る、胸を含む、腰をねじる、反らす、前に倒すなどいろいろな動作が含まれます。(右下図)
身法を使う場合、相手の攻撃をさけるためなどもありますが、打撃や蹴りの力を効率よく出すため、
また直接体当たりをするときなどにも重要な技術といえます。

四、「眼法」eye technique
武術は意識運動だと言われることがよくありますが、目はその意識を表すには欠くことが出来ません
逆に視線を正しく向けることで意識が正しく導かれることもあります。

たとえ正しい動作をしていても、うつむいていたり、よそ見をしていると武術としてのまとまりや
意味が損なわれます。
逆に動作に上手くあった目の向け方が出来ていると迫力のあるメリハリのある動きが出来ます。

五、「精神」sprit
武術においての精神とは、勇敢で何をもおそれない気概を持つことです。
さらに意識は伸びやかで強ばらず、ゆったりとした気持ちを持つことも必要です。

武術をしているときは真剣な顔をするのは当然ですが、苦しくても顔に出さず平然としていなければなりません。

六、「勁力」power
勁力とは力の出し方のことで、長拳において力の出し方は柔軟で強靱なバネのような力がいいとされます。
身体が強張った柔らかさの無い力は武術的でないとされます。

中国武術には「発勁」や「寸勁」といった言葉があり、必要以上に神秘的に扱われていますが、長拳での
勁力といえば物理的な運動の結果現れる力と理解した方がいいでしょう。

七、「呼吸」breathe
どんな運動でも呼吸は大事ですが、武術においては呼吸で身体の動きをコントロールするという重要な意味があります。
また呼吸を上手く使うことにより、勁力を効率よく出すことも出来ます。

単純に言ってしまえば、身体を低くするときには息を吐き、身体を持ち上げる時には息を吸い込む、止まるときには息も止めて
素早く動くときには、軽く呼吸を繰りかえすことで体のバランスを調整します。

八、「節奏」rhythm
長拳の表演にはスピードが必要ですが、すべてを早くするのではなく、速い動作の間にはゆったりした動きがあり、
また時にはぴたりと止まることも必要です。

節奏には動物や自然を例えた12の要求があります。
なかなかおもしろい中国的なものです。

1.「動如波」・・・活発に動く場合、波がうち寄せるように激しく滞ることのないように
2.「静如岳」・・・制止した動作の場合、安定して山のように堂々とし、その中にも勢いがある
3.「起如猿」・・・飛び上がるときには、機敏で敏捷な猿のように跳躍をする
4.「落如鵲」・・・飛び降りるときには、カササギが小枝にとまるように軽やかに音もなく着地する
5.「立如鶏」・・・片足で立つ、または急に止まるときにはニワトリが突然ピタッととまるように
6.「站如松」・・・両足で立つときには根を張った松がそびえ立つように力強く立つ
7.「転如輪」・・・回転する動作の時には、車輪が軸を中心にまわるように
8.「折如弓」・・・体を折り曲げるねじるときには、弓を引き絞ったときのように力強いバネのように
9.「軽如葉」・・・軽い動作は、風に舞う葉っぱのように軽やかに鮮やかにおこなう
10.「重如鉄」・・・重い動作は、鉄のかたまりのように重々しく
11.「緩如鷹」・・・ゆるやかな動作は大空を舞う鷹のように悠然と、そして緩やかな中にも闘気あらわす
12.「快如風」・・・素早い動作は風が吹くように素早くおこなう


「まとめ」
以上の八種類の要素はそれぞれが独立した単独の方法ではなく、お互いに影響を及ぼしています。

例えば「方法」は正しい「姿勢」でおこなわなければならず、そこには「身法」の動きも重要になってきます。
「精神」を表すには「眼法」の働きが大事で、正しい「呼吸」をする事で大きな「勁力」が生じます。
そして「節奏」はすべての動きのコントロールを受け持っているわけです。


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