鎌倉駅で新聞記者さんと待ち合わせて、話を聞きに行った。
このところ、話題になっていた鎌倉の放置駐車違反の件である。
少し前に一件落着していたのであるが、
私としてはきちんと説明していないのが気持ち悪く、
一人でも本人に話を聞きに行くつもりをしていたのだが、
事件が始まった頃から関心を寄せてくださった方があり、
ご一緒することになったのである。

さて、その結果であるが、
本人のいささかオーバーな反応をそのままに書いてしまった私に責任がある。
軽率であった。
「人命救助」ではなかった。

実際の事件の流れはこうだ。
書くのが面倒なので、本人をAさんとしよう。
出先で転倒して歩けなくなったと車中で連絡を受け、
Aさんは家人を迎えに急いで鎌倉駅西口へ向かった。
ロータリーのファミマの真ん前に車を停め、
ハザードを出し、緊急で病人を迎えに行きますとのメモを車中に残し、駅へ。
駅員さん6人に手伝ってもらって車いすでご家人を車に運ぶと、
そこには「車を移動してください(以下略)」という紙が残されていた。
そして、その紙を残した人間はすでにいなかった。
時間にして数分くらいのことだという。
到着した電車からご家人をおろし、
車いすで車に運び込むまでの時間だったという。
ただ、その時にはご家人を病院に連れて行くことに気がいっており、
あ、紙が残されていたな程度の認識だったようである。
その後、何日かして、放置駐車違反である、
何か、不服があるなら弁明書を出しなさいという文書が来た。
そこでAさんは事情を書いて弁明書を出したが却下された。
そこで、不服申立班なるところに電話したが、
救急車以外は緊急駐車は認められないと言われた。
Aさんは救急車を呼ぶということも考えたが、
それは税金の無駄遣いになると思い、自分で迎えに行ったのにと思い、
じゃあ、人が倒れていても助けてはいけないのですね?と聞いた。
その返事が、人が倒れていようが、人命救助していようが、
放置駐車違反は放置駐車違反、関係ないというものであった。
その部分を私がAさんの書いたモノから引用したために、
「人命救助して」という間違った情報が広がることになった。
この点は私が確認しなかったためのミスである。
申し訳ない。

続きである。
Aさんはその後、市の無料法律相談の窓口に相談に行った。
女性2人が対応してくれたそうである。
名刺を見せてもらったが、それを書く必要はなかろう。
そこで、道路交通法45条2項というヤツを示され、
それを理由に簡裁に訴えることにした。
これについては、コメントでこういう条文があるよと書いてくださった方が
何人かいらっしゃる。
専門家もそのように判断したわけである。
そこで、Aさんは知り合いの協力を得て、訴状を書き、訴えた。
で、その条文は以下の通りである。

 車両は、第四十七条第二項又は第三項の規定により駐車する場合に当該車両の右側の道路上に三・五メートル(道路標識等により距離が指定されているとき は、その距離)以上の余地がないこととなる場所においては、駐車してはならない。ただし、貨物の積卸しを行なう場合で運転者がその車両を離れないとき、若 しくは運転者がその車両を離れたが直ちに運転に従事することができる状態にあるとき、又は傷病者の救護のためやむを得ないときは、この限りでない。

ちなみにここに書かれている第47条というのは以下の条文である。
(停車又は駐車の方法)
第四十七条  車両は、人の乗降又は貨物の積卸しのため停車するときは、できる限り道路の左側端に沿い、かつ、他の交通の妨害とならないようにしなければならない。
 車両は、駐車するときは、道路の左側端に沿い、かつ、他の交通の妨害とならないようにしなければならない。
 車両は、車道の左側端に接して路側帯(当該路側帯における停車及び駐車を禁止することを表示する道路標示によつて区画されたもの及び政令で定めるものを 除く。)が設けられている場所において、停車し、又は駐車するときは、前二項の規定にかかわらず、政令で定めるところにより、当該路側帯に入り、かつ、他 の交通の妨害とならないようにしなければならない。
   (罰則 第一項については第百十九条の三第一項第四号 第二項及び第三項については第百十九条の二第一項第二号、第百十九条の三第一項第四号)

が、彼の言い分は通らず、即日結審、
Aさんはすでに払っていた放置駐車違反の罰金1万8000円に加え、
裁判費用1万8000円を支払うことになった。

ちなみにコメントの中には駐車違反の罰金は1万5000円だというものもあったが、
停めた場所と車両のサイズによって罰金は異なる。
1万8000円は駐停車禁止場所等に駐車していた普通車の場合である。
詳細は神奈川県警のホームページ内にある。

それから、弁明したら警察が調べてくれるはずだというコメントも頂いたが、
それはしないそうである。
帰宅後、調べてみたら、
弁明が受け入れられるのは事実誤認で違反がなかった場合、
車が盗まれた場合、
そして、天災等で車を放置せざるを得なかった場合だけで
それ以外は認めないという方針が過去に出されていた。
以下が06年に出された通達である。
http://www.npa.go.jp/pdc/notification/koutuu/sidou/sidou20060530.pdf
http://www.npa.go.jp/pdc/notification/koutuu/sidou/sidou20060614.pdf

道路交通法の条文が「傷病者の救護のため」という例外を認めていたとしても、
また、弁明というシステムがあったとしても、
そもそも、放置駐車違反に対しては
弁明を許容する要件は非常に厳格なルールの元に定められており、
かつ、法律の条文以上の力で機能しているわけである。
トイレに行きたくなってという弁明を認めていたら、
誰もかれもがそういう言い訳をするから、
とコメントに書いてくださった方がいらっしゃったが、
警察もそう考えているようで、
弁明を認め出したらきりがないから、
ごく限られた場合以外は聞かんでよろしいとされているのである。
調べてくれるはずはない。
神奈川県警の取った対応は通達に則ったものであり、
まったくもって正しいのである。
ただ、通達のほうが法令より上位に来るんだ~という意味では
そうなのかなあと思うのだが、
そういうものなのだろうか、お詳しい皆様方。

結局、Aさんは1万8000円+1万8000円ちょっとを払って、
この件を終わらせることにした。
ひとつ、勉強をした授業料と思うことにするとのこと。
私もこの件では、詳細を確認せずに書いてしまったことを深く反省している。
最初から、本人の話を聞きに行って書けば良かったのである。
鎌倉、ちょっと遠いなあとさぼってしまった。
お気に掛けてくださった皆様には申し訳ないと思う。

ところで、もうひとつ。
マスコミに働きかけたらというご意見もいくつか頂いた。
働きかけるまでもなく、フェイスブック経由で2紙1誌の方からご連絡を頂いた。
しかし、Aさんは自分は警察に対してなんらかの意を持っているわけではなく、
たまたま、今回は腹を立てているけれども、
別に活動家でもないしという意向だったため、
適宜、状況の説明をするという程度だった。
たまたま、本日は最終的な報告をしたおひとりが
本人に話を聞きたいと仰ってくださったため、同行することになった。
が、今後、さらに戦うということなら、記事になるが、
そうでないとすると、難しいとの判断である。
残念ながら、記事になることはない。

以上、本日聞いてきたこと、
その後、調べたことなど、この件に関して私が知る限りは書いた。
法律には疎いので、間違いがあったら、訂正していただけると、
幸いである。