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姉刺殺の被告に求刑超す判決…大阪地裁
昨年7月、自宅を訪ねてきた姉(当時46歳)を包丁で刺殺したとして殺人罪に問われた大阪市平野区の無職大東一広被告(42)の裁判員裁判の判決が30日、大阪地裁であった。
河原俊也裁判長は、大東被告が広汎性発達障害の一つである「アスペルガー症候群」だと指摘。「社会内にこの障害に対応できる受け皿が用意されていない現状では、再犯の恐れが強く心配される」として求刑(懲役16年)を上回る懲役20年を言い渡した。
大東被告は同月の逮捕後、大阪地検の精神鑑定で、この障害があると診断された。地検は刑事責任能力に問題はないとして昨年11月に起訴。公判で大東被告は罪を認め、弁護側は、犯行には障害が影響したと主張。保護観察付きの執行猶予判決を求めた。
判決で河原裁判長は「約30年間、自宅に引きこもっていた被告の自立を促した姉に恨みを募らせた」などと動機を認定。障害の犯行への影響を認めたが、「量刑で大きく考慮することは相当でない」として量刑面の弁護側の主張を退けた。
一方で、障害に対応できる受け皿が社会に整っていないとの認識を示し、「十分な反省のないまま社会復帰すれば、同様の犯行に及ぶことが心配される」と指摘。量刑判断に社会秩序の維持の観点も重要として「殺人罪の有期懲役刑の上限で処すべきだ」と述べた。
最高検によると、裁判員裁判で求刑を超える判決は20日現在で26件。大半は1~2年だが、今年3月には大阪地裁で幼い三女への傷害致死罪に問われた両親(控訴)に求刑の1・5倍の懲役15年が言い渡された。
支援団体「障害の特徴に理解を」
大東被告の弁護人の山根睦弘弁護士(大阪弁護士会)によると、公判では証人申請した精神科医に障害の特徴などを証言してもらい、弁論で「刑務所に入れるのではなく治療が必要だ」と訴えた。山根弁護士は「裁判員に障害の実情を十分に理解してもらえなかったかもしれない」と振り返った。
今回の判決について、障害を持つ人々の家族らで作る兵庫県自閉症協会の岩本四十二会長(68)は「再犯の恐れがあるとの根拠を障害に求めるのは納得できず、障害を持つ人が、事件を起こしやすいかのような偏見を持たれるのではないか。知的能力に問題がなくても、障害の影響で社会的規範が身に着いていない場合もある。そうした特徴をきちんと理解した上で、判決を下したのか疑問だ」と話した。
一方、大阪地検の大島忠郁(ただふみ)次席検事は「コメントすることはない」とした。
アスペルガー症候群 生まれつきの脳機能障害が原因とされる。著しい言葉の遅れや知的障害は見られないが、対人関係の構築や感情のコントロールが苦手とされ、周囲から理解されにくい面がある。
(2012年7月31日 読売新聞)
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