ルポにっぽん 2008年12月30日 朝刊一面・二面
「不況 ミッキーを求めて」
「居るだけでいい」癒しの聖地
「お上」より信じられる
<引用開始>
ミッキー人気が世界に広がったのは1929年に始まる世界恐慌の大恐慌の時代だと、これは10年前に米ディズニー本社で当時の幹部から聞いた。つらい時代、人はミッキーに癒されたのだ、と。
そして今、日本は「未曾有の」なる言葉が飛び交う苦境にある。経済ばかりではない。首相は立て続けに政権を放り出し、霞が関は年金問題の不始末その他でいかにも頼りなく、良くも悪くも日本を回してきた「お上社会」はお上総崩れで立ち行かない。
安心、安全、質の良さ。ディズニーというブランドは、お上が失ってしまったものを一手に引き受けている感がある。今や公的機関の色さえ帯び、その信頼度は群を抜く。
書店には「ディズニーに学べ」式の本が並び、ディズニー主催の企業や団体向け研修会に官庁職員も来る。
「この場所に居るだけでいい。周りはみんな笑顔だし癒されますよね」
年一度、必ず来ると決めていると二人は言った。これはもう幸せの確認作業、TDLはある種の神聖さを帯びてそうした人々を引き寄せる。
能登路氏(能登路雅子東大教授)は格差社会を映して「自分はまだ大丈夫という自己確認の場になっている」と見る。
<引用終了>
新聞社と東京ディズニーランドの関係は極めて「薄い」と言わざるを得ません。その理由は簡単です。「桁違い」の品質について来ることができなかったのです。日本経済新聞は、東京ディズニーランド20周年の2003年4月15日の社説にこのように記しています。
「テーマパーク運営にはきめ細やかな接客手法など日本流のノウハウが入っている。従業員参加型のQC(品質管理)活動だ。混雑するイベントへの効率的な誘導や混雑時の入場制限システムなど、世界のディズニーランドの中でもトップクラスといわれるTDLの接客態度の良さの背景になっている。」
デタラメです。東京ディズニーランドがQC活動を行ってきた事実はありません。
ディズニーランドに「癒し」を求めてやってくる来場者の7割が女性です。この科学的理由について、私は「右脳」の働き方の問題と捉えています。右脳と左脳は機能が違います。左脳が理論やことばと言った分野を司るのに対し、右脳は音楽や美意識、倫理観といった分野を司ります。
男性は右脳と左脳の機能が分化(分けて使う)されている人が多いのに比べ、女性は分化が進んでいません。良い意味での「ごちゃまぜ」です。ピアニストの中村紘子さんは「左手でピアノを弾きながら、右手で料理することができる」と本で読みました。つまり、左脳と右脳両方が同時進行で機能しているということです。
私は男性ですが、東京ディズニーランドで長く働き右脳が鍛えられた結果、女性のディズニーランドでの「癒され」つまり、「本当の自分へのリセット」が分かるような気がします。私の妻は、「東京ディズニーランドは特別な場所」と言いました。ディズニーランドは好不況にかかわらず、「理論」でなく、「実感」で人を幸せにすることができる特別な場所なのです。
来年の4月15日は東京ディズニーランド開園30周年です。あれから30年経つということに感無量ですが、今を生きる私たちは30年後の社会をデザインしなくてはなりません。新聞社も同じです。目先のことばかり報じず、マクロの視点でディズニーランドに学び、女性の視点で「感じ取って」欲しいと切望します。