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サムスン、証拠採用を却下された書類をメディアにリーク - コウ判事ご立腹

2012.08.01

現在、カリフォルニア州サンノゼにある連邦地裁で審理が行われている、アップルとサムスンとのモバイル端末に関する特許権の侵害をめぐる裁判で、サムスンが証拠として採用されるよう提出したものの、結局採用を認められなかった書類を一部のメディアにリークするという「実力行使」に出た。また、この裁判を担当するルーシー・コウ(Lucy Koh)判事が審理中にこの事実を知って激怒する場面もあったという。

この裁判では現在、次の2つの点が争点になっている。ひとつは、サムスンが「iPhoneをそっくり真似て、自社の製品をデザインした」というアップル側の主張に関するもので、サムスンではこの主張を否定するために、2007年1月のiPhone発表前から自社で「F700」と称する製品(発表は2007年2月のMWC)の開発を進めていたと反論。もうひとつは、アップルでさえ「ソニー・スタイル」のデザインを踏襲するような形でiPhoneのプロトタイプ・デザインを行っていたとするもので、これを通じて、そもそもアップルが主張するようなデザイン特許の有効性自体を問う考え。

今回AllThingsD(ATD)などにリークされた文書は、サムスンが証拠採用を求めながら、提出時期が遅すぎるとして、コウ判事から採用を却下されていたもので、あわせて12ページにわたるこのスライドのなかには、アップルの日本人デザイナー、西堀晋氏の「JONYフォン」作成をめぐる証言や、このプロトタイプに関するアップルのジョニー・アイブ氏のメール、さらに自社製品とiPhoneの発表時期とをならべたタイムラインなどが含まれる。

The Vergeによると、サムスン側の弁護団はこの日の法廷で、あらためてこのスライドの証拠に採用するよう再考を促したが、コウ判事はこれに取り合わず、食い下がる筆頭弁護士のジョン・クィン(John Quinn)氏に引き下がるよう命じたという。また二人のやりとりのなかでは、クィン弁護士が「自分は法廷にお願いをしている」("begging the court")とコウ判事にいうと、同判事が「お願いだから、あなたに対する制裁措置を私に
とらせないで下さい」("Don't make me sanction you. Please")という場面もあったという。

またコウ判事は、問題の文書と付随するサムスンのプレスリリースがATDなどのメディアを通じて一般の目に触れたことを知って激怒し、クィン弁護士に対して「あなたがどんな役割を演じたのかを明らかにする」ことを求めたほか、「誰がこんなことを認めたのかを知りたい」と述べたとThe Vergeは記している。またATDでも、「クィン氏に今日会って話がしたいと伝えなさい。私はこのプレスリリースの原稿を書いたのが誰か、そして弁護団の誰がこれを公開することを許可したのかを知りたい」とコウ判事が述べたと伝えている。


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[アイブズ氏とのやりとりを回想した西堀氏の証言:出典ATD]

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[西堀氏が作成したプロトタイプのレンダリングイメージに関する証言。ソニー風のデザインにしたのはアイブズ氏の要請によるもの、という一節が含まれる:出典ATD]

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[出典ATD]

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[出典ATD]

【参照情報】
Samsung Goes Public With Excluded Evidence to Undercut Apple's Design Claims - ATD
Samsung angers judge by sending rejected evidence from Apple trial to the media - The Verge
Let's talk about this picture of a Samsung F700 - The Verge
アップル対サムスン米裁判 - 陪審員決定、日本人デザイナーの証人喚問復活
アップル対サムスン「世紀の特許裁判」、米国で審理始まる


三国大洋(スタッフライター)

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