記者:NISH AMARNATH、翻訳:神吉ナイト真由 | 2012年8月6日 07時40分 更新

ロンドン五輪は、イギリス経済を救うのか?

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不況にあえぐイギリス経済は、オリンピック効果により回復するのか?

 消費支出の増加

 オリンピックにより何万人分もの雇用が創出されたことで、消費者心理が改善し、第3四半期に民間消費が増えるほか、長期的にみれば、労働者がより好条件の正社員に就職するためのスキルを身につけることにもつながるだろう、と考えるエコノミストもいる。

 キャピタル・エコノミクスのエコノミスト、サミュエル・トゥーム氏は「英国にとって最大の望みは、第3四半期の消費者支出の増加です。当社では第3四半期に支出が小さく増加すると予想しており、消費者マインドが少しは上昇するかもしれません」と語る。

 混雑を恐れたロンドン市民は、オリンピック関連地域を避けているが、ロンドンのショッピングとエンターテイメントの中心であるウエストエンドは、大変賑わっている。

 一方、イーストエンドの小売業は、多くの人々が同地域での買い物を控えており、客足が遠のいていると不満をもらしている。また、ジョージ・オズボーン財務大臣が行った大型店舗の営業時間の緩和政策が、小規模店舗に打撃を与えている。同策により、売り場面積が275平方メートルを越える店舗は、オリンピック開始から8週間、法律で最長6時間に制限されている日曜の営業時間を延長することができるようになっている。

 小規模店舗は日曜の営業時間延長を恐れているが、アナリストは、オリンピックが終了すれば、消費者の購買活動はすぐに元通りになるだろうと見ている。英国の小売業は、日曜の営業時間緩延長により見込まれる2億2000万ドルの売上げを狙い争っている。

 ムーディーズ・アナリティックスのエコノミスト、メラニー・ボウラー氏は、「この期間中の小売業者による大幅な値下げにより、全体の販売成長は引き続きプラスになるはずです」と述べている。

  

 チケットの売上げとGDP成長

 オリンピックのチケット販売の増加に伴い、広告主からの収益も増加することが見込まれ、これから数年はこの傾向が続くという。

 オリンピックのチケット販売額は、現在3億ドルで、これはGDPのわずか0.1%である。ムーディーズ・アナリティックスは、これが経済成長に何を意味するのか、慎重な姿勢を崩していない。英国統計局が国際的な規定に従い国の会計データに換算したこの額は、第3四半期の経済成長額を増加へと転換させた、とボウラー氏は指摘する。

 2000年のシドニー五輪でも同様に、チケット販売により、オーストラリア家庭の第3四半期の支出が前期と比べ1.4%増加した。しかし同期のオーストラリアのGDPは変動しなかった。輸出売上高の増加による利益が、投資の低迷により相殺されたのだ。

 2004年のアテネ五輪開催時には、ギリシャでも投資が減少した。ボウラー氏は「英国の第3四半期のGDPに、オリンピックによる影響は見られないでしょう。投資の低迷と、労働者が休暇をとったことによる生産低下が主な原因です」と語る。

 バークレイズ銀行の商品リスク管理部長のアミット・カリャナラマン氏は、オリンピックはロンドンにおいて海外からの投資を拡大し、短期的な費用をカバーしうる構造的かつ長期的な利益をもたらす、と指摘する。さらに、オリンピックはロンドンに奇跡を起こす、と語る。

 しかしながらカリャナラマン氏は、オリンピックによるGDPの増加については懐疑的で、「英国の景気は三番底に陥る可能性があります。今後の展開にもよりますが、年末までに状況がさらに悪化するかもしれません」と語っている。

  

 この記事は、米国版International Business Timesの記事を日本向けに抄訳したものです。

  

  

ロイター
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IBTimes

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