準決勝に向けた練習で笑顔を見せるGK権田=マンチェスター(AP=共同)
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【ロンドン松岡祐司】ロンドン五輪のサッカー男子日本代表は7日(日本時間8日)、当地のウェンブリー競技場で行われる準決勝でメキシコと対戦する。「サッカーの聖地」と称されるスタジアムで白星を飾れば、史上初の銀メダル以上が確定する。大一番に向け、守護神のGK権田修一(23)=FC東京=は「泰然自若」の精神で臨む重要性を説いた。
極限の戦いに神経質になりすぎず、かといって気を緩めすぎてもいない。どっしり構え、気持ちを強く持ちながら試合を俯瞰(ふかん)する。そんな程良い緊張感と平常心を持ち合わせた選手の数が多くなれば、ニッポンとメダルの距離は近くなる。
「何があっても、どういう状況になっても、点が取れない状況でも先に点を取られる状況でも、慌てないでやりたい」
今大会の出場チームで唯一の4試合連続無失点。誇っていいはずの記録にも、「全員の力」と傲りはない。無失点にこだわるあまり、守備的になったり、バランスを崩す方がよっぽど怖い。だから、「1人でもサボれば、いつ崩れておかしくない状況。全員で集中してやっていく」。守護神が危機意識を解くことは決してない。
この五輪まで、年代別の世界大会出場経験はゼロ。いつも、あと一歩で到達できなかった「世界」だからこそ、「もっと、もっと」と未知の高みを見据えてきた。
「僕らは、世界大会自体が未知の領域。だから、スペイン戦から『勝ちたい』という気持ちで上回るところから大事にしてやってきた。メキシコ戦も全力を注ぐことさえできれば、必ず良い結果がついてくると思う」
約1年2カ月前。五輪予選が始まる前に、権田はこんな思いをこぼしていた。
「『あの負け』が、僕をより五輪へと向かわせた。絶対に五輪へ行くんだ、と」
2008年11月、場所は中東、サウジアラビア。U−19アジア選手権の準々決勝で韓国に惨敗し、U−20W杯への出場権を取り逃がした。ピッチで泣きじゃくった苦々しい思い出。そこが「五輪」への始点だが、終着点はまだまだ先にある。「3位決定戦ではなく、決勝までの6試合をやるというのが最大の目標。最高の準備をして、全員で一つになってやれたらいい」。歓喜のメダルロードは、まだ中間地点だ。
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