死後事務委任契約は、期間が長期に渡る可能性があり、受任者が預かり金を流用したり、受任者の財産と混在
してしまうリスクが生じます。また、今は健全な財務内容の受任者でも、将来に渡っていつまでも健全とは言い切れず、受任者の債権者から預かり金への強制執行のリスクは排除できず、委任者の死後に受任者が約束を違えるリスクが払拭できません。
また、委任者が適正に「死亡後の事務」が果たされたかどうかチェックする者をもたない限り、委任者の資産を受任者が適性に管理する仕組が不整備のままです。
信託会社への信託であれば、信託契約及び信託業法上、善管注意義務・忠実義務・分別管理義務・書類設置義務等の義務を負っており、優れた管理を期待できること、また受託者が倒産したときも信託財産は受託者の財産から隔離されていますので、長期に渡る財産の保管としては適していると考えられます。また、受任者の死後事務委任契約の履行状況をチェックする機能を持ち合わせていますので、受任者は預かり金を信託会社に信託する
ことで、受任者一人で管理するリスクを補完することが可能となります。
「自分の葬式は自分で決める、葬儀代金も予め自分で負担する、子供達の世話にはならない」という考え方が、世の中に着実に増加している中、本信託スキームの相談となりました。
本信託スキームの考え方は、財産管理人、任意後見契約で依頼者の資産を預かる任意後見人、法定後見人にも利用可能なスキームと考えております。弊社では、別途「任意後見人預かり金信託スキーム」を検討しておりますので、ご興味のある方は、ご照会ください。
ちなみに、最近の最高裁の判決として以下がありますので、ご紹介しておきます。
最高裁は、未成年後見人は家庭裁判所から選任される公的性格を有するものであるから刑法244条1項(親族相盗例)の適用はないとした(最決平成20年2月18日)。
刑法には「親族であれば親族との間での窃盗罪は、その刑を免除する」(刑法244条(親族間の犯罪に関する特例))という規定があり、横領罪等に準用されています。ところが、上記最高裁判例は、親族である後見人が、後見人の立場で親族の財産を勝手に使えば、特例は適用されず、横領罪にあたるとしたのです。
上記のようなリスクを排除するために、後見人には自らの財産と預かり財産を分別管理する信託スキームが今後有用ではないかと弊社では考えております。 |