記者:NISH AMARNATH、翻訳:神吉ナイト真由 | 2012年8月6日 07時40分 更新

ロンドン五輪は、イギリス経済を救うのか?

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 ロンドン五輪は盛り上がりが最高潮に達しており、世界中から熱い視線が注がれている。

不況にあえぐイギリス経済は、オリンピック効果により回復するのか?

 ここ半世紀で最悪の不況に見舞われている英国。オリンピックは、下降を続ける英国経済にとってどのような意味を持つのか―続く不況をさらに悪化させるのか、あるいは経済回復のきっかけとなるのであろうか?

 英政府によると、オリンピックは英国の今後の経済成長を象徴するものであるという。

 オリンピックの経済的影響への見方は様々であり、英国民の意見も変化しつつある。オリンピックの利益は、これまでに費やされた巨額の投資コストをはるかに越えるであろう、というのが大方の意見だ。オリンピックスタジアムの建設にあたり、業者の選別を行ったのが2006年のことで、それ以来、莫大な金額が投資されてきた。

  

 マクロ経済的影響

 現在、英国の国債は1兆400億ドルで、これはGDP合計の66%に相当する。オリンピック開催費用は推定で93億ドルで、これは純債務額のほぼ1%である。プライスウォーターハウスクーパース社のチーフ・エコノミスト、ジョン・ホークスワース氏によると、この支出によるマクロ経済効果は微々たるものだ、ということだ。

 国家財政の65%は中央政府から来ており、25%は宝くじ、10%は地方自治体からの財源でまかなわれている。そのため、オリンピックへの支出に関する負担が中央政府の肩に重くのしかかることが懸念されている。

 ホークスワース氏は、マクロ経済的な観点で見ると、資金調達源への懸念は問題ではないと退ける。また、今四半期の消費者支出の増加はわずかであり、経済成長は小規模で一時的なものであると予想している。ホークスワース氏は「オリンピックが経済回復の鍵となるとは思えません。しかし、特に東ロンドンにおいては、交通、インフラ、住宅の整備という点で、長期的な利益をもたらすでしょう。国全体の数字としては表れないかもしれませんが、地域レベルでは利益があるでしょう」と述べている。

 英政府は予算を厳しく管理し、全国で財政再建に向けた取組みを続けている。またエコノミストは、国債の削減が必要だと指摘している。英財務省は今年度のロンドンの予算を、昨年度の32億8000万ポンドから3.7%削減し、31億6000万ポンドとした。ムーディーズ・アナリティックスの予想によると、2014年までにさらに1.6%削減され、31億1000万ポンドになるという。

 欧州中央銀行(ECB)が2010年に発表した英財政再建に関する報告書では、このような金融政策により、プラス成長を通じて長期的な財政の持続可能性が向上するだけでなく、消費者需要が回復し、債券の担保価格の上昇で投資が促進されるという。

  

 インフラのアップグレード

 オリンピックスタジアムの建設には、4億6800万ドルが費やされたと報じられている。これはオリンピックのための支出総額のわずか5%にすぎない。

 寂れたロンドン東部のストラットフォードに出現したオリンピックスタジアムは、イーストエンドの交通や住宅への投資を促した。この地域は昔から、荒れ果てた大通りと、劣悪な生活環境で有名だった。インフラの向上は、国の支出という点では目立たないかもしれないが、地域社会には長期的な良い影響を与えるであろう。

 オリンピックの祭典は今年、10万人分の雇用を生みだしたが、決して恒久的なものではない。しかし、建設業界においては、これまで切望されてきた生産と雇用の増加が現実となった。今年初めに発表されたユーロモニター・インターナショナルの報告書では、これらの傾向は世界的な不況にもがき苦しむ住宅市場に恩恵をもたらす、と記されている。

ロイター
不況にあえぐイギリス経済は、オリンピック効果により回復するのか?


IBTimes

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