2012-08-06
■ ノートへのコメント(下書き)
ああ、ノートにコメントするの、しんどい。
ノートにコメントとするより、本文に加筆する方がよほどまし・・・
===夏目雅子に言及する必要性について===
上では「出典」について議論されていますが、そもそもシルクロードを訪れる人々が被曝して深刻な被害を受けるのではないかと高田氏が本気で心配していたところに、夏目氏の発病があったため誤解してしまっただけで、この勘違い自体は「高田氏がどれほど真剣に心配していたか」を説明する以上の特筆性は無いでしょう。◆ブルーバックス『世界の放射線被曝地調査』をご覧いただければお分かりと思いますが、核爆発災害と放射線防護の専門的研究者として核実験を含む核災害地の汚染と住民の被曝の状況を自ら現地調査しておられて、たとえばこのブルーバックスではマヤーク核災害、セミパラチンスク核兵器実験場、ビキニ環礁周辺の島々、旧ソ連の産業利用核爆発、チェルノブイリ、東海村の6つの核被災とその後を上記本で解説しておられます。中国の核実験の調査はその延長線上にあります。◆中国が西部ロプノルで実施したのは、内陸における地表核実験で、これは「地表物質と混合した放射性核種が大量の核の灰となって、周辺および風下へ降下する」ので、米ソの実験に比べても格段に影響甚大なものでした(『中国の核実験ーシルクロードで発生した地表核爆発災害ー(高田純の放射線防護学入門シリーズ)』参照)。つまり汚染された土砂が周辺と風下に大量に降り注ぎ、住民や旅行者が被曝の危険にさらされていたと推測されるのです。高田氏が夏目氏の件を知って、被爆の影響かと誤解したのもそのためだったでしょう。◆医療科学社から出版されている「高田純の放射線防護学入門シリーズ」は1冊1冊が薄くて読みやすいパンフレット形式ですので、同氏の項目内容について議論なさる方は目を通しておかれることをお勧めします。--~~~~
■ 中国の核実験と日本のマスコミ
中国の核実験─シルクロードで発生した地表核爆発災害─〔高田 純の放射線防護学入門〕 (高田純の放射線防護学入門シリーズ)
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面白い(?)のは、日本のマスコミが中国の核実験について積極的に報道しようとしなかったことだ。
もしかして、マスコミの、特に「リベラル」なひとたちは、心情的に、共産主義/中国に不利な情報を信じたがらない傾向があったのではないか。ちょうど、ポルポト派の悪行が知れ渡り始めたころ、「リベラル」な人たちが共産主義勢力がそんなことをするはずがないとなかなか信じなかったように。*1
かくして、高田氏の中国に関する調査報告は欧米では報じられたものの、日本のマスコミからはほとんど無視されてしまう。
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楼蘭周辺に暮らすウイグル人の核被災を告発したドキュメンタリー番組「死のシルクロード」を、1998年(平成10年)に英国テレビ局が制作し、欧州83か国で放送された。しかし、NHKはこの番組を日本には紹介しなかった。(中略)
そればかりか、拙著の中国の核実験災害の報告を取材に来た読売新聞も、結局、記事にすることはなかった。それまで、核の専門家である私のところへ取材に来ていた、朝日、毎日新聞も、同様に、中国の核に関する私の研究を報道しない。国内大手メディアは、核問題について、結局大きく偏向した情報を国民に植え付けていた。
日本では、『中国の核実験』刊行後、この問題について取り上げた新聞は、東京・中日新聞と産経新聞のみである。(中略)
一方、原著『中国の核実験』の英語・ウイグル語翻訳版が刊行されるや否や、英国サンデータイムズ、米国サイエンス、露プラウダ、在外中華系の大紀元などの海外メディアは、一斉に筆者の研究を報じた。(『核と刀』2-3ページ)
このため、高田氏は、中立的な研究者という立場から踏み出してしまうことになる。否。踏み出さずにはいられなくなる。
筆者は、それまで人道的なひとりの科学者であったが、中共の核の危険な事態を作り出す背景を知ってからは、強烈な愛国者となった。隠蔽と偽装は中共の専売特許かと思っていたら、国内メディアも手下となっていたのである。(『核と刀』3ページ)
たいへんだなあ。茨の道だ。
昭和後期、敗戦後、中国が日本の引揚者や兵隊を大変人道的に帰国させたのを見て、中国を実際以上に素晴らしい国だと信じた人は少なくなかったんじゃないだろうか。*2
結果的に、中国は実際以上に持ち上げられて(極端に美化されて)報道されていたはずだ。中国に不都合な情報ー農薬漬け野菜問題や毒入り○○、深刻な公害と環境汚染などを朝日や毎日といったマスコミが報道するようになったのは、ごく最近のことじゃないだろうか。
共産党中国のチベット民族弾圧も、日本の左翼系知識人と「リベラル」マスコミに深刻なジレンマを与えたに違いない。
結局、中国は人道的な理想国家などではなく、単に普通の大国であり、自国/現政権に有利であれば人道的にも非人道的にもふるまうというシンプルな事実を受け入れるのに苦労した人は少なくなかったかもしれない。
■ 居住地区での地表核爆発の恐ろしさ
チベット三国であるチベット・ウイグル・南モンゴルは、中共に開放という名の侵略を受け、今、民族消滅の危機に瀕している。(中略)シルクロードの悲劇は対岸の火事ではない。(『核と刀』4ページ)
米ソも核大国ではあるが、核実験を行うに当たっては、すくなくともネバダ核実験場、マーシャル諸島進入禁止海域、セミパラチンスク核実験場等、広大な立ち入り禁止区域を設けて公衆の安全管理に努めていた。しかし中国の核実験に関しては、立ち入り禁止の実験場が設けられなかった可能性が高い。
中国共産党はウイグル人の居住区、シルクロードの要衝・東トルキスタン楼蘭周辺で、居住区としては世界最大のメガトン級の核爆発を実験と称して強行した。総核爆発は46回、22メガトンに及ぶ。(『核と刀』144ページ)
地表で核が爆発すると、摂氏百万度以上の火球が地表を覆い、核物質と大量の砂が混合し上空へ舞い上がる。この核の砂が風によって運ばれながら降下してくる。この核の砂粒ひとつひとつが高エネルギーのガンマ線、ベータ線やアルファ線を放射する危険極まりない砂である。この風で運ばれた核の砂により、遠方の人たちが書く放射線影響、健康被害を受けることになる。
(中略)中国共産党の機密情報として七十五万人死亡説があることを、ラビア女史が訴えた。(『核と刀』152-153ページ)
「中国共産党は、現地ウイグル人を自国民とはみなしていないのではないか。」と高田氏は書く。チベットの惨状を考えれば、思わずうなずきそうになる・・・。
Chinese Nuclear Tests 中国の核実験 英語/ウイグル語翻訳版 (高田純の放射線防護学入門シリーズ)
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それにしても皮肉な。
観光地となっているシルクロードでは、最大で四メガトンの核爆発が計四十六回、実施されていた。危険な核爆発は平成七年(一九九六)まで続けられており、日本人をはじめ外国人多数が、核放射線による健康被害のリスクを負ったと考えられる。この実態調査は日本として急務であり、シルクロード科学プロジェクトとして取り組む重要課題の一つである。
特に楼蘭遺跡は二メガトンの核爆発地点の南二十五キロメートルと近い。その地は、今、核の砂漠と化している。その地に入れば、残留している核の砂が放つ高エネルギーガンマ線による体外からの被曝を受ける。さらに、舞い上がった核の砂を吸い込めば、残留するプルトニウムが肺に吸着し、その後死ぬまで、アルファ線が肺細胞を突き刺す。すなわち、その地は、核放射線による外曝に加え、内曝のリスクのある各ハザード区域である。(165-166ページ)
国内のミリシーベルトや瓦礫処理で騒いでいる日本人。
その一方で、シルクロード観光に嬉々として出かけていく日本人。
・・・これが同じ国民・・・。
広域処理しようとしている普通の震災瓦礫と、ウイグルの核の砂、どちらを恐れるべきかは明白なはずだが。
正しく怖がるにも、正確な情報が必要、ということか。