縁故採用2.0—「リファラル・リクルーティング」とは

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2012/08/06


Tokyo FMのニュース番組で「リファーラル・リクルーティング」について話してください、と依頼されているので下調べメモ。

リファラル・リクルーティング(Referral Recruitement)とは

Wikipediaの「Referral recruitment」には、「既に勤めている社員の”人づて”で採用するリクルーティング戦略」がReferral Recruitementであると定義されています(Referral recruitment is the development of a recruitment strategy that is dependent on referrals by existing employees)。端的に言えば「縁故採用」というやつですね。

なぜ今「縁故採用」が盛り上がっているかといえば、それはソーシャルメディアの影響です。人脈がデジタルに可視化されることによって、今まで見えなかった「縁故」が見えやすくなっているのです。事例で見ていきましょう。


国内外で盛り上がる「リファラル系」サービス

「ソーシャルリクルーティング」と呼ばれる加熱領域の中でも、縁故を有効活用する「リファラル系」サービスは、様々なものが登場しています。

もっとも有力なのはJobvite。既に3,000万ドル以上を調達しているスタートアップです。リファラルツールを始め、多様なリクルーティング支援サービスを展開しています。ザッポス、Yelp、Hubspotなども利用。

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Jobviteの競合にあたる「Gooodjob」も注目プレーヤー。サイトのキャッチコピーにある通り、リファラルに強みを持っているB2Bサービスです。citi、HP、Viberなども利用しているとか。

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変形版としては、求人企業との相性を測ってくれる「Path.to」「bright」なんてプレーヤーも挙げられるでしょう。

こんな感じで相性スコアを出してくれます。職種や経歴だけでなく、ソーシャルグラフを分析し、人脈の距離も計測してくれているようです。

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国内ではForkwellが本格的なリファラルサービスを展開しています。高額なインセンティブも付いている、人材紹介業的なスキームです。glooops、アライドアーキテクツなどが利用しています。

紹介した友だちが採用されれば50万円!Forkwellの新機能にみる「縁故採用2.0」


SOCRUIT.MEもリファラルの要素を生かしたウェブサービスです。掲載企業で働いている「友達の友達」を可視化する便利なサービスです。転職・就職に普通に使えそうですね。

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独特の色を持つソーシャルリクルーティングサービス「Wantedly」もまた、リファラル的な機能を備えています。応募者と企業の双方が、つながりを見ることができるようです。

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ソーシャルメディア可視化された「ソーシャルグラフ(人脈)」をベースに、様々なソリューションが開発されていることが分かると思います。

既存のリクナビ路線は効率が悪くなりがちなので、感度の高い企業は、より効率の良い「リファラル」に目を向け始めている印象があります。

岩波書店は「縁故採用」を打ち出しましたよね。何が悪いのか全く分かりませんが…。)


メリット・デメリット

「リファラル」のメリットは断然「効率の良さ」でしょう。「社員の人脈」というフィルターが掛かっているので、厳選された応募者のみを集めることができます。


デメリットとしては、既に採用している社員の人脈を頼るので、場合によっては人材の多様性が失われてしまう、という点が挙げられます。ただ、ある程度同質的な人が集まるのは、採用上のメリットにもなりうるので、多くの場合それほど問題にならないように思います。

特に昨今は、ザッポスをはじめ「社内文化」を大切にする経営が注目されているので、その意味では「リファラル」は時代に見合った採用手法ともいえるかもしれません。


もう一つのデメリットは、採用したい職種と社員の人脈が繋がっていない場合には、リファラルは有効に機能しないことです。

話はシンプルで、「中国人留学生を採用したい」と考えている企業の中に、留学生とのネットワークを持っている社員がいない場合は、人脈を辿ることが難しくなります。裏を返せば、留学生とのネットワークが強い社員が多ければ多いほど、リファラルは機能するようになるでしょう。

人脈を辿っても採用したい人たちにリーチできそうにない場合は、リクナビ型の採用ソリューションを利用するのがよいのでしょう。


リファラルな関係はコミュニケーションコストが低い

余談ですが、プロジェクトベースで動くフリーランスの世界では、「リファラル」は一般的に行われているリクルーティング手法です。僕も頻繁に「知り合いで良いデザイナー知らない?」と訊かれます。

「プロジェクトメンバーの知り合い」といった、既に構築されている関係性の中で仕事をするのは、諸々のコミュニケーションコストの削減に繋がるので、大変スムーズで心地が良いものです。初めて顔を合わせる人でも、全幅の信頼を寄せられるわけです。


「リファラル」は主要な選択肢になっていく


(米国では69.1%がReferralな採用手法を利用)

僕個人の体験からいっても、数名程度の採用であれば、リクナビのようなサイトの力を借りるよりは、「リファラル」な力に頼った方が、低コストで良質な人材を獲得することができます。

Jobviteの調査なので割り引いて考える必要はありますが、既に米国では7割の企業が「Referral」を採用手段に取り入れているとか。

今後、様々なツールが発展し、さらにリファラル・リクルーティングは広がっていくでしょう。注目しておきたいトレンドの一つです。


関連本。この分野では既に日本語書籍も出ています。ざっくり「ソーシャルリクルーティング」について理解したい方はぜひ。