【立地補助金圧縮方針】企業 反発、戸惑い 雇用の影響も懸念
政府が公式に「ふくしま産業復興企業立地補助金」の補助総額圧縮方針を変えない考えを示したことで、採択されたり、保留されたりしている企業からは反発や戸惑いの声が相次いでいる。野田佳彦首相が圧縮対象とした大手企業は事業計画の見直しを迫られる可能性がある。被災者の生活再建に重要な雇用への影響も懸念されている。
■計画通りで
「予定通りの補助金は見込めるのか」「社員を採用しても大丈夫なのか」。県商工労働部には10日、採択企業からの問い合わせの電話が相次いだ。
県の担当者は、国の要求に応じる考えがないことを重ねて示した上で「計画通り事業を進めてほしい」と伝えた。
本宮市に進出する倉庫業大手のナカノ商会(本社・東京)の担当者は「突然の話で面食らってしまった」と戸惑いを隠せない。年内の操業を目指し、新築した倉庫は6月末に既に完成した。「補助率が3分の2という制度であることを元に資金計画を立てて事業を進めている。補助金が3分の1に減額されては困る」と訴えた。
採択保留となっている企業も、計画が宙に浮いた状態が長期化しかねない、と不安視する。
いわき市の大手製造業者は、生産ラインの増設や、現地から約100人の新規雇用を見込んでいる。ただ、採択決定の時期が見通せず、新規の工事発注と求人募集ができずにいる。担当者は「今は推移を見守るしかない。しかし、いつまでも待てない」と、計画見直しの可能性に含みをもたせた。
政府は、食堂や会議室など福利厚生施設の整備費と土地購入費についても、それぞれ「3分の2」の補助率を「6分の1」とするよう求めている。ただ、県は「企業側は製造ラインと一体で発注しているケースがあり、部分的に事業を縮小するのは難しい」と話す。「大手の場合、海外に流出する動きが加速するのでは」(本県国会議員)との見方も出ている。
■職場が必要
第一期の申請で採択され、地元・下郷町に漬物加工工場を新設する香精は、8日に工場の起工式を終えた。11月の操業を目指している。新規雇用は地元から23~25人を見込み、既に3人の内定を決めた。
担当者は「地元から雇用への期待は大きく、ぜひ応えたい。ただし、万が一、補助金が減額されれば影響が大きい。雇用計画は見直さざるを得ないだろう」としている。
福島労働局によると、来春卒業予定の高校生の求人は6月末現在1458人で、前年同期の2倍以上と大幅に増えた。同局は補助金採択を受けた企業からの求人数を把握していないが、「かなりの数が含まれている」とみる。
県の担当者は「若者が古里に残り、復興に尽くしてくれるには職場が必要。雇用を拡大するためにも、補助額を維持してほしい」と訴えている。
(カテゴリー:3.11大震災・断面)