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内部被曝通信~福島・浜通りから/坪倉正治 福島第一原発から23キロにある総合病院で働く血液内科医。住民と共に内部被曝について考える。
 

たぶん最高値と思える事例について

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坪倉正治

前回のブログでご紹介しましたように、ほとんどの子供で検出が無くなってきています。成人での検出率も下がり傾向です。これら自体は喜ばしいことなのですが、気をつけなければならない事例も散見されます。

とある70歳代の男性がWBC検診を受診しました。結果はセシウム134と137あわせて約20000Bq(!)/bodyという結果でした。2012年7月時での検査にも関わらず、です。

奥様も一緒に受診されました。結果は合計で約10000Bq/bodyという結果でした。体重あたりに直しても、300Bq/kgとなります。

いくつかの病院での検査を拝見させていただいておりますが、今まで私が日本で見たことある中で最高値。ベラルーシなどの報告書で散見されるような値でもあります。

実はこの方は、とあるご夫婦からの紹介でした。その2週間ほど前に別の夫婦が受診され、夫がセシウム合計14000Bq/body、奥様が8000Bq/bodyぐらいだったのです。食生活について聞いたところ、早期に出荷停止が決まった椎茸や、自身で作ったり、近場で採取してきたりしたニラ、タケノコ、干し柿、ニンニクなどを毎日食べているということでした。

同じような食生活をしている友達がいるということで来てもらったのです。

今回はその4人で外来にいらっしゃいました。非常に元気で活発に会話をするご夫婦たちでした。外来というより、ほぼ雑談。30分ぐらいみんなで話をしていました。

上記に列挙したものに加えて、干し柿を500個つくって、100個は食べた。という話や、フキ、たらの芽、くりなども頻繁に食べているということでした。

一言で言えば、強く汚染されているかもしれない(報告値が高い)食べ物を未検査で食べ続けている、ということになります。

同じことの繰り返しになりますが、非流通品で、検査をされていない食べ物は気をつけないといけないと思います。よく食べるもの、好物、高い値が報告されているものは、特にです。

もちろん、今のところスーパーで出回っているものを選んでいるご家庭での内部被曝が増加傾向ではありませんし、地元の野菜を食べていても、検査をしっかり行った後のものばかりを摂取している方での増加傾向もありません。

子供の99.9%程度は検出限界以下におさまっていますし、今回のような事例は今まで行ってきた4~5万回の検査の中で数回ではあります。

ローカルな食物が安全かという情報がうまく共有されていないことを感じます。

このご夫婦たちは原木シイタケをよく食べていました。その地域では出荷制限もすぐにかかっていて、明らかに高いことが予想されるものです。

このご夫婦も一般的にシイタケが高くなる可能性があることは認識していました。しかし大丈夫と思って食べていました。大分前に一度この辺りのシイタケは問題ないと聞いていたからです(情報のソースは不明です)。

食品の検査の継続と、ローカルな検査結果の共有、情報発信を続けることが大切だと思います。

ちなみにもってきてもらった椎茸を計測すると、セシウム合計で10000Bq/kgを超えていました。よく食べているということなら、20000Bq/bodyというのは十分にあり得る値です。写真はその際のキノコを計測した結果です。


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坪倉正治(つぼくら・まさはる)
東京大医科研医師(血液内科)、南相馬市立総合病院非常勤医。週の半分は福島で医療支援に従事。原発事故による内部被曝を心配する被災者の相談にも応じている。

坪倉正治さんインタビュー
健康・医療フォーラム2012

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