ロンドン五輪・柔道男子90キロ級(1日=日本時間2日)で銅メダルを獲得した西山将士(27=新日鉄)。中学、高校時代は弱い選手の代名詞だったが、猛稽古で急成長。銅メダルは小野卓志(32=了徳寺学園職)や西山大希(21=筑波大)の陰にかくれた“第3の男”の人生そのものだった。
3本の白旗が上がった瞬間、西山は「ふ~」と息を吐いた。相当な疲労感があったのだろう。敗者復活戦、3位決定戦ともに旗判定までもつれた末の銅メダル獲得だった。
西山は「悔しい気持ちでいっぱい。自分はかっこつけて一本取られるより、不細工な試合でも勝ちたかった。五輪は思ったより緊張して、まだまだだなと思った」と反省ばかりを口にした。
この試合のように、西山の柔道人生は決して平たんだったわけではない。中学、高校時代は「弱い選手」として有名だった。西山と同世代の柔道家だった売名王・澤田敦士(28=小川道場)が明かす。「団体戦があると勝てる選手、いわば西山が“穴”でした。西山に負けると、そのチームの監督が負けた選手をボコボコにしたこともありましたね」
講道館杯や体重別選手権で優勝しても小野や西山大の陰に隠れ、日の目を見ない日が続く。風向きが変わったのが今年1月。マスターズの代表に選ばれると、強豪イリアス・イリアディス(25=ギリシャ)を破る殊勲の星を挙げて優勝。これが最終的に強化委員会を動かし、“第3の男”の五輪出場につながった。
「寡黙だけど、ものすごい真面目だから練習は人一倍やる。柔道着はいつも(汗で)ぐっしょり。それで強くなった。昨年西山と稽古したことがあるんですが、とんでもなく強くなっていてびっくりしました」(澤田)
この日も粘りに粘っての3位。ニッポン柔道の目指す「しっかり組んで一本を取る柔道」からはかけ離れた勝利だったが、西山の柔道人生そのままに“泥臭い銅メダル”となった。