前半、先制ゴールを決めアシストの清武(左)と喜ぶ永井(畦地巧輝撮影)
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◇ロンドン五輪 男子準々決勝 日本3−0エジプト
【マンチェスター(英国)松岡祐司】なでしこに続き、男子も4強−。サッカーの男子日本代表は4日、当地で行われた準々決勝でエジプトを3−0で下し、銅メダルに輝いた1968年メキシコ五輪以来44年ぶりのベスト4進出を果たした。前半14分にFW永井謙佑(23)=名古屋=が先制弾。後半にもDF吉田麻也(24)=VVVフェンロ=、FW大津祐樹(22)=ボルシアMG=が追加点を奪って圧倒した。日本は7日午後5時(日本時間8日午前1時)開始の準決勝で、セネガルを下したメキシコと対戦する。
顔はくしゃくしゃだった。観衆7万772人で埋まったオールドトラフォードで、声にならない叫びを上げた。目まぐるしく体中を駆け巡る喜びと痛みの感覚。そしてゴールの歓喜と左足の激痛…。でも、最後に浮かび上がってきたのは、やっぱり「信じて奪ったゴール。チームのために点を取れてうれしかった」。ストライカーだけに許された感傷に少しだけ浸り、永井は少年のように屈託なく笑った。
電光石火のショートカウンターだった。前半14分、敵陣右サイド。球を奪われた清武が猛然と奪い返した。その瞬間、永井は直感した。「キヨからパスが来る」と信じて走る。弾丸のように一直線に加速する。清武がアーリークロスを送ると、GKシェナウィの鼻先で「ギリギリだったけど」ボールを収め、無人のゴールへ右足で力いっぱいねじ込んだ。日本中が欲した先制弾。驚速が生んだ五輪2発目だった。
大舞台での勝負強さには理由がある。福岡大卒業時、恩師の乾真寛監督はこう言って永井を送り出したという。「おまえは潜在能力のまだ半分しか出していないんだ。それをもっと出せ」。
コツコツと努力するタイプではない。ただ、乾監督が「やれと言われればやってのけてしまう」と評する底知れぬ能力の持ち主。本人も気付かぬ無限の可能性を力を引き出せるのは、やはり永井自身のみなのだが…。「すぐにサボってしまう…。より高いものを求められる状況に置けばそれを平気でこなしてしまう。だから、高いところに連れて行けば、誰も考えつかないような発想、スピードで自然と点を取る」
五輪は、永井の力を発揮せざるを得ない最高のシチューエーションだった。「全然緊張しなかった。普通だった」という天然の平常心と、世界という初舞台が、ここ一番の「驚速」を引っ張り出した。
得点の代償で負った左大腿部の打撲は、「そんなに心配していない」と、準決勝出場を宣言した。そして、目指すのは頂点、金メダル。「それを持ち帰らないとすべてが無駄になる」。永井はもう、止まらない。
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