一人の少女が山に立っていた。
全てが始まった山。
少女は、星空に右手の手のひらをかざす。
その手のひらから、ほとばしる蒼き閃光。
それは、天に昇る龍が如し。
天に昇った龍は、点となり星となる。
少女の悲しみ、切ない想いをのせた、その技の名は。
ライジング・ブルードラゴン
オッス!
俺の名前は、山田 健一。(やまだ けんいち)。
17歳の平凡な高校二年生。
俺の好きな漫画は、手足がゴムのように伸びる主人公が海賊の王様を目指す話、じゃなくて。
ちょっと世代が違うけど、7つ玉を集めると、何でも願いを聞いてくれる龍の神様が出でくる漫画。
その漫画の主人公は、武術を修行して、どんどん強くなって、
気を使えるようになる。
そして、手からエネルギーの波動、ビームのようなものを出せるようになるんだ。
俺は、小学生の時にその漫画を読んで、本当に出せると思った。
手からビームを。
もちろん、武術の修行なんかしてない。
ただ、全身の力を体中にこめて、手のひらに神経を集中させて、気をためた。
「かぁぁー、めぇぇー、はぁぁー、めぇぇー・・・・・・。」
もちろん何も出なかった。
頭の中で想像するような、エネルギーの波動は出てこなかった。
ところが、ある日。
突然、出たんだ。
本当に、手のひらからビームが。
高校二年の冬、もうすぐ三年生に進級しようかって時期。
俺は、部活もやっていないし、勉強も好きじゃない。
ある日の帰宅途中、近所の裏山に登った。
そんなに高い山じゃない、でも俺のお気に入りの場所がある。
そこから見る、街の景色が好きで、小さい頃からよく登ったもんだ。
そして、ちょうどいい岩に腰をかけて、ぼんやりと何かを考えた。
振り向くと、大きな岩がある。
俺は、この岩が気に入ってる。
その時は、別に何も考えてなかった。
ただ、いつもの見慣れた岩のほうに右腕を向けて、手のひらをかざした。
何となく目をつぶる。
そして、目を開けた。
その瞬間、俺は驚いた。
右の手のひらに、青く光るボールのようなものがある。
手のひらより、ちょっと大きいその球体は、空のような、海のような、透きとおる青い光。
俺は驚きのあまり、思わず声を上げた。
「うぁッ!」
その時、さらに驚いた。
青く光る球体は、一瞬にして線となって岩に向かって突き進む。
ほとばしる青い閃光、それは岩にぶつかると爆発した。
爆発音がする、映画やアニメで聴くような何かが爆発する轟音。
生で爆発音を聞いたのは初めてだった。
俺の好きだった、大きな岩には月のクレーターのような、爆発の跡が残っている。
出た。
小学生のときには出せなかった、エネルギーの波動、手のひらからのビーム。
心臓の鼓動が早くなる、俺は興奮している。
「もう一回、出せるかな。」
俺は、さっきと同じように手のひらを岩に向ける。
今度は、目をつぶらない。
夢じゃない、ビームは出た。
さっきと同じだ、一瞬の間、青く光る球体が現れ、そしてビームのように岩を砕く。
青い閃光のビーム。
俺は笑った、魂が震えるようだ。
その後、何発か青いビームを出した。
俺の好きだった、あの大きい岩は粉々に砕け散って無くなった。
そこで、ふと疑問に思う。
何故、手のひらからビームが出せるのか。
武術や気孔の修行なんてしていない、では超能力みたいなものか。
左手の手のひらからは、同じようにしてもビームは出なかった。
このビームのエネルギーは、いったいどこから来るのか、生命のエネルギーか。
俺の好きな漫画の主人公でも、無限にビームを出せるわけじゃない。
はっと我に返ると、あたりは暗くなりつつあった。
度々来ている山とはいえ、夜の下山は危険だ。
俺は、家に帰る事にした。
夕食後、自分の部屋に戻ると俺は考えた。
この青いビーム、いや必殺技の名前を考えよう。
「ブルービーム。」
俺は、直感的に思いついた名をそのまま口にする。
面白くも格好良くもない、見たままの名だ。
「ブルーサンダー。」
ブルービームよりマシだが、サンダーは何か違う気がする。
サイコビーム、ブルーキャノン、ブルーレーザー・・・・・・。
色々と検討するも、納得のいくネーミングはできなかった。
まあ焦ることはない、明日にでもまた考えよう。
漫画の主人公のように、技の名前を叫んでビームを出す自分を想像する。
にやにやしながら布団に入り目をつぶる、今夜はいい夢が見れそうだ。
翌日、朝起きるとすぐに、俺は自分の右手の手のひらを見る。
昨日の青いビームは夢だったのか、確かめたい衝動にかられる。
しかし、家の中でビームを出すわけには行かない。
いつもと変わらない通学路、いつもと変わらない学校。
でも、俺の右手の手のひらには、いつもと違う何かがある。
学校が終わったら、またあの山に行こう。
もう一度確かめるんだ、俺の青い閃光のビームを。
そんな、楽しみを考えつつ、いつもと変わらない授業を受けていた。
だけど、二時限目の授業中に、いつもとは違う何かが起きた。
遠くで、爆発音が聞こえた。
昨日、何度か聞いた爆発音に似ている。
隣の、さらに隣の教室の方からか、爆発音がまた聞こえる。
次に聞こえるのは、女子生徒たちの悲鳴。
俺のいる教室の生徒達も、何事かと騒ぎ出す。
教室の窓から、悲鳴をあげながら走って逃げる生徒達が見える。
次の瞬間、俺は信じられないものを見た。
緑色に輝く閃光、ビームだ。
同じだ。
昨日、俺が山で出したビームと同じ、違うのは青色じゃなくて緑色ってだけ。
目の前で起こる爆発、轟音と共に、廊下の壁が、窓のガラスが砕け散る。
それを見て、俺のいる教室の女子生徒たちも悲鳴をあげる。
皆、一斉に逃げようとする、教室は大パニックだ。
その混乱の中、俺は皆が逃げる方向とは逆に進む。
確かめなくては、いったい誰が緑色のビームを出しているのか。
俺は、教室のドアの影から顔だす。
そいつはいた。
眼鏡をかけた、普段は温厚そうな男子生徒。
でも今は違う、完全にきれてるって感じだ。
温厚な人間ほど、怒ったとき何をするか分からない。
彼は、何に対して怒っているのか、学校生活か、社会に対する不満か。
ただ、彼が校舎の壁や窓ガラスを破壊しているのは、金属バットや鉄パイプなんかじゃない。
右手の手のひらから、緑色の閃光のビームを乱射している。
そのビームの破壊力は、例えるなら、小型のミサイルと同じくらい。
いつもと変わらないはずの学校が、今はまるで戦場のようだ。
俺は、自分の右手の手のひらを見る。
これは、絶好の
機会じゃないのか。
俺なら彼を止められる、俺の青い閃光のビームなら。
緑色のビームを乱射する男子生徒は、正気の状態とは思えない。
ただ狂ったように雄たけびを上げて、緑色の閃光を繰り出し、周囲を破壊している。
でも、奇跡的なことに人間には命中していないようだ。
俺と彼がいるのは校舎の二階、他の生徒達は無事に避難したようだ。
誰もいなくなった廊下。
それでも、彼は緑色のビームの乱射を、破壊をやめない。
俺は、教室のドアに隠れたまま彼をのぞき見る。
彼との距離は50メートルくらいか、人を撃つのは初めてだが、狙い撃てない距離じゃない。
幸運な事に、彼は俺の存在には気づいていない。
勝てる。
そう思った。
だが、待て!心の中で自分を制止する。
俺の青いビームも、彼の緑色のビームも、小型ミサイル並の威力がある。
まともに命中したら人間は死ぬに違いない。
俺のビームが命中すれば、俺は人殺しになる。
それに、もし俺のビームが命中しなかった場合、彼は俺の存在に気づく。
俺に向かって、殺意をこめて緑色のビームを撃ってくるはずだ。
俺の命が危険にさらされるってわけだ。
彼の姿をもう一度見る。
とても正気の状態とは思えない、相変わらず怒り狂ったようにビームを乱射している。
もし、この騒ぎが続けば、やがて警官達がやってくるはずだ。
そうなれば、彼は殺人鬼となるかもしれない。
彼を裁く権利は俺には無い、でも彼を止める力は持っている。
これは、きっと運命なんだ。
彼を止められるのは、俺しかいない。
俺は決意する、彼を撃つ。
俺の必殺の・・・・・・
そういえば必殺技、このビームの名前をまだ決めていなかった。
いや、技の名前なんかどうでもいい。
彼を止めるんだ、できれば殺さないように脚を狙おう。
脚を撃てば、動きを封じられるはずだ。
最悪の場合でも彼が動けなくなれば、俺が逃げることはできる。
俺は、深呼吸する。
もしかしたら、彼を殺してしまうかもしれない。
でも覚悟を決める、撃つ!青い閃光のビームを・・・・・・
俺が、彼を撃とうと決意して廊下に出ようとしたとき、そこには一人の少女が立っていた。
同じ制服、この学校の女子生徒だ。
ロングヘアーの長い髪、顔を見る、かなりの美人だ。
いや、美人かどうかはどうでもいい、何で女子生徒がまだ残っているんだ。
「おい、危ないぞ。」
俺は女子生徒に声をかけた。
しかし、その女子生徒は俺に見向きもせず、別の方向を見つめていた。
その視線の先には彼がいた、緑色のビームを乱射する男子生徒。
女子生徒は右腕をそっとあげると、右手の手のひらを彼に向ける。
この体勢は、まさか・・・・・・
「ブラッディ・ブラスター。」
女子生徒は静かに、だが俺にはっきり聞こえる声で言った。
次の瞬間、ほとばしる赤い閃光のビーム。
燃えるような、血の色の赤い閃光。
それは、女子生徒の右の手のひらから、彼に向かって突き進む。
彼はその赤い閃光に気がつき、自分の右手の緑色の光で防ごうとした。
だが、間に合わなかったようだ、真紅の閃光の爆発。
爆発音と共に、彼の悲鳴が廊下に響いた。
彼は生きていた、だが彼の右腕は半分以上、燃えたように無くなっている。
さっきまで、緑色のビームを乱射していた彼は、廊下に倒れ、右腕を無くした痛みに絶叫している。
俺は女子生徒に視線を戻した。
赤い閃光のビームを放った女子生徒は、いつの間にか俺のほうを向いていた。
目と目が合う、俺は背筋が凍るような恐怖を感じた。
女子生徒は、俺に向かって静かにつぶやいた。
「ブラッディ・ブラスター。」
どうやら、赤い閃光のビームの、必殺技の名前のようだ。
「私は、赤き流星の亡霊、あなたとは住む世界が違う。」
女子生徒は、謎めいた言葉を残して俺に背を向けた。
廊下には、まだ緑色のビームを乱射していた男子生徒の悲鳴が響いていた。
でも、俺は赤い閃光のビームを放った、女子生徒の去り行く背中を呆然と見ていた。
俺の中で、激しい感情が湧き上がる。
もし、俺が普通の男だったなら、あの不思議な女に心を奪われたかもしれない。
俺の中で湧き上がる感情、これは嫉妬だ。
俺にも、俺にも撃てたのに・・・・・・。
俺が撃とうとしたのに、青い閃光のビームを。
それを、あの女が先に撃ちやがった。
さらに、格好良い必殺技の名前まで言いやがった、しかも二回も。
ブラッディ・ブラスター。
あの燃えるような血の色の赤い閃光、ブラッデイを称するに相応しい。
しかも、ブラスターの響きもよく。
ブラッディのブラと、ブラスターのブラが韻を踏んで絶妙なネーミングだ。
「赤き流星の亡霊」
謎のメッセージまで残して行きやがった。
格好良い・・・・・・、通常の三倍は格好良い。
許せない、俺も言いたかった。
青い閃光のビームを解き放ち、必殺の言葉を言いたかった。
でも俺は撃てなかった、技の名前すら決めていなかった。
その時、天啓と言うべきか。
俺の頭の中で、閃きが起こった。
7つの玉、龍の神様、青い閃光・・・・・・。
ついに決まった、俺の青い閃光のビーム、必殺技の名前が。
「
青龍破。」
ほとばしる蒼き閃光、まさしく龍の如し。
朱雀、白虎、玄武と並ぶ四聖獣の名を冠した名前。
和風で、シンプルで、俺の青い閃光のビームにぴったりの名前だ。
言いたい、叫びたい。
あの女の前で、青い閃光のビームを放ち、そしてこう言ってやるんだ。
「青龍破、そう俺は蒼き龍の化身。」
緑色の閃光のビームを乱射した男子生徒の事件から、数週間たった。
この事件は全国的にも報道され、謎の事件と話題になった。
よく考えると、あの時の学校には、手のひらからビームを出せる者が3人いた。
俺と、事件を起した緑色のビームの男子高校生、あと「赤き流星の亡霊」を名乗る女。
他にビームを出せる人間がいてもおかしくない。
ひょっとしたら世界が変わるかもしれない、俺はそう感じた。
しかし、現実は何も変わらなかった。
あの事件も、受験勉強の疲れで発狂した高校生が、爆発物を教室に持ち込み爆発させた。
そんな内容に変わりつつあった。
でも、俺は忘れていない、あの「赤き流星の亡霊」と名乗る女を。
あの時の、激しい嫉妬と屈辱を。
あの女の氏名はすぐに分かった、
赤城 星羅。
本名まで、「赤き流星の亡霊」と名乗るに相応しい、いまいましい女。
赤城 星羅は、すぐ隣のクラスの女子生徒だった。
美人だが、日頃から無口で愛想も無く、友達もいないようだ。
一部の男子生徒に人気はあるようだが、特定の彼氏もいないらしい。
ある日の放課後、俺は
赤城 星羅を尾行する事にした。
もちろん彼女を攻撃するつもりはない。
ただ、跡をつければ
機会があるかもしれない。
彼女の目の前で、「
青龍破」を使う
機会が。
俺は慎重に尾行する。
何故かわくわくしてきた、まるで刑事か探偵にでもなった気分だ。
世間的に見れば、立派なストーカー行為とも言えるが。
人気の無い住宅街を、
赤城 星羅は歩いている。
俺は、彼女を見失わないように跡をつける。
彼女は、住宅街の角を曲がる。
俺もその影を追って、角を曲がった。
その瞬間、俺は動きを止めた。
俺は刑事でも探偵でもない、ビームを出せる以外は普通の高校生。
どうやら俺の不用意な尾行は、既に彼女に気づかれていたようだった。
角を曲がった数メートル先で彼女は立っていた、俺を睨みつけている。
「なぜ、私の跡をつけてくる、貴様!何者だ。」
冷たい声で、彼女は俺に言った。
その表情は怒りの顔だ、美人なだけによけい怖く感じる。
「え、あ・・・・・・、いや、その。」
汗が出る、俺は動揺してまともに喋れなかった。
しまった。
さらに致命的な失敗に気付く、俺は学生鞄を右手に持っていた。
彼女は鞄を左手に持っている。
これが、何を意味するのか。
俺は、右手から赤い閃光のビームを出せる危険人物と対峙しているんだ。
彼女は、静かに右腕をあげ手のひらを俺に向けてかざす。
この女、撃つつもりだ。
ブラッディ・ブラスター、という名の赤い閃光のビーム。
あの時の、右腕を無くした男子生徒の姿が俺の脳裏をよぎる。
「待てッ!」
俺は、あわてて制止しようとするが、間に合わない。
彼女は言った、必殺のビームの名を。
「
爆炎・
紅龍破。」
ほとばしる赤い閃光、まさしく真紅の龍が如し。
人気の無い住宅街に響く爆発音、それは龍の咆哮が如し。
生きている。
俺は生きていた、しりもちをついた体勢で震えていた。
目の前には、マンホールくらいの大きさの月のクレーターのような爆発の痕跡。
彼女が撃ったのは、威嚇射撃。
俺を殺すつもりではなかったようだ。
俺は混乱していた、目からいつの間にか涙が出ている。
混乱する思考、でも俺ははっきりと聞いた。
「
爆炎・
紅龍破。」
この女、技の名前を変えやがった。
しかも俺の「
青龍破」と思いっきりかぶっている。
動揺しながらも、俺は疑問を声に出した。
「ブラッディ・ブラスターじゃないのか?」
その声に彼女は反応した、俺の顔をじっと見て言った。
「あなた、あの時の・・・・・・。」
どうやら俺のことを覚えていたらしい。
彼女は俺に向かって、ゆっくりと歩み寄る。
俺はまだ、地面に座り込んだまま動けないでいた。
彼女は俺のすぐ目の前に立って、俺を見下ろしていた。
そして静かな声で話す。
「私は、
紅の龍の化身、あなたとは住む世界が違う。」
決定的な敗北を俺は感じた。
この女、設定まで変えやがった、「赤き流星の亡霊」はどこへ行ったんだ。
撃ってやろうか。
俺の「
青龍破」を。
いや、だめだ。
いま「
青龍破」を叫んだら、俺がこの女の技をパクった事になる。
またしても湧き上がる激しい嫉妬、もはやそれは憎悪に変わる。
そんな俺に向かって、彼女は右手を差し出した。
まさか、とどめを刺すつもりか、俺は全身に恐怖を感じた。
でも違った。
彼女の差し出した右手は、俺に差し伸べた手だった。
俺は左手でその手を握った、暖かい手だ。
俺は彼女の支えで、ゆっくり立ち上がった。
いつの間にか、彼女の表情は怒りではなく微笑みに変わっていた。
「あなた、私のことを好きになってしまったのね。」
彼女は、少しほほを赤らめて言った。
「え?」
「いいでしょう、あなたの勇気に免じて、つきあってあげるわ。」
この女、ひどい勘違いをしている。
いつ俺が交際を申し込んだんだ。
誤解を解かねば・・・・・・。
しかし、俺は思いとどまった。
この女は
躊躇無く、赤い閃光のビームを住宅街でぶっ放す危険な女だ。
否定的な事を言えば、殺されるかもしれない。
完敗だ、俺はこの女に完全に敗北した。
撃つタイミングも、ネーミングセンスも、そして心も負けた。
その日、俺に初めて「彼女」ができた。
名前は、
赤城 星羅。
ロングヘアーの美人、でも右手から赤い閃光のビームを出す、最高に危険な「彼女」が。
俺は彼女と、赤外線通信という見えないビームで、携帯の電話番号とメアドを交換した。
笑顔で手を振る彼女を、俺も手を振って見送った。
その後、俺は山に向かった。
すっかり日も暮れて、夜になっていた。
俺のお気に入りの場所、眼下に見える街は人工の光を灯し、星空のようだ。
その後、空を見上げて本当の星空を眺める。
きれいだ。
携帯の着信音が鳴る。
俺は、ポケットから携帯を取り出す、母親からだ。
俺は電話に出た。
「もしもし。」
「ちょっと、
健ちゃん、どこにいるの?夕食とっくにできてるわよ。」
母親の声に、力なく答える。
「ごめん、すぐ帰るから。」
「もう、お父さんが怒ってるわよ、若い娘がこんな時間までどこに行ってるんだって。」
母親からの着信は途絶えた。
俺の名前は、
山田 健一。
17歳の平凡な高校二年生。
平凡じゃないのは、右手から青い閃光のビームが出せる事と。
女なのに、「
健一」っていう男の名前がついている事。
この名前のせいで、性格まで男っぽくなってしまった。
あと、もうひとつ。
再び、携帯の着信がなる、メールの着信音だ。
携帯を開く、
赤城 星羅からだ。
「明日、学校で会えるのを楽しみにしてるから。おやすみなさい。」
ハートや笑顔の絵文字がいっぱい付いているメール。
女なのに「彼女」ができてしまった・・・・・・。
俺は、星空に右手の手のひらをかざす。
初めて、必殺の言葉を口にした。
「ライジング・ブルードラゴン。」
ほとばしる青い閃光のビーム、それは天に昇る龍が如し。
俺の悲しみ、切ない想いをのせた蒼き光は、線から点に変わり、そして星となった。
目から、一筋の涙がこぼれ落ちる。
天に昇る青い龍とは逆に、俺の心は深く沈んだ。
一言、つぶやいた。
「最高に、ブルーな気分だ。」