名著と名高い、ジェームス・W・ヤングの「アイデアのつくり方」を今更ながら読んでみました。「アイデアを生み出す方法」が、5つのステップで非常にクリアにまとまっています。広告マンを対象に書かれた本ですが、ビジネスパーソンなら絶対に知っておきたい基本的な内容です。
アイデア作成の基礎となる、二つの一般的原理
アイデアとは既存の要素の新しい組み合わせ以外の何ものでもない。これはおそらくアイデア作成に関する最も大切な事実である。
(中略)
関連する代にの大切な原理というのは、既存の要素を新しい一つの組み合わせに導く才能は、事物の関連性をみつけ出す才能に依存するところが大きいと言うことである。
ステップ1:「資料を収集する」
5つの中の第一の段階は資料を収集することである。これは至極単純明快な真理にすぎないと諸君は驚かれるにちがいない。にもかかわらず実際にはこの第一段階がどんなに無視されているか、これまた驚くばかりである。
この資料を実際に収集する作業は実はそうなま易しいものではない。これはひどい雑仕事であって、私たちはいつでもこれをいいかげんでごまかしてしまおうとする。
ステップ2:「咀嚼する」
さて、諸君がこの資料集めという職人的な仕事、つまり第一段階での仕事を実際にやりとげたと仮定して、次に諸君の心が通り抜けなければならない段階は何か。それは、これらの資料を咀嚼する段階である。ちょうど諸君が消化しようとする食物をまず咀嚼するように。
諸君がここでやることは、集めてきた個々の資料をそれぞれ手にとって心の触角とでもいうべきもので一つ一つ触ってみることである。一つの事実をとりあげてみる。それをあっちに向けてみたりこっちに向けてみたり、ちがった光のもとで眺めてみたりしてその意味を探し求める。また、二つの事実を一緒に並べてみてどうすればこの二つが噛み合うかを調べる。
諸君がいま探しているのは「関係」であり、ジグソーパズルのようにすべてがきちんと組み合わされてまとまるような組み立てなのである。
(中略)
しかしやがて諸君は絶望状態に立ち至る。何もかもが諸君の心の中でごっちゃになって、どこからもはっきりした明察は生まれてこない。ここまでやってきた時、つまり「まずパズルを組み合わせる努力を実際にやり遂げた時」、諸君は第二段階を完了して第三段階に移る準備ができたことになる。
ステップ3:「問題を無意識に移す」
ここですべきことは、問題を無意識の心に移し諸君が眠っている間にそれが勝手にはたらくのにまかせておくということのようである。
この段階において問題を意識の外に移し、無意識の創造過程を刺激するのに役立つことで諸君にできることが一つだけある。
(中略)
だから、アイデア作成のこの第三段階に達したら、問題を完全に放棄して何でもいいから自分の想像力や感情を刺激するものに諸君の心を移すこと。音楽を聴いたり、劇場や映画に出かけたり、詩や探偵小説を読んだりすることである。
ステップ4:「アイデアの到来」
諸君が実際にこれら三つの段階で諸君のすべきことをやりとげたら、第四の段階を経験することはまず確実である。
それは、諸君がその到来を最も期待していない時—ひげを剃っている時とか風呂に入っている時、あるいはもっと多く、朝まだ目がすっかりさめきっていないうちに諸君を訪れてくる。それはまた真夜中に諸君の目をさますかもしれない。
(中略)
アイデアの訪れ方はこんな風である。諸君がアイデアを探し求める心の緊張をといて、急速とくつろぎのひとときを過ごしてからのことなのである。
ステップ5:「世に出す」
この段階において諸君は生まれたばかりの可愛いアイデアをこの現実の世界の中に連れ出さねばならない。そうすると、この子どもが、諸君の当初産み落とした時に思っていたような素晴らしい子どもではまるでない、ということに気付くのが常である。ほとんどすべてのアイデアがそうだが、そのアイデアを、それが実際に力を発揮しなければならない場である現実の苛酷な条件と「世知辛さ」といったものに適合させるためには、忍耐強く種々たくさんな手をそれに加える必要がある。
(中略)
良いアイデアというのは、いってみれば自分で成長する性質を持っているということに諸君は気付く。いいアイデアはそれを見る人々を刺激するので、その人々がこのアイデアに手を貸してくれるのだ。諸君が自分では見落としていたそのアイデアのもつ種々の可能性がこうして明るみに出てくる。
読んでいて「あるある」とうなづいてしまう内容。体感的にもこのステップは納得感が強いです。
「アイデアとは既存の要素の新しい組み合わせ以外の何ものでもない」ということが事実ならば、「既存の要素」をどれだけ知っているかが重要になります。プランナーとして有名な博報堂ケトルの嶋浩一郎さんは、圧倒的な雑学ツイートを日々なさっています。まさにああいった努力が、良いアイデアを生み出すのでしょう。僕も本を読み、歴史に学び、「要素」の引き出しを増やしていきたいと思います。
書籍ではより詳しく、アイデアを生み出すプロセスについて解説されています。文句なしの名著なので、一度手に取ってみる価値はあるでしょう。書籍は816円と安いです。
嶋浩一郎さんも同テーマで書かれていますね。紹介を見る感じ、内容は似ているようです。