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《 訂正: 分岐の図式(#) を書き改めました。》
報道を転載しよう。
ロシア南部アルタイ山脈の「デニソワ洞穴」で見つかった5万〜3万年前の人類の指の骨について、細胞核DNAを抽出して全遺伝情報(ゲノム)を解読した結果、現代の南太平洋メラネシア人に遺伝情報が一部受け継がれている可能性が高いことが分かった。
指の骨は2008年に見つかり、ドイツ・マックスプランク研究所を中心とする同チームが今年3月、細胞小器官ミトコンドリアのDNA解読結果に基づき「デニソワ人は未知の人類」と発表していた。
しかし今回、より重要な細胞核DNAを解読したところ、23万〜3万年前にユーラシア大陸西部に生息したネアンデルタール人に近い姉妹グループと判明した。
進化史上、人類とチンパンジーの分岐が 650万年前とすると、ネアンデルタール人やデニソワ人が現生人類との共通祖先から分かれたのは 80万4000年前、ネアンデルタール人とデニソワ人の祖先は 64万年前に分かれたと推定された。
( → 時事通信 )
現生人類のホモ・サピエンスは、この数万年の間にアフリカから世界中に広がったが、パプアニューギニアなど太平洋南西部だけは、ゲノムの5%前後がデニソワ人由来であることも判明。祖先がアジアを移動する間にデニソワ人と混血した可能性も指摘した。
チームは「数万年前まで欧州や西アジアにネアンデルタール人がいたように、アジアにはデニソワ人が広く分布していたのでは」としている。
( → 共同通信 )
ここでは、問題は二つに分けられる。
・ デニソワ人の位置づけは?
・ デニソワ人と現生人類との混血の可能性は?
以下で順に述べよう。
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(1) デニソワ人の位置づけは?
デニソワ人については、以前の項目(デニソワ人)で、次のように述べた。
「現生人類やネアンデルタール人との違いの多さから、ホモ・エレクトスの一種であろう」
そもそも、デニソワ人の化石は僅少である。小指の骨がひとかけら見つかっただけだ。だから、形質がどうのこうの、ということは、判明していない。しかし今回の DNA の分析から、形質がネアンデルタール人や現生人類からも大きく隔たっていることは確定したと言えるだろう。(前回は推定。)
では、隔たっているとして、どう隔たっているか?
普通の進化論では、次のようになる。
「デニソワ人、ネアンデルタール人、現生人類は、分岐の時点が異なるだけで、それらは同程度に進化している。デニソワ人と現生人類は、進化の方向が違いだけで、進化のレベルは同程度だ。従って、デニソワ人が大きな脳容量を持ち、高度な文明を持っていた可能性もある」
また、現生人類の位置づけは、次のようになる。
「現生人類は、デニソワ人やネアンデルタール人を経由することなく、かなり古い共通祖先から一挙に現生人類へとジャンプした。ホモ・エレクトスという原人から、現生人類へと、ものすごく大幅な進化が起こった。その途中でデニソワ人やネアンデルタール人を経由することはなかったから、デニソワ人やネアンデルタール人は当初は現生人類よりもずっと優れていたのに、結果的には滅びてしまった。
私のクラス進化論では、次のような原理をとる。
「進化とは分岐のことではない。分岐が起こったとき、一方は新種として誕生するが、他方は旧種として単にそのまま残るだけだ。旧種の方は、そのまま、進化は起こらない。単に(亜種レベルの)小進化が起こるだけだ」
この原理から、次のように結論される。
「デニソワ人、ネアンデルタール人、現生人類は、分岐の時点が異なるというよりは、段階的に進化している。デニソワ人とネアンデルタール人が共通性を持つとしたら、デニソワ人はネアンデルタール人の祖先であるという位置づけとなる。つまり、次の位置づけだ。
ホモ・エレクトス → デニソワ人&ネアンデルタール人 → 現生人類
このような形で、進化は段階的に起こったことになる。つまり、ホモ・エレクトスから現生人類への進化は、一挙にジャンプがあったのではなくて、途中でデニソワ人やネアンデルタール人という段階を経由したことになる」
ただし、この説は、そのままでは成立しない。次の事実があるからだ。
「ネアンデルタール人と現生人類には、直接の系統関係はない。ネアンデルタール人は現生人類の祖先ではない」
「同様に、デニソワ人とネアンデルタール人には、直接の系統関係はない。デニソワ人はネアンデルタール人の祖先ではない」
しかし、このことは、一般に「旧種と新種」の関係に成立することだ。
旧種 → 新種
という進化が起こったしよう。
普通の進化論ならば、「旧種の子孫が新種になった」というふうに考える。つまり、「旧種のうちの一部が突然変異を起こして、新種になったのだ」というふうに。
クラス進化論ならば、「旧種の子孫が新種になった」というふうには考えない。そう考えてもいいのだが、むしろ、次のように考える。
「旧種から新種への進化では、旧種の全体がそのまま新種に進化するのではない。旧種のうち、一部の古い型が、新種へと進化する。旧種はそのまま残るが、その間に、旧種は旧種で独自の進化を遂げる」
図示すれば、次のようになる。
旧種(古) ━┳━ 旧種(新)
┗━ 新種
この場合には、旧種(新)と、新種とでは、直接的な系統関係はない。両方は単に「共通祖先を持つ」というふうになるだけだ。ただし、その「共通祖先」というのは、旧種の古い型なのである。
これをネアンデルタール人と現生人類に当てはめれば、次のようになる。
ネアンデルタール人(古) ━┳━ ネアンデルタール人(新)
┗━ 現生人類
また、デニソワ人とネアンデルタール人に当てはめれば、次のようになる。
ネアンデルタール人(古) ━┳━ ネアンデルタール人(新)
┗━ デニソワ人
参考で言えば、普通の進化論では、次のようになる。
デニソワ人
< ネアンデルタール人
ホモ・エレクトス <
現生人類
この図式(*)の場合には、「ホモ・エレクトスから現生人類へ」という巨大なジャンプがあったことになる。その間、デニソワ人やネアンデルタール人は、一方、現生人類の系統であるホモ・エレクトスよりも、はるかに優れていたのに、結果的には滅びることになる。現生人類の系統は、何十万年もの間、ずっと息をひそめていたのに、そのあとで急に出現したことになる。これは不自然だ。
さらに、別の矛盾も出る。
分子生物学の研究によれば、次のことがわかっている。
「ネアンデルタール人と現生人類が分岐したのは、40 or 47万年前である」
このことは、すぐ上の図式(*)の場合には、矛盾が起こる。冒頭の報道によれば、
「ネアンデルタール人やデニソワ人が現生人類との共通祖先から分かれたのは 80万4000年前」
ということだからだ。( 両者の数字が食い違う。)
だから、普通の進化論による分岐モデルの図式(*)は、成立しない。(矛盾が起こる。)
一方、クラス進化論の図式ならば、矛盾は起こらない。次の図式(#)で説明できる。
erec.(古) ┳━ erec.(新) ┏ deni.
┗━ nean.(古)━┳┻━ nean.(新)
┗━ sapiens
略称:
erec. は、エレクトス。
deni. は、デニソワ人。
nean. は、ネアンデルタール人。
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上の図式に従えば、今回の研究成果は、次のことを意味する。
「デニソワ人は、ホモ・エレクトスとネアンデルタール人との間の、巨大なジャンプを埋める、中間形態をもつ種(ミッシング・リンク)としての位置づけを持つ」
ホモ・エレクトスとネアンデルタール人との間には、かなり巨大なジャンプがあったと見なされた。脳容量の点では、ネアンデルタール人と現生人類はかなり近いのに、ホモ・エレクトスはかなり小さい。ホモ・エレクトスからネアンデルタール人への進化は、脳容量の点でも、体つきの点でも、かなり大きな差がある。その大きな差がどうして生じたのか、謎だった。
しかし、いきなり巨大なジャンプがあったという不自然なことは起こらず、その途中でデニソワ人という段階を経由したのだ。デニソワ人は、ネアンデルタール人との共通祖先というよりは、ネアンデルタール人の古い型という扱いになる。つまり、ホモ・エレクトスとネアンデルタール人の中間に位置するのが、デニソワ人だ。
このようなことが、今回の研究から、判明したと言えるだろう。
( ※ ただし、デニソワ人は、ホモ・エレクトスの一種だと見なせそうだ。そして、ホモ・エレクトスのジャワ原人は、3〜5万年前まで生息していたらしいので、デニソワ人と同時期にいた同類の原人であったことになる。そうだとすれば、特に新しいことが判明したことにはならない。)
( ※ デニソワ人の位置づけをはっきりさせるには、ネアンデルタール人と比較するより、ジャワ原人や北京原人と比較することの方が大事だろう。北京原人とデニソワ人は、時期的にも領域的にも遠くないので、十分に比較対象になる。)
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(2) デニソワ人と現生人類との混血の可能性は?
すぐ上の図式(#)を取れば、混血の可能性についても、説明できる。
遺伝子的に共通性をもつからといって、それは、混血したということを意味しない。では、何を意味するか?
二つの子孫種の間に遺伝子の共通性があるということは、「混血した」ということを意味せず、「共通祖先を持つ」ということを意味するだけだ。
そもそも、次の比較では、必ず共通の遺伝子がある。
・ デニソワ人とネアンデルタール人
・ ネアンデルタール人と現生人類
このような比較をすれば、そこにある遺伝子の違いは、全遺伝子の 0.5% 程度にすぎない。(人間とチンパンジーとの遺伝子の差でさえ、4%程度にすぎない。) つまり、他の大部分では、遺伝子は共通する。
当然ながら、現生人類とデニソワ人の遺伝子を比較しても、99%以上は一致する。
今回のような調査では、異なる部分だけを比較して、その異なる部分のうちの5%で、デニソワ人とメラネシア人との間で共通性があったということなのだろう。
しかしこれは、「デニソワ人とメラネシア人が交雑した」ということを意味しない。むしろ、次のように考えた方がいい。
「デニソワ人と現生人類は、祖先と子孫という系統関係がある。現生人類が誕生した時点では、デニソワ人との共通部分もかなりあった。そのうちの一部を、メラネシア人は残している。一方、現在のアフリカ人や欧州人や新モンゴロイドなどでは喪失してしまった」
これで説明が付くだろう。
なお、仮に「混血があった」という説を取るのであれば、次のことが実証されねばならない。
「混血は世界各地であったはずだから、世界中の(地理的に離れた)複数の領域で、異なるタイプで、デニソワ人との共通遺伝子を持つ人々がいる」
このことが実証されたなら、「混血が起こった」と見なせるだろう。
しかしながら、特定の大規模な単一地域(たとえばメラネシア)で、デニソワ人やネアンデルタール人との共通遺伝子が見つかるのであれば、それは、「混血」というような単発的な事件によって起こったとは見なされず、「民族移動の過程で残った形質」と見なされるはずだ。
なぜか? デニソワ人の遺伝子がメラネシア人に大幅に残っているとしたら、「混血があった」ということだけでは足りず、「その遺伝子がメラネシアにいる現生人類にとっては有利であったから遺伝子がひろがった」ということ(遺伝子淘汰による遺伝子の拡散)が必要であるからだ。
しかるに、「現生人類にとって、現生人類の遺伝子よりも、デニソワ人の遺伝子の方が有利だ」ということは、原理的にはあり得ない。
比喩的に言えば、「人間とチンパンジーが交雑して子供ができたとしたら、その交雑種が人間との間で子孫を生むとき、チンパンジーの遺伝子が人間の遺伝子よりも有利だ」ということになるからだ。しかしそれは、あり得ない。進化の逆行はあり得ないからだ。
つまり、「デニソワ人と現生人類が交雑する」ということはありえても、「デニソワ人の遺伝子が現生人類の間でどんどん広まる」ということは、ありえない。例外的に1つぐらいのれいはあるかもしれないが、5%という大量の数で起こることはあり得ない。それはもはや「進化の逆行」である。とうていありえないことだ。
現実的に考えられるのは、「特に有利でも不利でもない遺伝子なので、メソポタミアにいる人々の間では、その遺伝子が淘汰されずに残った」というだけのことだろう。一方、他の地域の人々では、その遺伝子が偶然的に淘汰されてしまったのだろう。
今回の事実(一部地域の現生人類が、デニソワ人と共通の遺伝子をもつこと)は、「混血が起こった」ということを意味するのではなく、「遺伝子の拡散には、有利でも不利でもないときに、偶然が左右することがある」という「中立説」を意味するだけであろう。
[ 付記1 ]
交雑があり得ないことは、別の根拠からも示される。
現生人類がアフリカを出たあと、ついにアジアに達したのは、4万年前ごろだと推定されている。このころ、デニソワ人はアジアにいた。そして、4万年前に交雑が起こったとしたら、分岐してから約 75万年後に交雑したことになる。
しかし、分岐してから 75万年もたったあとでは、別種同士が交尾することはあっても、子供が生まれるということは、考えにくい。仮に子供が生まれるとしても、一代雑種であろう。その交雑種は不妊であるはずだ。その交雑種がさらに子供が子孫を産むということはとうていありえそうにない。
たとえば、ロバと馬の交雑種(ラバ)は、不妊である。虎とライオンの交雑種(ライガー)も不妊だ。豹とライオンの交雑種(レオポン)も不妊だ。同様のことは、現生人類とネアンデルタール人の間にも成立したはずだ。いわんや、現生人類とデニソワ人では、交雑種が誕生したとはとても思えない。
このような交雑種の話題は、下記でも論じた。
→ ネアンデルタール人との混血 【 補説 】
→ 異種間の交雑
( ※ 一般的に言えば、種というものははっきりと区別されており、異なる種同士で交雑が起こることはない。もし起これば、やたらと中間種みたいなものが誕生して、生物の秩序が崩れてしまい、種という概念が崩壊してしまう。だから、異種間の交雑種というものは、たとえ起こったとしても不妊にしかならないのだ。仮に不妊でないとしたら、それらの異種同士は、ただの亜種レベルの違いでしかないことになる。しかし、デニソワ人が現生人類とが亜種レベルの違いしかないということは、あり得ない。ネアンデルタール人と現生人類の差でも、はっきりとした差があるからだ。)
( ※ 種としての同一性を保てないようでは、種として滅びてしまう、という説明もある。 → OKwave )
[ 付記2 ]
だいたい、「共通遺伝子があるから交雑したはずだ」というのは、発想が貧困すぎる。仮にそんな説が成立するならば、「チンパンジーと人間の共通遺伝子」というのを見出して、「チンパンジーと人間は交雑したはずだ」という結論が出てしまう。馬鹿馬鹿しい。
共通遺伝子があることと交雑したこととは、等価ではない。交雑があれば共通遺伝子は見出されるだろうが、共通遺伝子があったからといって交雑があったことにはならない。そして、その説明をするのが、「中立説」という概念だ。(多くの専門家はそのことを失念している。)
下記の横線部は取り消します。【 追記2 】 の方だけあればいい。
前回書いた「デニソワ人」を読んで思い出したが、デニソワ人のほかにハイデルベルク人もいる。こちらの方がネアンデルタール人には近い。
本文中には「ホモ・エレクトスとネアンデルタール人とのミッシング・リンク」という趣旨で説明したが、実は、その位置には、ハイデルベルク人がすでに存在した。
デニソワ人は、「ホモ・エレクトスとハイデルベルク人との間を埋める」という形で存在する。順序で言えば、次の順になる。(一つの流れ)
エレクトス → デニソワ人 → ハイデルベルク人 → ネアンデルタール人 → 現生人類
今回の研究では、デニソワ人がネアンデルタール人に近い系統であることはわかったが、ホモ・エレクトスやハイデルベルク人との関係は、まだはっきりとしていない。次の順である可能性もある。(二つの流れ)
デニソワ人 → ネアンデルタール人
エレクトス <
ハイデルベルク人 → 現生人類
私としては、すぐ上の「二つの流れ」という発想は取らず、その一つ前の「一つの流れ」の発想を取りたい。そして、「デニソワ人はホモ・エレクトスの仲間の一種だろう」という見通しを取りたい。
というのは、「現生人類の直接の祖先は、ハイデルベルク人ではなく、早期ネアンデルタール人であるからだ」と思うからだ。(その類似性はとても高い。)また、「脳の極端な巨大化」という進化が、同時期にネアンデルタール人と現生人類で同時に発生したとは思えないからだ。(そういう偶然の一致はあり得そうにない。)
ただ、「一つの流れ」であっても「二つの流れ」であっても、いずれにせよ、次のことは言えるだろう。
「現生人類は、それ以前の種(ネアンデルタール人やハイデルベルク人やデニソワ人)と比べて、進化の量がとても大きい」
現生人類は、それ以前の人類に比べて、かなり飛躍的な進化をなし遂げたようだ。そのことが、今回の遺伝子研究から判明した、と言えるだろう。
【 追記2 】
デニソワ人とハイデルベルク人は、順序が別である可能性もある。次のように。
エレクトス → ハイデルベルク人 → デニソワ人&ネアンデルタール人 → 現生人類
この場合は、デニソワ人はネアンデルタール人にきわめて近い姉妹グループだということになる。この可能性もかなり高い。
そうであるか否かは、デニソワ人とハイデルベルク人との比較しだいだ。次の (1)(2) のいずれかとなる。(どちらかは断言できない。)
(1) デニソワ人がホモ・エレクトスの仲間であるとしたら、北京原人やジャワ原人などの仲間が南方から進出したことになる。化石の年代(3〜5万年前)からしても、それは十分に考えられる。
(2) デニソワ人がネアンデルタール人の仲間であるとしたら、ネアンデルタール人の仲間が欧州から中央アジアへと進出したことになる。この場合には、途中の領域(東欧)が欠落しているのが難点だが、あり得ないとまでは言えない。
【 関連項目 】
→ デニソワ人 (前回の項目)
→ ネアンデルタール人との混血
【 関連サイト 】
→ ドイツの報道の翻訳(写真入り)
→ The Denisova genome FAQ
http://bit.ly/fPwVMs
タイムスタンプは 下記 ↓
> 現代人の祖先が、別の人類とされるデニソワ人と交雑していたことが、独マックス・プランク進化人類学研究所などの国際チームの研究でわかった。
http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20101223-OYT1T00205.htm?from=navr
他紙は「交雑があった可能性がある」と述べているぐらいなのに、読売は勝手に断言している。
誤報ですね。「トンデモ」と言ってもいい。
http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20101223-OYT1T00205.htm
> 現代人の祖先が、世界各地で先住の人類を絶滅させつつ広がったとする従来の説
「現代人の祖先が、世界各地で先住の人類を絶滅させつつ広がった」ということはない。そんな「従来の説」などありえない。
現生人類とネアンデルタール人が分岐したのは40万年ほど前だ。現生人類がアフリカを出たのが6万年前で、欧州に到達したのが 4.5万年前。ネアンデルタール人が滅びたのが 2.5万年ぐらい前。その間、2万年ぐらいは共存したことになる。別に先住の人類を絶滅させたわけではない。共存したのだ。
また、先住の人類が絶滅したからといって、それは現生人類が絶滅させたことを意味しない。別の理由であった可能性が高い。
一般に、種の絶滅はしばしば起こるが、それは新種が旧種を絶滅させたことを意味しない。単に生存率の差があるだけだ。
「ネアンデルタール人が滅びたのは、ホモサピエンスが戦争をして滅ぼしたのだ」という仮説はあるにはあるが、「従来の説」というよりは、「トンデモ」説の扱いに近い。一般に、似て非なる種は、たがいに攻撃し合わないものだ。単に領域を分けるだけだ。どうせ世界は広いのだから。
( ※ 世界が狭くなるほど増殖したのは、ここ数百年ぐらいのホモ・サピエンスだけだ。)
> 人類の祖先は40万〜30万年前にアフリカを出て、ヨーロッパに移動した集団がネアンデルタール人に、アジアに広がった集団がデニソワ人になった。
時間的に矛盾している。「ネアンデルタール人やデニソワ人が現生人類との共通祖先から分かれたのは 80万4000年前、ネアンデルタール人とデニソワ人の祖先は 64万年前に分かれた」という記事があるのだ。とすれば、40万〜30万年前にアフリカを出てから、ネアンデルタール人やデニソワ人になったわけではない。もっと前から存在したのだ。
正しくは:
80万4000年前にはすでに、デニソワ人がいた。64万年前には、すでにネアンデルタール人がいた。ただしいずれも、アフリカに留まった。その後、ある時期に、デニソワ人はアフリカを出たし、ネアンデルタール人もアフリカを出た。ただし、アフリカを出たからデニソワ人やネアンデルタール人になったわけではない。アフリカを出る前から、デニソワ人やネアンデルタール人は存在したのだ。
→ http://www.yomiuri.co.jp/zoom/20101223-OYT9I00203.htm
→ http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20101223-OYT1T00205.htm
(1) この図では、
・ 現生人類とネアンデルタール人が分岐したのは、44〜27万年前
・ ネアンデルタール人とデニソワ人が分岐したのは、その後。
となるが、そんなことはない。ネアンデルタール人とデニソワ人が分岐したのは、「その後」ではなく「その前」だ。つまり、 64万年前だ。
記事の図は、図式(*)の発想で描かれているが、その発想そのものが間違っているのだ。
(2) この図では、
「ネアンデルタール人とデニソワ人が、現生人類から分岐したのは、44〜27万年前までにいたる数十万年の間だ」
というふうに示されているが、それは間違いだ。正しくは、
・ 現生人類とネアンデルタール人が分岐したのは、44万年前ごろ
・ ネアンデルタール人とデニソワ人が分岐したのは、64万年前
という、二つの時点である。それぞれの時点で、単発的に、分岐があった。決して、「64万年前から44万年前まで、20万年をかけて少しずつ分岐した」のではない。分岐は化石年代では一瞬にして起こった。(その一瞬がいつであるかは不確定だが、一瞬であることは間違いない。さもなくば種としての同一性が保てない。)
正しい図式は、上の本文中の図式(#) だ。
読売の図は、矛盾に充ちている。
> 人類の祖先は40万〜30万年前にアフリカを出て、ヨーロッパに移動した集団がネアンデルタール人に、アジアに広がった集団がデニソワ人になった。
という記述を否定したが、実は、これは元の発表文に含まれていたらしい。というのは、Wikipedia の「デニソワ人」の英語版にも、同様の記述が認められるからだ。
どうやら連中は、
「環境の変化が進化をもたらす」
という発想にこだわっているので、
「地理的に移住したから進化が起こった」
と思っているようだ。
実際は、そんなことはないんですけどね。たとえば、現生人類は、アフリカからアジアや欧州に進出したが、それによって進化することはなかった。(亜種レベルの小進化があっただけだ。)
http://bit.ly/dYcHso
(最後に図がある。共通祖先が 70万年前で、分岐が 40年前、という話。)
>子供が生まれるということは、考えにくい。仮に子供が生まれるとしても、一代雑種であろう。
>その交雑種は不妊であるはずだ。その交雑種がさらに子供が子孫を産むということはとうてい
>ありえそうにない。
アヌビスヒヒ(Papio anubis)とマントヒヒ(Papio hamadryas)、ゲラダヒヒ(Theropithecus gelada)とアヌビスヒヒやマントヒヒが野生状態で交雑し、妊性もあることが報告されています
>エチオピア高原におけるヒヒ類の雑種化と種分化過程に関する研究
http://wwwsoc.nii.ac.jp/jaste/NL/011JasteNL.pdf
>アヌビスヒヒとマントヒヒの雑種(写真提供:庄武孝義)
http://www.pri.kyoto-u.ac.jp/PRI-photo/Shotake-anubis2/Shotake-anubis2.html#top
>Interestingly, though, Papio beboons do not only hybridise with one another. Dunbar and
> Dunbar, for instance, noted as early as 1974 that apparently fertile and reproductively
> successful hybrids can be produced between at least one Papio species and the gelada
> baboon, in the genus Theropithecus. These two genera are closely related, to be sure,
> next to one another on most phylogenetic trees of the old world monkeys, but have been
> distinct lineages for several million years. In addition to Dunbar and Dunbar (1974)'s
> wild hybrids between the gelada and anubis baboons moreover, Jolly et al. (1997) report
> hybrids between hamadryas baboons and geladas in the wild, and Markarjan et al. (1974)
> between Papio baboons and both geladas and rhesus macaques, the baboons' even more
> distant relatives in the genus Macaca. These so-called "rheboons", however, may not
> be fertile or capable of attracting mates (Jolly 2001).
http://goingape2010.blogspot.jp/2010/02/biological-species-concept-and.html
アヌビスヒヒとマントヒヒの分岐は30〜40万年前ですが、
属の異なるゲラダヒヒとアヌビスヒヒやマントヒヒの分岐は100〜150万年前ですね
(ブラッドハンター―血液が進化を語る.庄武 孝義.より)http://www.amazon.co.jp/dp/4787585924
ヒトと同じ狭鼻猿類で100万年以上前に分岐した後でも交雑する例があるんですから、
デニソワ人と現生人類のように、分岐後75万年程度であれば、交雑した可能性はあると思いますよ
>仮にそんな説が成立するならば、「チンパンジーと人間の共通遺伝子」というのを見出して、
>「チンパンジーと人間は交雑したはずだ」という結論が出てしまう。
現生のヒトとチンパンジーの間で妊性のある雑種が生まれる可能性は低いと思いますが、
(両者の遺伝距離はヒヒ属とオナガザル属間に相当します)
分岐直後であれば交雑した可能性はあります
ヒト集団とチンパンジー集団の分岐は650〜740万年前とする研究結果が多いのですが、
遺伝情報を調べると何度も分岐した可能性があり、
最初の分岐から最後の分岐までに最大400万年の開きがあることから、
「いったん分岐したヒトとチンパンジーの祖先が長期間にわたって再び交雑したことによって遺伝子構成も変化した」
とする研究もありますね
>Nature 441, 1103-1108 (29 June 2006) | doi:10.1038/nature04789; Received 5 November 2005;
>Genetic evidence for complex speciation of humans and chimpanzees
> Nick Patterson, Daniel J. Richter, Sante Gnerre, Eric S. Lander & David Reich
http://www.nature.com/nature/journal/v441/n7097/full/nature04789.html
ただ、分岐後に交雑することは可能でも、個体発生があるだけで、生殖能力はないでしょう。なぜなら、それが「分岐」の原理だからです。交雑可能であれば、「分岐」にはなりません。交雑不可能だからこそ「分岐」になります。
「分岐後(数十万年後)の交雑」なんて、そういう無理な理屈を持ち出さなくても、ごく自然に「共通遺伝子の存在」を導き出せます。そのことは近日中に新しい項目で示す予定です。乞う、ご期待。
例に挙げたヒヒ類の交雑個体では生殖能力があることが確認されていますよ
>養老: ふつう、種というのは交配する集団とされていますが、交配の前提には認知がある。
>河合: …アラビア半島から南下してきたマントヒヒと、タンザニアあたりに生まれて北上して
>きたアヌビスヒヒというのが、エチオピアで出会った。そこでケンカするんじゃなくて、混血
>し、しかも混血の群れができて、その群れが存続している。
http://d.hatena.ne.jp/yich/20110821/1313926227
野外における実際の種の生殖隔離は必ずしも完璧なものではないので、
集団として分岐し、種として分化した後でも部分的に遺伝子交流がある場合があります
Introgressive hybridization(浸透交雑)と言われる現象です
>生殖隔離の非対称性が遺伝子浸透の方向性に及ぼす影響
>
> ヤマトオサムシとクロオサムシは,本州中部において側所的に分布を接している.また,
>種間交雑を通じて,クロオサムシ由来のミトコンドリアがヤマトオサムシの集団内に広く
>浸透している.このような分布と交雑の状態は,以下のような生殖隔離の状態を示唆する:
>つまり,両種間の生殖隔離は,(1)交雑による種の融合を妨げられるほど強い;
>(2)しかし,遺伝子浸透を妨げられるほど完璧ではない;(3)さらに,一方向的な遺伝子
>浸透をもたらすように非対称である.これらの可能性を検証するため,種間交配実験によって
>生殖隔離の強さを推定した.
http://mushikusa.exblog.jp/11152472/
>Introgressive hybridization(浸透交雑)問題を考える
>-B. Rosemary Grant を囲んで-
>企画責任者: 上田恵介(立教大学)・永田尚志(国立環境研)
http://www.esj.ne.jp/meeting/50/satelite/w1-1.html
例えば、ヒヒ類の例でも、
アヌビスヒヒの群れに入り込んだマントヒヒのオスが
アヌビスヒヒのメスと交尾したり、
アヌビスヒヒのメスを連れ去ってマントヒヒの群れの中に出戻りユニットを作ったり
することができるのに対して、
マントヒヒの群れに入り込んだアヌビスヒヒのオスがマントヒヒのメスと交尾しようとしても
マントヒヒのメスはマントヒヒのオスの後ろに隠れ、
マントヒヒのオスも威嚇して妨害するためほとんど成功しない
というように(前述の「ブラッドハンター」に観察例が紹介されています)
その遺伝子交流は非対称です
>交雑不可能だからこそ「分岐」になります。
残念ながら現実の生物集団は、
南堂さんが思い描いている「原理」通りには振る舞ってくれません
現実の種間の生殖隔離には、いくつもの抜け穴があり、
近縁種間で完全な生殖隔離が見られる種はほとんどありません
もちろん、隔離の強度が強ければ強いほど集団は「種っぽく」振舞うのですが、
ある集団が「種であるかないか」の線引きは、ある程度主観的にならざるを得ません
>1, BSCの基準のもとで「種」とみなされる前に生殖隔離が完成していなければならないか
>BSC に対する古くからの批判:近縁種間で完全な生殖隔離が見られる種はほとんど無い。
> 外見では雑種に見えなくても、近年の分子分析の発展によって交雑は以前考えられてい
> たものよりもずっと頻繁である。
>
>著者らの見解
>・ 隔離の強度が強ければ強いほど両集団は「種っぽく」振舞う。「種」のレベルにあるか
> どうかはそのような Sliding Scale を含む。「種であるかないか」の線引きは、ある
> 程度主観的にならざるを得ない。
http://www.hokudai.ac.jp/fsc/usujiri/chapter1.pdf
http://www.hokudai.ac.jp/fsc/usujiri/youshidl.html
>Speciation [ペーパーバック]
>Jerry A. Coyne (著), H. Allen Orr (著)
>出版社: Sinauer Associates Inc; illustrated版 (2004/5/28)
http://www.amazon.co.jp/dp/0878930892
例えば、前述のように、
マントヒヒの群れはアヌビスヒヒのオスによる交尾を妨げる「交配前隔離」として働いていますが、
それだけでは両種の遺伝子交流を完全に防ぐことはできません
なぜなら、マントヒヒのオスによる交尾がアヌビスヒヒの群れでは妨げられておらず、
雑種個体にも生殖能力がある(交配後隔離も十分に働いていない)からです
実際、両種の間には遺伝的な交流があったことを示す証拠があります
>30 遺伝子マーカーを用いたマントヒヒの種分化仮説の検証
>山根明弘(北九州市立自然史・歴史博物館),庄武孝義(京都大・霊長研)
>アラビア半島に生息するマントヒヒの由来,およびその種分化のメカニズムを探るべく,
>サウジアラビア王国の各地から採集したマントヒヒの血液,およびその周辺のアフリカ産の
>マントヒヒ,アヌビスヒヒの血液からDNAを抽出し,ミトコンドリア遺伝子の多型領域の塩基
>配列をそれぞれ解析し,系統的比較を行った.
>
>その結果,サウジアラビア産のものからは19のハプロタイプ,エチオピア産のものからは6つ
>のハプロタイプが認識され,これらをNJ法でクラスタリングしてみたが,明確にサウジ
>アラビアタイプのものと,エチオピアタイプのものを区別することはできなかった.
>さらに,アヌビスヒヒのタイプのものがサウジアラビアのクレードにも見られるなど,非常
>に複雑な様相を示した.これらのことから,アラビア半島のマントヒヒとアフリカの
>マントヒヒの間に,過去に何度も遺伝的な交流があり,アフリカでは種間の交雑をも含めた
>交流があったことを示唆するものである.
http://www.pri.kyoto-u.ac.jp/nenpou/2004/10-co_research/2-09-reports.html
説明すると……
生殖隔離の場合は、確かにそうです。だけどそれは例外であり、本項には当てはまりません。
私の考えでは、生殖隔離は、分岐ではなくて、小進化にすぎない。交雑可能であるがゆえに、分岐とは見なされない。たとえばダーウィンフィンチ。生殖隔離によって形質差が見られるが、自由な交配が可能なので、亜種と見なされる。
一方、人類の場合は、たがいに行き来が可能であり、ネアンデルタール人は広範囲に棲息した。ネアンデルタール人と現生人類が交雑しなかったのだから、両者は生殖隔離とは見なさず、交雑しない別種と見なされる。デニソワ人もまた同じ。(デニソワ人はネアンデルタール人よりも古いと見なされる。)
デニソワ人とネアンデルタール人の交雑はあったかどうか不明。たぶんなかったと思われるが、デニソワ人のサンプル数が少なすぎて不明。
「生殖隔離の場合は例外」という記述は意味不明です
「種を種として成立させているもの」が「生殖隔離」なのではないですか?
>生殖的隔離
>生殖的隔離(せいしょくてきかくり)とは、広義には二つの個体群の間での生殖がほとんど
>行えない状況すべてを指す。狭義には複数の生物個体群が同じ場所に生息していても互いの
>間で交雑が起きないようになる仕組みのことである。生殖的隔離が存在することは、その両者
>を異なった種と見なす重要な証拠と考えられる。
http://ja.wikipedia.org/wiki/生殖的隔離
shinok30は「近縁種間で完璧な生殖隔離があることは少ない」という認識なんですが、
南堂さんは「異種間での交配は例外的な現象」という立場なのですから、
「異なる種では完璧な生殖隔離が働いていることが普通で『生殖隔離が破られること』の方が例外」
と言わないとおかしいでしょう
>した。ネアンデルタール人と現生人類が交雑しなかったのだから、両者は生殖隔離とは
>見なさず、交雑しない別種と見なされる。
南堂さんは「種が違うから」という理由で、
ネアンデルタール人と現生人類との交雑には否定的なようですが、
非アフリカ人(ヨーロッパ人やアジア人)のゲノムにはネアンデルタール人との交雑の痕跡が
見られるという報告がありますし,
アフリカ、ヨーロッパ、アジア、オセアニア、南北アメリカの99集団から1983個体から
遺伝子データを解析した別の研究もネアンデルタール人との異種交雑の可能性を示唆しています
http://www.sciencemag.org/content/328/5979/710
http://openblog.meblog.biz/article/3794684.html
http://www.nature.com/news/2010/100506/full/news.2010.225.html
http://www.nature.com/news/2010/100420/full/news.2010.194.html
一方、母親から代々受け継がれるミトコンドリアDNAの解析から、
>ネアンデルタール人と現生人類の交配はなかった
http://news.nationalgeographic.co.jp/news/news_article.php?file_id=95961871&expand#title
とする研究もありました
これはネアンデルタール人の母親の遺伝子は現生人類には流入しなかったが、
ネアンデルタール人の父親を通して、ネアンデルタール人の遺伝子が現生人類に流入した
ということ(交雑は非対称に起こった)を示しているのではないでしょうか?
デニソワ人がネアンデルタール人と姉妹群であるという核DNA解析の結果が正しいとすれば、
「デニソワ人はネアンデルタール人よりも古い」とは言えません
>「デニソワ人」、アジアにも分布か=5万〜3万年前−細胞核ゲノム解読・国際チーム
http://www.jiji.com/jc/v?p=ve_soc_seibutsu-denisowa20101222j-05-w460
>Genetic history of an archaic hominin group from Denisova Cave in Siberia
>Nature 468, 10531060 (23 December 2010) doi:10.1038/nature09710
http://www.nature.com/nature/journal/v468/n7327/full/nature09710.html
最初に報告されたミトコンドリアDNAの塩基配列の結果では、
デニソワ人は約100万年前にネアンデルタール人や現生人類の系統と分かれた
と推定されていましたが(つまり、ネアンデルタール人と現生人類が姉妹群)、
これは
「もっと古い時代のホモ・エレクトゥスやネアンデルタール人、古代の現生人類、
さらには別の未知の人類種の間で異種交雑の結果」
を示しているのかもしれません
>一 方、Willerslev は、ミトコンドリアDNAは母親のみから継承されるため、ミトコン
>ドリアDNAのデータだけではデニソワ人が新種の人類であることを実証できない、と主張
> している。4万年前にシベリアに住んでいた現生人類やネアンデルタール人の一部は、独特
>のミトコンドリアDNAをもっていた。こうしたミトコンドリア DNAは、もっと古い時代の
>ホモ・エレクトゥスやネアンデルタール人、古代の現生人類、さらには別の未知の人類種の
>間で異種交配があったため生じたのかも しれない。核DNAを解析して初めて、人類系統樹に
>おけるデニソワ人の適切な位置付けができるのである。
http://www.natureasia.com/japan/ndigest/special/index.php?a=77612
>ネアンデルタール人との共通遺伝子が見つかるのであれば、それは、「混血」というような
>単発的な事件によって起こったとは見なされず、「民族移動の過程で残った形質」と
>見なされるはずだ。
現生人類とデニソワ人との交雑に関しては
南堂さんが紹介している南太平洋メラネシア人の間だけでなく、
http://www.nationalgeographic.co.jp/news/news_article.php?file_id=20101224001&expand&source=gnews
中国南部人にもその痕跡が見つかっています
>アジアでもデニソワ人と交雑の可能性
http://www.nationalgeographic.co.jp/news/news_article.php?file_id=20111102002&expand#title
>Published online before print October 31, 2011,
>Archaic human ancestry in East Asia
http://www.pnas.org/content/early/2011/10/24/1108181108.short
また、免疫系の適応を助ける「白血球抗原(HLA)クラスI遺伝子のうち、
現代西アジア人で一般的にみられる変異体「HLA-B*73」の起源がデニソワ人まで遡ることも
発見されています
>人類の免疫系を強くしたのは、ネアンデルタール人らとの性交渉
>2011年08月26日 18:08 発信地:ワシントンD.C./米国
http://www.afpbb.com/article/environment-science-it/science-technology/2822445/7674411
>Published Online August 25 2011
>Science 7 October 2011: Vol. 334 no. 6052 pp. 89-94
>The Shaping of Modern Human Immune Systems by Multiregional Admixture
> with Archaic Humans
http://www.sciencemag.org/content/334/6052/89.abstract
「デニソワ人やネアンデルタール人との交雑が、
現生人類の遺伝子プールに有益な影響をもたらした」
という専門家の見解を
南堂さんは
「現生人類にとって、現生人類の遺伝子よりも、デニソワ人の遺伝子の方が有利だということ
は、原理的にはあり得ない。進化の逆行はあり得ないからだ」
と言って否定するのでしょうか?
南堂さんの進化に対する認識は「下等なものから高等なものへと段階的に進む」という
「梯子モデル」のイメージを引きずっているのではないですか?
実際,過去には
>ハエというのは、脊椎動物ですらない、低レベルの生物である。
http://openblog.meblog.biz/article/2640962.html
という発言もされています
残念ながら,そういう見方は現代の進化生物学の常識からは外れています
>多くの人は,進化が梯子のように一本調子に起こっていると考えているようです.アメーバが
>ゾウリムシになり,ゾウリムシが昆虫になり,昆虫がイソギンチャクになって,イソギン
>チャクが魚になり,魚がカエルになって,カエルが恐竜になって……という調子です
>(図2.3a).
>
>しかし,進化は梯子のように起こってきたのではありません.たえず,生物集団が枝分かれし
>て起こってきたのです(図2.3b).太古の地球に出現した生物には,アメーバのようなもの
>がありましたが,現在の地球上に生きているアメーバは,その当時のアメーバと同一ではあり
>ません.昔のアメーバと共通祖先を持っているだけで,昔のアメーバは絶滅してしまいまし
>た.現在のアメーバは,それ以後の長い年月の間に独自の進化を遂げているので,祖先と同じ
>ものではないのです.
(進化と人間行動.長谷川 寿一, 長谷川 真理子.東京大学出版会 (2000/04) )
http://www.amazon.co.jp/dp/4130120328
ネアンデルタール人に関する最近の研究では,
ネアンデルタール人は現生人類よりも成長が早く,
急速に大きな脳を発達させたが,性成熟は遅くて長生きした可能性が指摘されています
現代人の脳はネアンデルタール人と比べて小さいだけでなく,
更新世のホモ・サピエンスと比べても小さいようです
これは過去4万年にわたってヒトは脳サイズを減少させてきたということを示していて,
エネルギーコストの面から現代人の脳サイズの減少は進化的有利を示しているいう指摘もあります
>ヒトのライフヒストリー(生活史)の進化を解明- ネアンデルタール新生児の脳サイズから考える -
>発表者 近藤 修(東京大学大学院理学系研究科生物科学専攻 准教授)
> クリストフ・ツォリコファー(Christoph P.E. Zollikofer)(チューリッヒ大学 教授) 他
http://www.s.u-tokyo.ac.jp/ja/press/2008/19.html
もし,デニソワ人がネアンデルタール人と近縁な約4万を生きたヒト属であるとするなら,
少なくとも,現代人よりは大きな脳を持っていた可能性が高いと考えます
ネアンデルタール人も含めて、交雑の証拠は一つもありません。「共通遺伝子が見つかった」という事実だけがあり、それは「交雑があった」ことを意味しません。たとえば、人間とチンパンジーの共通遺伝子。
ではなぜ共通遺伝子が見つかったか? それは次の説明をお待ちください。そう書いたとおり。本項で論じることではありません。
ともあれ、共通遺伝子が見つかる別経路が自然に導き出されれば、交雑という話は必要ありません。
とにかく、次の説明までお待ちください。
──
ネアンデルタール人の脳のサイズについては下記。
→ http://openblog.meblog.biz/article/2478827.html
>「共通遺伝子が見つかった」という事実だけがあり、それは「交雑があった」
>ことを意味しません。
>ではなぜ共通遺伝子が見つかったか?
>
>共通遺伝子が見つかる別経路が自然に導き出されれば、交雑という話は必要ありません。
説明をお待ちしていますが,
少なくとも「共通祖先から受け継いだ遺伝子」ということでは説明がつかない
「ネアンデルタール人と現生人類との交雑の痕跡」が確認されていますよ
>X染色体におけるネアンデルタール人と現生人類との交雑の痕跡
> X染色体の分析から、ネアンデルタール人(ホモ=ネアンデルターレンシス)と現生人
>類(ホモ=サピエンス)との交雑の可能性を指摘した研究(Yotova et al., 2011)
>が報道されました。昨年、ネアンデルタール人のゲノムのドラフト配列が公表されまし
>たが(関連記事)、この研究に加わったラブダ博士は、人間のX染色体に起源の分から
>ないハプロタイプがあることを指摘した10年前の研究に加わっており、ネアンデルター
>ル人のX染色体と現代人のそれとの比較の結果、現生人類のX染色体上には、ネアンデル
>タール人由来の領域が認められ、両者の間には交雑が認められる、と主張されました。
>
> この研究では、現代人の居住する全大陸から得られた現代人の6092のX染色体が分析
>されました。その結果、ネアンデルタール人由来と推定されるX染色体上の領域は、
>非アフリカ系統の現代人(この場合のアフリカとは、サハラ砂漠以南のことです)に
>のみ認められました。そのため、この研究に加わった人々は、中東でネアンデルタール
>人と現生人類とが交雑したのではないか、と推測しています。この研究により、ネアン
>デルタール人と現生人類との間で交雑があった可能性はさらに高くなったと言えそう
>ですが、その確定のためには、さらに他の領域での比較・検証が必要なのでしょう。
>
>参考文献:
>Yotova V. et al.(2011): An X-Linked Haplotype of Neandertal Origin
> Is Present Among All Non-African Populations. Molecular Biology
> and Evolution, 28, 7, 1957-1962.
>http://dx.doi.org/10.1093/molbev/msr024
http://sicambre.at.webry.info/201107/article_21.html
のみ認められました。
情報をありがとうございました。
その情報は、「交雑の証拠」ではなく、「交雑がなかったことの証拠」です。私の示す原理がますます強固に裏付けられます。説明をお待ちください。
なお、予習として、「銃・病原菌・鉄」の第19章を読んでおいてください。要約は下記にあります。
→ http://books.meblog.biz/article/2502374.html
ただしこの要約は、十分ではありません。書籍を読んでおいてください。ま、必要な箇所は、私も引用する予定ですが、ちゃんと論じるつもりであれば、きちんと読んでおくべき。
>があったことにはならない。そして、その説明をするのが、「中立説」という概念だ。
>(多くの専門家はそのことを失念している。)
いくらなんでも専門家が中立説を失念しているなんてことはありえないでしょう
>その情報は、「交雑の証拠」ではなく、「交雑がなかったことの証拠」です。
>私の示す原理がますます強固に裏付けられます。説明をお待ちください。
説明をお待ちしています
>なお、予習として、「銃・病原菌・鉄」の第19章を読んでおいてください。
「銃・病原菌・鉄」は既読です
南堂さんの理論とどう関係するのかは分かりませんが……
オーストラリア先住民のゲノムにもデニソワ人との交雑の痕跡が見いだされています
これまでデニソワ人との交雑の証拠とされてきた核DNAのなかに
共通祖先から継承したものがある可能性はもちろんゼロとは言えませんが,
その多くは交雑の結果と解釈した方が自然だと思いますよ
>オーストラリア先住民のゲノム解読とデニソワ人との交雑
> オーストラリア先住民のゲノム解読についての研究(Rasmussen et al., 2011)
>と、オーストラリア先住民も含むオセアニアやアジアの現代人の祖先と、デニソワ人と
>の交雑の可能性を示した研究(Reich et al., 2011)が報道(Callaway et al.,
> 2011)されました。いずれの研究も、オンライン版での先行公開となります。オース
>トラリア先住民のゲノム解読についての研究(Rasmussen et al., 2011)では、
>1920年代にオーストラリア南西部の先住民だった若い男性より寄贈された毛髪から、
>オーストラリア先住民のゲノムが解析されました。
>
> このゲノム解析の結果、オーストラリア先住民の先祖は、75000〜62000年前にアジ
>ア東部へと拡散したのではないか、と推定されています。一方、大陸部を中心とした
>多くの現代アジア人の祖先は、38000〜25000年前にアジア東部へと拡散したのではな
>いか、と推定されています。さらに、多くの現代アジア人の祖先とアメリカ先住民の
>祖先とが分岐する前に、アジア東部に異なる時期に進出してきた二つの現生人類(ホモ=
>サピエンス)集団間に、交雑があったのではないか、とも推定されています。こうした
>ことから、オーストラリア先住民は、アフリカ外の最古の継続的集団の一つではないだ
>ろうか、とこの研究では指摘されています。
>
> オーストラリア先住民も含むオセアニアやアジアの現代人の祖先と、デニソワ人との
>交雑の可能性を示した研究(Reich et al., 2011)では、これまで一部の現代人
>集団のみに検出されていたデニソワ人との交雑の証拠(関連記事)が、さらに多くの
>集団にも見出された、と指摘されています。この研究では、現代のアジア東部とオセア
>ニアの33の地域集団に、デニソワ人との交雑の証拠が見出されるか、検証されました。
>その結果、日本人も含む現代のアジア東部の北部(おおむね一般的な意味合いでの東
>アジア)の地域集団には、デニソワ人との交雑の証拠が検出されませんでした。
>
> 一方、アジア東部の南部(一部は南アジアで、他の多くは東南アジア)とオセアニア
>については、オーストラリア先住民も含む東方の地域集団でデニソワ人との交雑の証拠
>が検出されたのにたいして、西方の地域集団ではデニソワ人との交雑の証拠が検出され
>ませんでした。こうしたことなどから、ニューギニア人・オーストラリア先住民などの
>祖先と、東アジアを中心とする多くの現代アジア人の祖先とでは、アジア東部への進出
>時期が異なっており(前者が後者より早くなります)、アジア東部(そのさらに東方に
>オーストラリアや、寒冷期には陸続きだったオーストラリアとニューギニアを含む
>サフルランドがあります)への現生人類の進出は、複数回の波があったのではないか、
>とこの研究では推測されています。
>
>参考文献:
>Callaway E.(2011B): First Aboriginal genome sequenced. Nature.
>http://dx.doi.org/10.1038/news.2011.551
>
>Rasmussen M. et al.(2011): An Aboriginal Australian Genome Reveals Separate Human Dispersals into Asia.
>Science, 334, 6052, 94-98.
>http://dx.doi.org/10.1126/science.1211177
>
>Reich D. et al.(2011): Denisova Admixture and the First Modern Human Dispersals into Southeast Asia and Oceania.
>The American Journal of Human Genetics, 89, 4, 516-528.
>http://dx.doi.org/10.1016/j.ajhg.2011.09.005
http://sicambre.at.webry.info/201109/article_24.html
デニソワ人の情報、ありがとうございました。ますます確信が持てますね。
世界各地でホモサピエンスがデニソワ人と同様の交雑をした、ということは考えにくいでしょう。それはいわば、世界各地で同様の突然変異がいっせいに起こった、というのと同じぐらい不自然な説明です。それよりは、分散する前に混血が起こった、と考える方が自然です。
> 世界各地でホモサピエンスがデニソワ人と同様の交雑をした、ということは考えにく
>いでしょう。それはいわば、世界各地で同様の突然変異がいっせいに起こった、という
>のと同じぐらい不自然な説明です。それよりは、分散する前に混血が起こった、と考え
>る方が自然です。
(アフリカから?)分散する前に交雑が起こったとするなら,
もっと世界中でデニソワ人由来の遺伝子が見つかるはずでしょう
実際には,
日本人を含む北東アジアの地域集団には交雑の証拠が検出されませんでしたし,
南アジア,東南アジア,オセアニア集団の中でも
オーストラリア先住民も含む東方の地域集団では交雑の証拠が検出さましたが,
西方の地域集団ではデニソワ人との交雑の証拠が検出されませんでした
また,以前の研究で,
デニソワ人の痕跡はメラネシア人や東南アジア人には見られるが,
ヨーロッパ人やアフリカ人には見られないことも示されています
>デニソワ人の核DNA
>
>また、デニソワ人と現代人との核DNAの比較から、メラネシア人のゲノムの4〜6%
>はデニソワ人に由来すると推測されています。このことから、デニソワ人は後期更新世
>のアジアに広く存在した可能性が示唆されています。もっとも、デニソワ人の居住地域
>を経由した一部の現生人類集団が、デニソワ人と混血し、その一部の子孫がメラネシア
>へと進出したとも考えられますから、デニソワ人が広範囲に存在していたか否か、現時
>点では断定の難しいところです。今後、デニソワ人のゲノム解読がさらに進展し、より
>多くの現代人やネアンデルタール人との比較が進めば、デニソワ人の存在範囲や進化
>系統樹における位置づけについても、今よりも詳しく分かるでしょう。
>参考文献:
>Reich D. et al.(2010): Genetic history of an archaic hominin group from Denisova Cave in Siberia.
> Nature, 468, 1053-1060.
>http://dx.doi.org/10.1038/nature09710
http://sicambre.at.webry.info/201012/article_24.html
>現代東アジア人にデニソワ人の遺伝的痕跡?
>
> この研究では、現代人1568人の一塩基多型のデータが用いられて、現代人とネアン
>デルタール人・デニソワ人のDNAが比較され、東アジアのなかでもとくに南部の現代人
>に、わずかながらデニソワ人の遺伝的痕跡が認められる、と主張されています。現代人
>のなかでは、ユーラシア東部やオセアニアにしかデニソワ人の遺伝的痕跡が見られない
>ことから、ヨーロッパ人とアジア人やオセアニア人が分岐した後に、アジア人やオセア
>ニア人の祖先とデニソワ人は交雑したのではないか、とこの研究では指摘されていま
>す。また、アメリカ先住民にもデニソワ人の遺伝的痕跡が見られないことから、アメリ
>カ先住民の祖先が東アジア人の祖先と分岐した後に、東アジア人の祖先はデニソワ人と
>交雑したのではないか、とも指摘されています。このことから、デニソワ人と現生人類
>との交雑が2地域で起きた可能性も指摘されています。
>
>参考文献:
>Skoglund P, and Jakobsson M.(2011): Archaic human ancestry in East Asia. PNAS, 108, 45, 18301-18306.
>http://dx.doi.org/10.1073/pnas.1108181108
http://sicambre.at.webry.info/201111/article_4.html
このようなパターンになる説明として,
デニソワ人との交雑は特定の地域(例えば,東南アジア)で起こったと
推定されているのではないですか?
ま、長い話になるので、のちの説明をお待ちください。
※ メラネシア人やオーストラリア人については、その時期について、銃・病原菌・鉄の記述がちょっと参考になります。
>有利だ」ということは、原理的にはあり得ない。
> 比喩的に言えば、「人間とチンパンジーが交雑して子供ができたとしたら、その交雑
>種が人間との間で子孫を生むとき、チンパンジーの遺伝子が人間の遺伝子よりも有利
>だ」ということになるからだ。しかしそれは、あり得ない。進化の逆行はあり得ないか
>らだ。
南堂さんが
「現生人類にとって現現生人類の遺伝子よりもデニソワ人の遺伝子の方が有利だ」
ということは、原理的にはあり得ない
というのは,
1.デニソワ人よりも現生人類の方が高等で進化している
2.高等な生物が持っている遺伝子の方が(高等な生物にとって)常に有利だ
という2つの先入観を持っているからではないでしょうか?
1は証拠が不十分で現時点では何も言えないし,
核DNA解析の結果が正しいとすれば,
南堂さんが主張する
「ホモ・エレクトスとネアンデルタール人の中間に位置するのが、デニソワ人」
というのはあり得ません
2は一般的に正しいという根拠はありませんし,
特殊な社会構造を進化させたマントヒヒ集団の一部に
アヌビスヒヒの遺伝子が定着しているという実例もあります
> ということは、原理的にはあり得ない
新種と旧種の話です。新種にとって旧種の遺伝子が有利だということはありえない。だからこそ進化が起こった。
> 「ホモ・エレクトスとネアンデルタール人の中間に位置するのが、デニソワ人」
>というのはあり得ません
それは従来ふうの分岐図を前提としているからです。本項の図式を見てください。
deni.(古) と deni.(新) とは別です。
deni.(新) は、ネアンデルタール人やホモサピエンスの祖先ということはありえませんが、deni.(古)は、ネアンデルタール人やホモサピエンスの祖先ということはありえます。
今回見つかったのは deni.(新) の化石です。
ただ、deni.(新) の遺伝子が、現生人類にとって有利だった、……ということは、理論的にはありえますね。現実的には、ほとんどありえないと思えるが。
> deni.(古) と deni.(新) とは別です。
> deni.(新) は、ネアンデルタール人やホモサピエンスの祖先ということは
>ありえませんが、deni.(古)は、ネアンデルタール人やホモサピエンスの祖先という
>ことはありえます。
> 今回見つかったのは deni.(新) の化石です。
では,一般的な
デニソワ人
< ネアンデルタール人
ホモ・エレクトス <
現生人類
の分岐図を「(古)と(新)に分ける」南堂さん流の書き方に直してみましょう
erec.(古) ┳━ erec.(新)
┗━ deni.(古)━┳━ sapiens
┗━ deni.(新) ━┳━ deni.(新2)
┗━ nean.
となります
(南堂さんがエントリの中で描いた図は樹形が変わってしまっていますが,
正しく描くと上記のようになるハズです)
確かにこの図では,
deni.(古)はネアンデルタール人と現生人類の共通祖先になりますが,
「ネアンデルタール人は現生人類の祖先」にはなり得ません
(いったん,デニソワ人から現生人類の方に進化した集団が
ネアンデルタール人になるなんてそれこそ『進化の逆行』じゃないですか?)
南堂さんが主張するように
「ネアンデルタール人は現生人類の祖先」を成立させようとすると,
erec.(古) ┳━ erec.(新)
┗━ nean.(古)━┳━ sapiens
┗━ nean.(新) ━┳━ nean.(新2)
┗━ deni.
となって,今度は
「デニソワ人はネアンデルタール人や現生人類の共通祖先」
というのが成立しなくなります
つまり,南堂さん流の書き方をしたとしても,
エレクトス → デニソワ人 → ネアンデルタール人 → 現生人類
が成立するのは,
ネアンデルタール人と現生人類が姉妹群である場合だけです
(実際に南堂さんが描いた図(下記)もそうなってしまっています)
erec.(古) ┳━ erec.(新)
┗━ deni.(古)━┳━ deni.(新)
┗━ nean.(古) ━┳━ nean.(新)
┗━ sapiens
>新種と旧種の話です。新種にとって旧種の遺伝子が有利だということはありえない。
>だからこそ進化が起こった。
前にも書きましたが,
南堂さんは「進化は下等なものから高等なものへと段階的に進む」と思い込んでいますね
(この問題は南堂さんだけの問題ではなく,
同じような誤解をしている人はまだまだたくさんいるんですけど)
それから,有利な遺伝子じゃないと集団中に広がらないというのも間違いです
もちろん,ものすごく不利な遺伝子は集団中に固定しないのですが,
多くの遺伝子は有利でも不利でもなく中立で,
中立な遺伝子は遺伝的浮動によって集団中に広がっていきます
http://ja.wikipedia.org/wiki/中立進化説
進化生物の専門家が中立説を失念しているなんてことはまずありえないのですが,
南堂さんは明らかに中立説を失念していますよね
図式が正しいのであって、それを言葉で表現したときに、ちょっと曖昧さが生じますが、あえて曲解しないでください。
私の言うことを理解できないほど馬鹿だとは思えない。本当はわかっているくせに、あえて曲解しているでしょう? まるで NA***M さんみたいに、意地悪して、故意に曲解している。
> エレクトス → デニソワ人 → ネアンデルタール人 → 現生人類
というのは、図を簡略化した表現に過ぎません。そこでは 新 と 旧 とがごちゃまぜになっている。あえて混同しないでください。
> エレクトス → デニソワ人 → ネアンデルタール人 → 現生人類
という図式で示したのは、「いわゆる共通祖先というものが、まったく古い別種ではなくて、すでに見つかった種の原種であるにすぎない」ということです。
たとえば、「サピエンスとネアンデルタール人の共通祖先」というのは、現在の説では「エレクトス」ということになっていますが、私の説では「ネアンデルタール人の原種」というふうになります。このように「既存種の原種」という概念で「共通祖先」を説明するのが、私の説です。
> 進化は下等なものから高等なものへと段階的に進む
この件は長くなるので、別項を読んでください。
→ 「高等 下等」をサイト内検索
→ 「進化 階段状」をサイト内検索
→ 「進化 断続 連続」をサイト内検索
> 南堂さんは明らかに中立説を失念していますよね
人の話を読みもしないで、そんな悪口を書くと、N**M さんにますます似てきますよ。
──
というか、私の説明がもうすぐ出ると予告しているんだから、それを読んでからにしてください。人の話を聞かないで、重箱の隅を突ついても、意味がないでしょう。
人は一つの口と二つの耳を持つ。それはなぜか? (諺でわかる。)
>「エレクトス」ということになっていますが、私の説では「ネアンデルタール人の原種」
>というふうになります。このように「既存種の原種」という概念で「共通祖先」を説明
>するのが、私の説です。
その説明は理解しています
その説明を理解して受け入れたとしても
ネアンデルタール人とデニソワ人が姉妹群である限り,
「デニソワ人はネアンデルタール人と現生人類の共通祖先」ということと
「ネアンデルタール人は現生人類の祖先」というのは両立しません
もし,「サピエンスとネアンデルタール人の共通祖先」を
「ネアンデルタール人の原種」=nean.(古)と表現するなら,
erec.(古) ┳━ erec.(新)
┗━ nean.(古)━┳━ sapiens
┗━ nean.(新) ━┳━ nean.(新2)
┗━ deni.
となって「デニソワ人はネアンデルタール人や現生人類の共通祖先」
というのが成立しなくなりますよ,という単純な話です
現に南堂さんの分岐図は「ネアンデルタール人と現生人類が姉妹群」
という形に書き直されているじゃないですか?
>人の話を読みもしないで、そんな悪口を書くと、N**M さんにますます似てきますよ。
shinok30は南堂さんの話を読んで理解した上でおかしい点を指摘しています
少しも意地悪なところはありません
それを「ひどい誤読」だの「あえて曲解」だの「重箱の隅」だの非難しても仕方ないですよ
だからその図式は成立せず、私の図式が成立します。
姉妹群となる時期を勘違いしていますね。
というか、この話題は、私の次の話で説明する予定です。そちらの質問はすべて、私の次の話で説明する予定なので、今は待ってください。何度繰り返せばわかるのか。
質問に対する回答は、次の説明で体系的に説明します。わかりましたか?
なお、「読みもしないで」というのは、高等・下等の話と、私の次の説明(現時点で未公開)のことです。本項やコメントのことではありません。
>約64万年前です。(本文)
> だからその図式は成立せず、私の図式が成立します。
重要なのは,分岐時期の絶対値ではなく分岐の順序なんですけど……
(最初のコメントでは『約75万年前』って書いてたのをこっそり訂正しましたね)
もちろん,上の分岐図は核DNAの塩基配列比較の結果の紹介としては間違っていますけど,
その間違いは「南堂さんの間違い」をわざとコピーしたものですよ
核DNAの塩基配列比較の結果は,
まず,共通祖先から現生人類が分かれ(約80万4000年前),
その後,残った集団からネアンデルタール人とデニソワ人が分かれて(約64万年前)います
>進化史上、人類とチンパンジーの分岐が650万年前とすると、ネアンデルタール人や
>デニソワ人が現生人類との共通祖先から分かれたのは80万4000年前、
>ネアンデルタール人とデニソワ人の祖先は64万年前に分かれたと推定された。
>デニソワ洞穴からは、指の骨とは別人の上顎臼歯も見つかり、大きさや形態が
>ネアンデルタール人や現生人類と異なっていた。
http://www.jiji.com/jc/v?p=ve_soc_seibutsu-denisowa20101222j-05-w460
http://www.nature.com/nature/journal/v468/n7327/full/nature09710.html#/f1
>Genetic history of an archaic hominin group from Denisova Cave in Siberia
>Nature 468, 10531060 (23 December 2010) doi:10.1038/nature09710
>
>
> A possible explanation for the similar divergence of the Denisova
> individual and Neanderthals from present-day Africans is that they
> both descend from a common ancestral population that separated
> earlier from ancestors of present-day humans. Such a scenario would
> predict a closer relationship between the Denisova individual and
> Neanderthals than between either of them and present-day humans.
> To test this prediction, we estimated the divergence between pairs
> of seven ancient and modern genomes (Denisova, Neanderthals, French,
> Han, Papuan, Yoruba and San), using an approach where we correct for
> error rates in each genome based on the assumption that each has the
> same number of true differences from chimpanzee (Supplementary
> Information section 6). The average divergence between Denisova and
> Vindija Neanderthals is estimated to be 9.84% of the way to the
> chimpanzeehuman ancestor; that is, less than the average 12.38%
> divergence of both from present-day Africans. Assuming 6.5 million
> years for humanchimpanzee divergence, this implies that DNA
> sequences of Neanderthals and the Denisova individual diverged on
> average 640,000years ago, and from present-day Africans 804,000
>years ago.
http://www.nature.com/nature/journal/v468/n7327/full/nature09710.html
つまり,実際の分岐図は(南堂さん流に描くと)
80.4万年前 64万年前
erec.(古) ┳━ erec.(新)
┗━ deni.(古)━┳━ sapiens
┗━ deni.(新) ━┳━ deni.(新2)
┗━ nean.
となりますから,
「ネアンデルタール人は現生人類の祖先」ということはあり得なくなります
>姉妹群となる時期を勘違いしていますね。
南堂さんは「姉妹群」という語の意味を勘違いしています
南堂さんが描いた分岐図では
「現生人類はネアンデルタール人の姉妹群」
「デニソワ人は『現生人類とネアンデルタール人からなる単系統群』の姉妹群」
となっていて,ネアンデルタール人とデニソワ人は姉妹群の関係にはありません
(上記のNature掲載の論文中の分岐図では
ネアンデルタール人とデニソワ人は姉妹群の関係にあります)
>姉妹群 (sister group)・姉妹分類群 (sister taxa) クレードが2つの単系統群
>からなっている場合、それぞれを他方に対する姉妹群であるという。上の図で、AとBは
>それぞれ姉妹群の関係にある。また、CはAとBからなる単系統群の姉妹群である。
http://bean.bio.chiba-u.jp/lab/index.php?授業%2FH18%2F進化生物学I%2F系統推定の基本用語
ちなみに,ミトコンドリアDNA配列の解析結果では,
デニソワ人と『ネアンデルタール人と現生人類の共通祖先』の分岐は約104万年前で,
南堂さんの分岐図と同じ形にはなっています
(デニソワ人とネアンデルタール人は姉妹群の関係にありません)
>新種の人類発見か? Fossil finger points to new human species
>Rex Dalton
>Nature, 464, (472473) (2010) | English article
>
>Karuse らの解析によれば、デニソワ人は104万年前に人類進化の系統樹から分岐したと
>考えられる。これは、現生人類とネアンデルタール人が分岐した46万6000年前の2倍以上も
>古い時代に当たる。
http://www.natureasia.com/japan/ndigest/special/index.php?a=77612
要するに,南堂さんが「自分の説が正しい」と主張するためには,
「デニソワ人とネアンデルタール人は姉妹群」というのは認められないハズなんですよ
「デニソワ人とネアンデルタール人は姉妹群」ということを認めながら,
「デニソワ人はネアンデルタール人と現生人類の共通祖先」
という矛盾したことを主張するからおかしなことになるんです
南堂さんの「高等・下等の話」は何度も読んでいますよ
shinok30なりの回答もしているハズです
>完全変態の膜翅目(ハチ,アリ)が不完全変態のカマキリやトンボよりも「下等な部類」
>とは随分ユニークな発想ですね
>(「ハチというのは、進化の歴史で、羽アリが大型化したものだ」というのもなかなか
>破壊力のある珍説ですが……)
>この人の頭の中では「進化=大型化」なんでしょう
>
>いわゆる「高等」や「下等」というのは祖先生物の形質(原始的形質)をどれだけ保持
>しているかという相対的なもので,
>有利や不利とは関係ない話なんですが,
>「下等だから不利」という発言を繰り返していることからして,
>どうやら本気で根本的な勘違いをしているんでしょう
>
>Posted by shinok30 at 2008年02月03日 15:29
http://openblog.meblog.biz/article/281506.html
>というか、この話題は、私の次の話で説明する予定です。そちらの質問はすべて、
>私の次の話で説明する予定なので、今は待ってください。何度繰り返せばわかるのか。
> 質問に対する回答は、次の説明で体系的に説明します。わかりましたか?
南堂さんの説明は楽しみに待っていますよ
私の引用した記事からは、私の図式が得られますが、そちらの引用した記事からは、そちらの図式に似た図式が得られます。
どうも時事通信は、記事を間違えて、途中で訂正したようです。となると、私の図式も、書き換えなければならないようだ。
つまり、元の記事が誤報だったことになります。そうは書いてないから、わからなかった。そのうち訂正します。
正しくは下記です。(そちらの引用した記事の図を見ればわかる。)
┏━ deni.
━ nean.(古)━┳┻━ nean.(新)
┗━━ sapiens
>いわゆる「高等」や「下等」というのは祖先生物の形質(原始的形質)をどれだけ保持
>しているかという相対的なもので,
やっぱり読んでいませんね。あるいは誤読です。
そちらの引用したような意味での「高等・下等」は、私も否定しています。私が述べているのは、「順序」という意味での「高等・下等」です。
ちゃんと項目を読み直してください。特に、ヘッケルの項目。
なお、昆虫なら昆虫で、そのレベルでは、高等・下等という区別は、特にしていません。高等・下等の区別をしているのは、哺乳類とか爬虫類とか、そういう大きな分類項目レベルです。(以前はともかく、現在の説明では。)