匠の肖像 匠の肖像

匠の肖像バックナンバー

#41   バイオリン職人 井筒信一(いづつしんいち)

今回の匠:写真

2007/1/13放送

井筒信一 プロフィール
1936年 長野生まれ
木地師の父のもとで修行
20歳でバイオリン制作者の道へ


「 いいかげんな感覚が大切 」

ひたすら木を削る。長野県松本に工房をかまえるバイオリン職人、井筒信一さん。バイオリンの音の善し悪しは、板の微妙な膨らみとその厚さで決まります。バイオリンが生まれたのは16世紀のイタリア。今でも、一流の演奏家が日本人の作ったバイオリンを使うことはほとんどない。ところが、天才バイオリニスト五嶋龍のデビューコンサートで、井筒さんのバイオリンに白羽の矢がたった。「電話しながら涙ながらに、嬉しくて、嬉しくて。認めてくれたわけですよ。」


バイオリン製作に使う木は、100年近く乾燥させたヨーロッパのカエデとマツ、というのが常識なんですが…。「日本人ってもともと器用ですからね。イタリア人やドイツ人よりも器用だと思いますよ。ただやっぱり、どうしても先入観あると思いますよ。誰が何と言っても、本人が素晴らしいと思うならいいんじゃないですか。だからなんで頭から日本人がダメだと言うのかと思うよね。」


日本人の職人として誇りをもつなら、日本の木を使ったっていいじゃないか。素材の木に人一倍こだわる井筒さんは、今、北海道のカエデとマツに挑戦している。井筒さんにとって最も大切な製作過程。寸法にたよらず、木を叩いて、その音で最終的な曲線と厚みを決めてゆく、タッピングという技。素材の木と語り合う。「いい加減な感覚が好きなんですよ。いい加減って言うと、だらしなく聞こえるけど、」


バックナンバー一覧


up