2010年10月13日 (水)国会中継の舞台裏  -野村正育-


報道に携わるアナウンサーの大切な仕事の一つに国会中継があります。
 3分52秒。
 これは、ある日の参議院予算委員会の中継で、アナウンサーが声を出して伝えた時間の合計です。全部で7時間ほどの中継のなかで、仕事ぶりが表に出るのはごくわずかです。
 しかし、準備の量は膨大です。
日ごろから政治の動きの原稿をフォローしたり、資料の整理をしたり、中継前日にはコメントを準備したりと地道な作業が欠かせません。
そして、放送席にいる間は懸命にノートを取ります。速記さながらの走り書きです。一言も漏らさぬ勢いです。初めて聞くような専門用語が飛び交う時も何とかひらがなで書きとめます。
 このノートは、質疑が止まった場合に、どういう場面で中断しているのか、何を議論しているのかをわかりやすく説明するために必要なのです。また、中継の締めくくりに内容をまとめるときにも役立ちます。
 
kokkaicyuukei.jpg 放送席は、本会議の中継の場合は、議場の中の傍聴席です。(写真は衆議院本会議場で許可を得て撮影しました)
 委員会の中継では、委員会室(衆議院では「委員室」)の外の廊下に机を置いて、2人1組で中継しています。1人はマイクに向かい、もう1人はサイドとして助けます。
 廊下の机で放送の準備をしていると、質疑に向かう閣僚や議員たちがすぐ隣を歩いていきます。
 ある総理大臣は放送席をのぞき込みながら、「朝早くからご苦労さん」などといつも何かしら一声かけていきました。また、別の総理大臣は常に真っ直ぐ前を向いてわき目もふらずに通り過ぎていきました。中継現場ではニュースで言動を伝える政治家の素顔の一端に触れるチャンスがあります。
 担当した中継のなかで、ある問題をめぐって野党側の追及が厳しく審議が何度も中断した、あるいは、閣僚が手元の資料に目を落とすことなく詳しく的確な答弁をしていた・・・
 国会中継での経験、そこで得た現場の感覚は、国会や政治の動きについてのニュースを伝えるとき、さらには政局が大きく動く際のスタジオを担当する場合に、原稿を正確に理解することはもちろん、微妙なニュアンスまでも伝えるための力となり、キャスターワークをより説得力のあるものにしてくれます。
 「おはよう日本」を放送し終えたあと、あるいは深夜の「BSニュース」の放送前に国会中継にかけつけるアナウンサー、また政治番組担当のディレクターと一緒に取材制作にあたるアナウンサーもいます。
 小郷、久保田の両アナウンサーも国会中継班の一員です。国会中継での経験を活かして、「ニュース7」の放送に臨んでいます。

 kokkaicyuukei.jpg

投稿者:野村正育 | 投稿時間:10:40

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