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【サッカー】

<目撃者>チームの「命綱」山口蛍

2012年8月4日 紙面から

 「蛍のプレーに感動した」−。今年2月に行われたアジア最終予選のアウェー・マレーシア戦。大量得点の勝利が厳命された一戦で、MF山口蛍は「黒子」に徹して、相手の攻撃の芽を摘み続けた。スコアよりも大きく見える献身の差。見ている人、仲間たちの心をも揺さぶるプレーだった。

 「蛍はシャイでうまくコミュニケーションが取れないところもあるけど、胸の内に秘めているものは本当に強いんです」

 そう語るのは、C大阪ユースで指導した清水和男氏だ。山口が高校2年生のときのこと。彼が人知れず悔し泣きしていたことを、他の選手たちを通じて後から知らされたという。理由を聞くと、「絶対に『10番』が欲しかった…」。

 当時ライバルだった同学年の丸橋祐介(C大阪)にエースナンバーが与えられ、16歳の少年はひっそり涙を流していたのだ。「人前では弱い部分、感情を出さない男だった」(清水氏)。

 中学時代は三重・名張の自宅から大阪の練習場まで約2時間かけて通う生活。帰りはいつも午前0時ごろだった。それでも、父・憲一さんに男手一つで育てられた山口は、誰にも弱音は吐かなかったという。

 「サッカーではエリートに近いけど、いっぱい苦労して挫折も経験して。でも、表には絶対に出さない。だから、あいつはああやって守備で頑張れるのかなって、今はそう思うんですよね」

 1次リーグ3試合フル出場。ピッチの歓喜の裏側で山口が中盤の守備を引き締め、ここぞの場面ではゴール前まで駆け上がった。だが、得点機を逃して、「僕はやっぱりヒーロータイプじゃないと実感しました」と山口は苦笑した。

 攻守をつなぐ、まさにチームの「命綱」。準々決勝で迎え撃つのは難敵エジプト。4強への死角は、山口がきっちり消してくれるはずだ。 (松岡祐司)

 

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