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社説

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防衛白書 中国との対話も大切だ(8月2日)

 中国海軍艦艇部隊の太平洋進出が常態化しつつあり、中国軍の動向は「危機管理上の課題」だ―。今年の防衛白書はそんな強い懸念を表明した。

 東シナ海や南シナ海で中国の動きは年々活発になっている。日本だけでなくフィリピンやベトナムなど周辺国が警戒を強めるのは当然だ。

 このため白書は、道内を含む各地の部隊を機動的に南西方面などへ移動配備する「動的防衛力」構築の必要性を今年も説く。

 だが中国と周辺国が角突き合わせるだけでは緊張が高まるばかりだ。

 まず中国は膨れる国防費や軍備の透明性を高め、周辺国との関係を損なう海洋進出を自制するべきだ。

 一方、日本政府は中国の脅威を強調するだけでなく、停滞気味の防衛対話を再び活性化したい。大臣級や制服幹部間などさまざまなレベルで話し合い、問題解決と信頼醸成の努力を重ねることが必要だ。

 中国の海洋進出の動きは、2年前の尖閣諸島(沖縄県)沖での漁船衝突事件で強く印象づけられた。

 白書によると、その後も漁業監視船などの日本領海侵入が相次いでいる。海軍艦艇が沖縄本島と宮古島の間を通過し、太平洋で訓練することも目立ち始めたという。艦上から無人航空機を飛ばすなど刺激的だ。

 南シナ海でも海軍や海洋調査船の活動を活発化させ、島の領有権や海洋資源など権益を主張する動きを強めている。既成事実をつくって権益を拡大しようとする中国の振る舞いには憂慮を禁じ得ない。

 空母の保有やステルス機開発のほか、最近では東シナ海で情報収集機を飛ばすなど自国の防空にとどまらない航空戦力向上を図っている。

 国防費は公表部分だけで過去24年間で約30倍に膨らんだと白書は指摘する。透明性が低く、軍備の実態をつかみづらいことも不安要素だ。

 中国には在日米軍などに対抗する狙いもあろう。だが中国が軍事力を誇示するほど、日米は軍事協力を強めて中国に向き合うことになる。

 米軍は、安全性が懸念される垂直離着陸輸送機MV22オスプレイを沖縄に配備しようとしている。現在配備しているヘリより行動半径が長く、中国をけん制する。

 ただオスプレイに対する沖縄県民の不安は解消されていない。白書がコラムで十数行紹介するだけなのは不十分だ。危険な航空機は運用させない姿勢を政府は明確にすべきだ。

 中国や米国はお互い疑心暗鬼になって軍拡競争に走り、太平洋の緊張をいたずらに高めてはならない。

 領土や権益の問題は、平和的な外交対話で解決を図るよう日中をはじめ各国政府に強く求めたい。

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