◆国内営業、楽器生産の各部門
記者会見で事業構造改革の基本方針を発表するヤマハの岡部比呂男常務=浜松市中区で
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ヤマハ(浜松市中区)は三十一日、国内営業と楽器生産の各部門を分社化する国内事業構造改革の基本方針を発表した。国内の楽器・音響機器市場の縮小や、歴史的な円高に対応するために、組織のスリム化と生産効率の向上を図る。
分社化に伴って、ヤマハ本体の正社員約四千八百人の四割弱になる約千八百五十人が、営業・生産の子会社に出向。身分の切り替えは行わない。全体で年間三百〜三百五十人に上る定年退職者の補充を最小限にして人員を減らしていく。新規の採用は子会社で実施し、本体とは別の賃金体系として人件費の抑制を図る。
併せて楽器小売りと半導体生産の各子会社を対象に、今期中に計百二十人の希望退職者も募る。
ヤマハは、二〇一二年三月期に連結で二百九十三億円の純損失を計上。繰り延べ税金資産の取り崩しによる会計処理上の赤字だが、国内事業を手掛けるヤマハ本体の収益性の低さが要因となった。
このため、四月に梅村充社長直轄のプロジェクトを設けて、国内営業▽国内生産▽半導体事業▽スタッフ業務−の各分野で構造改革を検討してきた。
基本方針によると、国内営業では、楽器と音響機器の営業部門を本体から切り離し、楽器の輸入販売などを手掛ける子会社とともに「ヤマハミュージックジャパン(YMJ)」に統合。国内向けの卸売り業務を担わせる。
営業拠点のうち、北海道(札幌)、仙台、名古屋、九州(福岡)の四事業所は閉鎖し、東京、大阪の両事業所に集約。楽器の小売りや音楽教室を手掛ける地域別の販売子会社八社を「ヤマハミュージック(YM)」に統合し、YMJの傘下に置く。いずれも二〇一三年四月に実施する。
国内生産では、ピアノ、管弦打楽器、電子楽器・音響機器の各生産部門を一四年四月に分社。それぞれ製造工程の一部を担う別の子会社と統合させ、生産効率の向上や人材育成の一体化を進める。
半導体事業は、スマートフォン(多機能携帯電話)向けの地磁気センサーなど収益性の高い製品に生産品目を絞り、残りは委託生産に切り替える。
構造改革に伴い、YMに統合する地域販売子会社で五十人、半導体生産子会社のヤマハ鹿児島セミコンダクタ(鹿児島県湧水町)で七十人、計百二十人の希望退職を今期中に募集。閉鎖する四事業所では、家族の都合などで転勤できない社員には再就職支援を行う。
割増退職金の支払いや再就職支援プログラムなどの構造改革費用十七億円を、一三年三月期に特別損失として計上。人件費の削減や業務の合理化で、一四年三月期に二十七億円の効果を見込む。
浜松商工会議所で記者会見した岡部比呂男常務は、「国内にものづくりを残すために、長期的に取り組まなければいけない施策を盛り込んだ」と述べた。
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