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PJ: 田中 大也

違法ダウンロード処罰化に向けての動きが急加速か 数千万人が「違反者」になる可能性も
2011年09月02日 08:22 JST

【PJニュース 2011年9月2日】著作権法改正による「ダウンロード違法化」問題は、いわゆるネット空間の規制問題の中でも、とりわけ多くのネットユーザーの関心と懸念が寄せられたものの一つだった。著作権的に「合法でない」形の、音楽や映像、画像といったコンテンツの公開があった場合、そうしたものをダウンロードした側までが「違法」になるというのが、「ダウンロード違法化法案」の趣旨だった。

極めて多くの無許諾公開、配信がされているネット空間の特性上、非常に多くの人が、「違法行為」をしてしまうことになるのではないかというような危惧があり、また、あらゆる種類の著作物が対象になり得る。そのため、規制範囲は「児童ポルノ」の比ではないほど広くなってしまうことなどからも、法案(著作権法改正)に対する反対の声は、極めて多く寄せられた。

しかし、結局、改正案は平成21年に成立し、平成22年の元日に施行された。以来、罰則はないものの、「公式配信ではない」コンテンツへのダウンロードに関しては違法という状態が続いている。

そんな中にあって、今年の8月に入り、自民党内の「政調、文部科学部会・総務部会・法務部会合同会議」にて、「音楽などの私的違法ダウンロードの防止に関する法律案(議員立法)について」の会議が持たれたことが明らかになった。要するに、音楽等のコンテンツに対しての、違法なダウンロードを防ぐべく、現在よりもさらに踏み込んだ対処、つまりダウンロード行為の罰則化などについて議論がなされているということが分かる。

未だ正式に法案の国会提出には至っておらず、内実までは完全に判明していないが、少なくとも、閣議での決定や、省庁での審議を必ずしも経なくて良い議員立法という「静かな」形での法案提出、規制推進が行われようとしているところまでは確かなようだ。

著作物の「違法」アップロード・ダウンロード問題は、正式な形で販売、配信されたものであっても、「公式でない」形で公開や配信が行われた場合、「違法アップロード」になり、そうしたデータをダウンロードした側も、「違法」とされるという特徴を持っている。そのため、「児童ポルノ」とは比較にならないほど、その形式は広く、とりわけネット空間の多岐に及んでいる。もし仮に、「違法ダウンロード」の全てが刑事罰の対象となったら、一体どれほどの人が「犯罪者予備軍」になってしまうのだろうか。

● 数千万人が「犯罪者」になってしまう危険性も
日本レコード協会は、今年3月から6月までの間に、アンケート調査を行い、報告書「動画サイトの利用実態調査」としてまとめた。

それによると、国民の約七割が動画サイトを利用していて、動画サイト利用者の半分、国民の約36%が動画サイトを経由してファイルのダウンロードを行っており、その中でも特にポップスなど邦楽等へのダウンロードが多いといった事情が明らかになった。日本レコード協会は、音楽関連でダウンロードされたファイルのうち、違法ダウンロードされたものは50〜80%を占めると推計している。

自主回答のアンケートを元にした分析であり、多少の目の粗さは否めないが、それでも、違法ダウンロードが処罰化された場合、国民のかなりの層が「犯罪者」になる危険性のある状態であることがうかがえる内容だと言える。アンケート内にある、ダウンロードしたファイルの種類の欄では、音楽以外では、アニメや映画、ドラマ、TV番組といった内容が多数を占め、こうしたコンテンツが動画サイトに「公式な」形として流れてくるというケースはまだまだ少数だ。つまり、音楽に限らず、アップロードされた時点で違法であり、そのダウンロードも法的には「違反」というケースが全体でも多くを占めるとも考えられるからだ。

しかも、このアンケートはあくまで動画サイトの利用状況を示したものであり、P2Pやデータアップローダー(サイト)などからのダウンロードは考慮に入れていないため、違法ダウンロードの実数は、アンケートで示された数字よりもさらに大きいと考えるのが妥当だ。動画サイト経由のダウンロードの大部分が、どうやら何らかの形で「違反」に引っかかってしまう感じだということを加味して考えると、誇張でも何でもなく、「違法ダウンロード」が処罰化された場合、現状のままでは数千万人が「犯罪者」になってしまうことも想定される。

● 慎重かつ大々的な議論と徹底した周知が求められる
著作権法は、どこまでが適切でどこからが違法かといった部分が分かり辛い面が多くあり、また、現行の著作権法には親告罪規定があるため、違法行為の実施から犯罪認定までの間にワンクッションがあったりと、他の法律との違いが目立つ分野ではあるが、いずれにせよ、全国民、市民の生活や行動にも非常に強く密接しているものだけに、「静かに」法律を通して、それでよしとするわけにはいかないだろう。

ダウンロード処罰化の是非については置くとしても、最悪、数千万人を「犯罪者」にしてしまうからには、慎重さはもちろんだが、直接法律の影響を受ける国民、市民に対して、大々的に「一家に一人犯罪者が出るような法律と実情」の実態を示し、違法ダウンロードの処罰化、あるいはダウンロードの違法化そのものへの是非を考える、国民的議論のレベルにまで関心を引き上げ、その上で法案を通すかどうか決めるところまで、問題提起を進めていく必要があるものと思われる。今まで普通に生活していた国民、市民を、「善良な市民」と「犯罪者」に、真っ二つに分けかねない法律を作る以上、徹底した問題提起と意見のやりとりは必須だろう。【了】

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